***子供部屋のうさぎ***    

幸せは、幸せだなぁって思う心の中に小さく咲く。

■鉄の匂い075■

2017年08月13日 | Weblog
生徒も先生も面喰っていた。
いきなり高いテンションで、自己紹介と言いながらなんの情報も語らず、敵意を剥き出し睨みつける。
威嚇を通り越した非友好的な視線。
用意されていた席は変更され、廊下側の一番後ろで隣の居ない二人用机を宛がわれた。
早速、一時間目が終わった休み時間に『僕』は、クラスの主だった者に囲まれた。
何か言葉のやりとりはした筈だが、今となっては覚えていない。
通過儀礼的な、答えありきの問答だったように思う。
放課後、数人の生徒に掴まれて下校し、視界を遮る灌木の茂る空き地に連れていかれた。
頭の中でシミュレーションしたパンチやキックは空を切り、『僕』は初めての喧嘩を体験した。
対複数人だったのでリンチかな。
鳩尾を殴られ蹲った処で背中を踏まれた。
どの蹴りも突きも、所詮は小学生なので決してダメージのあるものではなかった。
堪えれば踏ん張れたし、立ち向かうことも出来たと思う。
でも『僕』は精神的にやられてしまった。
勝手に敵視して、売り言葉に買い言葉で始まった争いで、だから悪いのは『僕』だ。
この喧嘩に義は無く、一方的に宣戦布告して返り討ちに遭っているだけだ。
少しばかり鼻血が出て、少しばかりズボンに土が付き、膝や肘に血が滲む程度の擦過傷。
皆が帰った後、その気ならすぐ起き上がれたが『僕』は仰向けに倒れたまま動けなかった。
殴り合いに負けたんじゃない。
絆に負けたんだ。
みんなの意思が揃って『僕』を敵と認識して攻撃を始め、みんなの意思が揃って『僕』の戦意喪失を確認して攻撃を止めた。
誰が何を言うではなく、指示する者される者がいる訳でもなく、なのに統率されていた。
みなの価値観が一緒で、『僕』の価値観だけが違っていた。
だから『僕』はみなに殴られて当然だし、放置されて当たり前だった。
翌日、クラスでは誰も『僕』に話し掛ける者は居なかった。
自分で蒔いた種が思った通りに育って実を結んだ。
辛い実だった。
この結実を予想できながら、なぜ回避しなかったのだろう。
破滅を自ら呼び寄せることに何の意味を見出したのだろう。
多くの人には理解できまい。
嫌われたのではなく嫌わせたかったと言っても。
ジャンル:
小説
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