***子供部屋のうさぎ***    

幸せは、幸せだなぁって思う心の中に小さく咲く。

■鉄の匂い038■

2017年07月08日 | Weblog
「皆さん、おはようございます。 夏休みはどうでしたか? 宿題は全部終わりましたか? まだの人は、それぞれの科目の先生の相談してください。 工作は最初の授業の時間までに仕上げれば…」
まずは教頭先生の訓話。
生徒に動揺させまいとの配慮なのだろうか。
どうでも良い事務連絡が当たり触りなく始まる。
次に校長先生が段に上がった。
数人の生徒は既に状況を知っているらしく、すすり泣く声があちこちから聞こえてきた。
「さて、夏休みの間に、大変残念な事件が起こりました」
もう間違いない。
死体が発見されたのだ。
あの2人の死体が見つかってしまったのだ。
いったいどういう経緯で発見されたのだろう。
経緯によっては、犯人が捜し当てられるまでの時間稼ぎやアリバイ工作の余地はないかも知れない。
しかし。 見つかった死体は、二人のものではなかった。
見つかったのは、楠木くんの死体だった。
教頭先生から、いずれテレビニュースでも放映されてしまうだろうからと最低限の情報が供される。
その後に段に上がった人は初めて見る人で、当時としては珍しい、養護教諭という立場の人だった。
細かい話の内容は覚えていない。
楠木くんの死が余りにも唐突すぎて。
楠木くんはなぜ死んだのか。
あの二人の失踪と関連付けられているのかいないのか。
そして一番大事なのは『僕』がなんらかの形で疑われているのかいないのか。
『僕』の知りたい情報はなにひとつ語られることなく朝礼は終わった。
生徒は普通にそれぞれの教室に散っていった。
ふざけて追いかけっこをしながら。
先ほど泣いてた子は、楠木くんと親しい子だったのか。
『僕』は、楠木くんとよく遊んだが、楠木くんとよく遊んでた他の子には興味がなく、その顔も覚えていなかった。
一生懸命記憶を辿って泣いてた子を捜したが、結局その子は見つけられなかった。
ジャンル:
小説
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