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これでいいのか 選挙制度-民意ゆがめる“虚構の多数”小選挙区制度-

2007-11-23 01:02:44 | 国内政治
シリーズ これでいいのか 選挙制度
小選挙区制度
民意ゆがめる“虚構の多数”

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 日本共産党は第五回中央委員会総会(九月八、九両日)で、民意をゆがめる小選挙区制度や憲法じゅうりんの政党助成金など世界でも異常な選挙制度の民主的改革を呼びかけました。全国革新懇もそのための国民運動を呼びかけています。与党内からも全く違う立場から弊害を指摘する声があがっています。日本の選挙制度のなにが問題なのか―シリーズで検証していきます。今回は小選挙区制度の弊害です。(佐久間亮)

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 有権者・国民の意思をいかに正確に反映させるか―これが選挙制度の善しあしをはかる最大のものさしです。この点で、小選挙区制は大政党有利に民意をゆがめ、少数政党を排除する最悪の選挙制度です。一九九四年の「政治改革」法案で、政党助成金とセットで導入されました。小選挙区比例代表並立制のもと実施された過去四回(一九九六年、二〇〇〇年、〇三年、〇五年)の総選挙は、その害悪を際立たせています。(グラフ参照)

4割得票で議席7割
 この選挙制度を導入した、当時の細川護煕首相は「民意を集約する小選挙区制と、多様な民意を反映させる比例代表制とが相まって、より健全な議会制民主主義が実現する」などと繰り返し説明しました。

 しかし、小選挙区制では、どんなに得票率が低くても最大得票数の候補者一人だけが当選します。三、四割の得票で六割から七割もの議席を第一党に独占させる一方、少数意見を抹殺する「大政党本位」の選挙制度です。比例代表制を加味したとしても、民意をゆがめる小選挙区制の本質が解消されるわけではありません。

 〇五年の総選挙を見てみましょう。自民党は小選挙区議席(三百)の73%にあたる二百十九人が当選しましたが、得票率は47・8%です。小選挙区では連立を組んでいる公明党票が自民党候補の得票をかさ上げしているため、比例区での得票を自民党の実力とすれば、38・2%の得票率で実に七割以上の議席を獲得したことになります。

 自民党は、小選挙区でこれだけの“虚構の多数”を獲得したため、民意が比較的正確に議席に反映する比例部分を加えても是正はされず、圧倒的多数は揺るぎません。全体でも二百九十六議席、総定数の61・7%もの議席を占有したのです。

 これに対して民主党は比例得票率31%で議席は全体で百十三で占有率は23・5%、日本共産党は得票率7・3%で議席は九、占有率1・9%でした。仮に衆院の総定数(四百八十)を各党の比例票で配分した場合、自民党は百八十三議席、民主党は百四十九議席、日本共産党は三十五議席になります。(グラフ参照)

 〇六年五月に開かれた日本選挙学会のシンポジウムでは、〇五年の「郵政選挙」をめぐって「今回の総選挙は、恐れていた小選挙区制の問題点が露呈した選挙であった」「民意との格差はあまりにも度が過ぎている。民主主義に反すると言わざるを得ない」(阪上順夫・三重中京大学客員教授)との報告が出されました。

憲法理念に反する 
 小選挙区制では、議席に結びつかないいわゆる「死票」が増大します。〇五年総選挙でも、小選挙区では三千三百万票にのぼり、総投票数六千八百六万票の48・5%という莫大(ばくだい)な数に達しました。

 こうして議席に結びつかない票を大量に生み出すこの制度は、“自分の一票を生かしたい”という有権者の心理をとらえて、ますます大政党に有利に働くことになるのです。

 しかも二〇〇〇年には、当初二百あった比例定数を二十も削減し百八十にしたことで、民意はいっそう大政党本位にゆがめられることになりました。北海道ブロックが定数九から八に、四国ブロックが七から六へと削減されるなど少数意見も議席に反映される比例の長所が消されたのです。その結果、表でも明らかなように、比例区でも、大政党が得票率以上の議席を得るという事態が起きています。

 日本国憲法は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動(する)」(前文)、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」(四三条)と定めています。国民の意思を正確に反映した選挙制度を求めたもので、「大政党本位」に民意をゆがめる小選挙区制が憲法の理念にもそぐわないことは明らかです。

二大政党論が弊害加速
 マスメディアを中心とした自民党か民主党かの二者択一を迫る「二大政党」キャンペーンも、大政党優位、少数政党排除という小選挙区制の弊害に拍車をかけています。

 〇五年総選挙でも、マスメディアは「自民対民主」の二大政党をあおるとともに、「刺客対造反組」の攻防をたれ流すなど劇場型の報道に終始。選挙学会のシンポジウムでは、「昨年の総選挙で…テレビは木鐸(ぼくたく)どころか、ちんどん屋になった」(内田満・早稲田大学名誉教授)と批判が出されました。

 「小選挙区制を土台とした『二大政党』キャンペーンも加わって、少数政党を排除する。白か黒かの二分法が押し付けられ、多様な議論が封殺されている。こんな制度を続けていいのか」(志位和夫委員長)がいま問われています。

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与党内からも弊害を指摘 
 小選挙区制については、民意をゆがめる問題とともに、自民党内などからも、この制度の弊害についてさまざまな指摘がでています。

 自民党の加藤紘一元幹事長は『中央公論』(9月号)で、「小選挙区には無理がある」として次のようにのべています。

 「小選挙区制では一人しか当選できないので、投票総数の51%を取得しなくてはならない。こうなると、幅広い有権者の支持を集めるために中途半端な公約を掲げる傾向が生じる。(略)

 相手側の民主党の政策も大同小異だ。このように、小選挙区制の下では、政策論争は進まない。(略)

 日本には、やはり多様性を大事にする社会が必要なのだ」

 また、自民党内での執行部の権限が強まったとも指摘しています。

 「選挙区から一人しか選ばれない小選挙区制になると、党総裁による党の公認権が、極めて大きな武器となり、独裁政党制になりかねない。(略)

 郵政選挙で刺客を送られたトラウマは、いまだ党内に根強く残っている。反執行部的な言動は、よほどのことがない限りは慎んだほうがよい、という風潮が蔓延(まんえん)している」

 中曽根康弘元首相も都内での講演で、小選挙区制は権力主義になると語っています。

 「民主政治は万機公論に決すべしだが、小選挙区では万機公論は起こりにくい。中選挙区制の方が多元性のある議論が行われ、党内議論が活発になる。(小選挙区制で選挙を繰り返すと)権力主義の社会、官邸中心政治に移行し、日本全体が不活発になって貧弱になる」

(出所:日本共産党HP 2007年11月22日(木)「しんぶん赤旗」)
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