考えるための道具箱

Thinking tool box

テキストとデザインの良い関係。

2005-03-02 13:02:59 | ◎業
『お厚いのがお好き?』のあとを継ぐには、あまりにも脆弱な『NEW DESIGN PARADISE』というCXのTVプログラムが始まってそろそろ1年がたとうしている。ローカルの方は見る機会が少ないと思うが、著名or新進気鋭のクリエイターが、世の中にあるプロダクツ――歯ブラシ、電話ボックス、傘、そろばん、なると巻など――をリ・デザインしていくというバラエティ番組だ(作品をまとめた本『THE PERMANENT COLLECTION OF NEW DESIGN PARADISE』も発行されている)。

第1回、「横断歩道」を、自分の少ない引き出しから引っ張りだしてきた似非トリコロールに仕立てるというデザイナーの激烈なリ・デザインに始まったこの番組は、その後も、ときには、ユニバーサル性やアフォーダンスをあまり深く計算できないクリエイターの図工のような作品もまじえながら、約40のプロダクツを創りあげてきた。

いずれも私的には埒外のため、なんら評価すべきところはなかったのだが、ここにきてようやく初めて、納得性の高いプロダクト&商業デザインの作品が登場した。
ラナデザインアソシエイツというデザイン会社の木下謙一さんというデザイナーの手による「切符」は、過去の数々の素晴らしく美しいだけの作品に比べエキセントリックさはないが、「人と切符の関係」において必要なものを過不足なくまとめた気持ちのいいものとなった。デザインに着手する前は「またいつもどおりだろうなあ」と思っていったのだが、提示されたデザイン案のセンスとロジックのバランスはひと味違った。優秀なWEBデザイナーゆえに身についているユーザビリティやリーダビリティセンスのたまものだろうか。

もちろん円形状は、現行のさまざまなルールを破壊するため効率がわるく、生産者・供給側の論理で考えれば、100%実現はしない。しかし、そうであっても、もし切符のデザインを考え直すプロジェクトというものが実行された場合、思考停止に陥らせないだけの強いヒントがここにはあると思われる。

注目すべきは2点。まず、指を差し込める形状。乗客がすべて、この切符を指に挿している光景は異様かもしれないが、「どこに仕舞うのが一番安心できるのか」という切符の現状の課題についてのひとつの答えではある。無言ではあるが指をさしたくなるというアフォードされたデザインも巧みだ。

そして、なにより重要な2点めは、購入時間に合わせて印刷されるニュース。木下さんのねらいは、「注意を引くことで紛失を防ぐ」ということだが、ここにあるには「テキスト」こそが注意を引くものだ、という発想である。

おおむね商業的なプロダクト&グラフィックデザインの目的は「伝えること」「読ませること」であると考えたとき、どのような「テキスト」を、どのように挿入させるのか、どのようにデザインするのか?について、入念な計算が必要であり、これこそが商業デザインの要諦であるともいえる。

「大量のテキストをストレスなく読ませること」、「斜め読みが可能であること」、「充分な視認性があること」、結果として「意味・内容をわからせること」という観点から、心あるエディトリアルデザイナーやWEBデザイナーがこのことに腐心しているにもかかわらず、いわゆる商業グラフィックデザイナーにはテキストをたんなるオブジェクトとしか見ることができない人も一定数存在する。

そのなかにおいて、「テキスト」を挿入(デザイン)することで、アテンションを引くという、この切符の発想は、評価したいところだ。今回は「一般ニュース」なので、さしたる必然性はないが、この木下さんというWEBデザイナーが「読ませることが人をつなぐ」、という基本姿勢をもっているとすれば、それは素晴らしいことだと思う。

デザインはテキストに従属する、とは言い過ぎだが、少なくとも商業デザインにおいては、読むものとしてテキストを際立たせることに成功したものが、評価を得ると考えたいところだ。その証左として、都市部で暮らす多くの方が強く認識してしまった「教えて!goo」の駅貼りポスターキャンペーンをあげることに異論はないと思うが、どうだろう。

もちろん、メディア戦略と出稿量も大きな要因ではある。実際に寄せられた質問とは公表されているが、多少の仕込みもあるかもしれない。また商品・サービスとしては、複雑な訴求の必要もない(※1)。それゆえに「テキスト(コピー)」だけの力とは言い切れないが、少なくとも訴求力のあるテキストを、それを活かす最適なデザインで伝えることが、最大の効果をもたらす、ということを如実にあらわしたベスト・プラクティスであることは間違いないだろう(※2)。

あ、こんなに褒めてるけど、わたしはgooとはなんら利害関係はありません。念のため。

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(※1)数多くのgooの商品特長から「教えて!goo」にフォーカスをあてた、コミュニケーション戦略の選択のプロセスは、おそらくそれほど単純ではなかったと思います。
(※2)騒動でポータルのアクセスアップをはかるより、商品でアクセスアップをはかるという姿勢もじつはかなり真摯だと思っています。


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