プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◆ 4人のモナリザ ~「謎の微笑」モデルの真実~ の感想。(前編)

2017年10月13日 | ◆美しいもの。
何ヶ月か前に放映したNHKの番組をようやく見た。




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そもそも、「モナリザ」が肖像画であるわけはないのだ。




というのは、わたしの全くの主観だが。

しかしどうでしょう、「モナリザ」を見て、普通の人の注文によって普通の人がモデルになった、普通の肖像画だと思いますか。
それにしては内包するものが巨大すぎるでしょう。
枕詞のように「謎の微笑」がモナリザにつくのは伊達じゃない。個人の一般的な肖像画にはとても思えない。

ジョコンダ夫人、というのが長年の定説(?)だった。
それならそれでいいじゃないか、と思っていた。むしろ最大の謎はモデルが誰かということではなく、
一女性を描いて、それでなんでこんなご大層な、謎めいた絵にダ・ヴィンチが仕上げたのかという点。
テレビ番組は、モデル探しはしてくれるし、謎めいている点を指摘はしてくれるが、
なぜこうなったのかということにはほとんど言及してくれていなかった。

まあ当然といえば当然ですが。ダ・ヴィンチが何を考えてこの絵を描いたかなんてね。
何しろフクザツな人ですし。←お前は知り合いか。


でもこの番組では、なぜこんな絵になったのかという部分がいたく納得できて、わたしは胸が晴れたよ!


番組の前半は科学解析の手法の説明で、その新しさとかはあんまりピンとは来ないの。
なんか色々な色を当てて層をものすごく薄く切り分けていく、とかいう話で。
偏光フィルターを13種類だか使って、多くの色をモナリザに当てていく。
すごいのであろう、多分。とは思うけれどもあまりそのすごさはわたしにはよくわからない。

現在のモナリザの下には、他に描きかけて止めた3人の女性像が残っているらしい。
1番下層の女性はデッサン段階くらいで描くのを止めてしまった様子。
2番目の女性は、髪飾りの痕跡が残っていることから、聖母マリアを描こうとしたのではないかという予想。
当時髪飾りをつけて描かれるのは聖母のみだ、という意見が番組では採用されているんだけど、
これに関してはわたしは保留。

いかに倹約令が出されていたとしても、肖像画では普段の恰好よりおしゃれをした可能性もあるし……
前後何十年というスパンの話でいえば、女性の肖像画に髪飾りがついていたことなんてむしろ普通だと思うからね。
髪飾りをつけた聖母の例としてフィリッポ・リッピの「聖母子像」だけでは弱い。

まあこの2つは前座と言ってもいい。――ここでちょっと言いたいが、番組の作りとして前半もう少しあっさり目で良かった。
1番目2番目に律義に尺を取ったから、3番目と4番目の話が深まらなかったのではないかと惜しまれる。
後半が大事。


3番目がね(←これも今は隠されている)。
番組的にはこれがジョコンダ夫人なのではないかと言うのですよ。
一応彩色されたものが復元されていたが、この色はちゃんと分析から起こしたものだったかなあ……。
ちょっと内容を忘れてしまった。この復元の信頼度が十全とは言えませんけどね。

現行の(=4番目の)モナリザと比較すると顔の雰囲気はかなり似ているんだけど、顔の輪郭はだいぶ細身で、
髪型も少々違い、顔の向きももっと横向き。
線の細い、優し気な女性。慎ましやかで上品。――実際にいそうな女の人。

かなり説得されたのが、3番目の女性の服装でね。
当時の流行りの服装をしているらしい。袖は付け袖でリボンで結ばれていて、(なんと袖は取り換え可能だそうだよ!)
絹の肩掛けが人気だったとか。
番組に出て来たイタリアの服飾史家が、1500年から1505年に流行った服装だとか細かく刻んでいるので、
イタリアのモードはそんなに細部までわかるのか!と驚き。

1500年て日本でいうと、……日本でいうと、と考えて、思いつくものがサッパリなかったので
検索してみると、まあこれが目ぼしい出来事すらもない感じで。
あえて目ぼしいものを挙げれば1489年銀閣完成、その後は……1543年の鉄砲伝来ですよ!
日本だとそういう状態なのに、イタリアでは服装の流行りまでわかる!
なんのかんのいって歴史史料についての厚みは違いますね。さすが古代ローマの国です。

そこに「1503年にレオナルドはジョコンダ夫人の肖像を描いている」とのダ・ヴィンチの友人のメモ書きを合わせると
ピタリ、という。
情況証拠ではあるけれども、衣装と史料と絵の内容がそれぞれリンクされればけっこう信頼度は上がるのではないか。
今まで何が問題だったかというと、文献でどれだけ「ダ・ヴィンチがリザを描いた可能性」を調べても、
“それがあの絵だ”という部分には結び付かなかったもんね。

それが徒労感につながっていた。
美しい絵がある。それのモデルが誰であろうと、美しい絵の美しさには関りがない。
モデル探しに意味はあるのか?

正直に言うと、わたしは「モナリザ」、そんな好きな絵ではない。
ひとえに――手垢が、あるいは目垢が、つきすぎた。名画といえばまず出てくる絵、子供の頃から飽きるほど目に触れた絵、
なんかもう正直食傷。
ルーブルへ行った時も、「モナリザ」は、ああ、あるんだ、と横目で通り過ぎたくらい。
そもそも人だかりで見るっていっても見ようがないというか。


閑話休題。
3番目の復元図を見て、ああ、これなら納得出来ると思った。これならちゃんと女性の肖像画だ。
今まで感じていた違和感が解消される。
――それなら、現行の4番目のモデルは誰なのか?


……長くなりすぎたので、ここで一旦切ります。久々に大作だな。







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