1月のこと。近くに住む同級生で一杯やることになった。年に何度が集まってとりとめもない話をしながらワイワイガヤガヤとやっている気の置けない同級生の飲み会であるが、今回はそのうち一人の送別会も兼ねての集合だった▼不況によりそれまで勤務していた営業所が閉鎖。会社の異動で埼玉県へ単身赴任することになった。魚沼と埼玉は高速道路を使えば数時間で行き来できる距離であり、当然のことながらちょくちょく帰ってくることになるわけであるが、「50歳も近くなっての初めての単身赴任は少々きついのではないかな」と心中を察しながらビールを飲み始めた▼丁度よくアルコールもまわり話題が景気のことに及ぶと、別の一人が「仕事が減って休みの日が増えた。大学生がいるのに給料が減って大変だ」と苦虫を噛み潰したような顔でポツリ。長引く不況に追い討ちをかける百年に一度といわれる金融危機の影響が身近なところまできていることを実感する宴席となった▼専業農家をしている男が「実は倅が帰ってくることになった」と浮かぬ顔で切り出した。県外で働いていた長男が家に帰ってくるのだから親としては、もうちょっと嬉しそうな顔をしてもいいのにと思いながら「それは良かったな」と返すと、間髪入れず「バカ、派遣切りにあって仕事が無くなって帰ってくるんだ」と一括された。「帰って来たって就職先を見つけるのは難しい。農業を手伝わせるならもう少し田んぼや畑の面積を増やさなければならん。貸してくれる農家はいないか」とも付け加えた▼酒の席で不景気のことを口説くのは世間の常であるが、差し迫った具体的な事案が次々と出てくるとさすがに宴席もいまひとつ盛り上がらない。年明け早々に厳しい現実を認識させられることになった同級生の飲み会となった▼おそらく来年も同じ時期に顔を合せるであろう仲間たち。来年こそは明るい話題で席が盛り上がり、話に花が咲くことを期待したいものだ。