無意識日記
宇多田光 word:i_
 



年をとってくると馴染みの曲ばかり聴くようになってくる、というのは良し悪しは抜きにして事実だ。人生と同様に、と言っていいのかどうかわからないが、もうこれから人生に失敗や不安が少ないと感じるようになる、或いは、あまり不安を感じないようになってくると、それに伴って、聴く音楽も「安心して聴けるもの」に片寄っていくのかもしれない。

昨日かな、紅白歌合戦の曲順が発表になった。『花束を君に』はピコ太郎を入れると45番目だ。ヒカルのあとには石川さゆりと嵐のみで、その紅組白組各々のトリが「天城越え」と「メドレー」だから、実質「2016年を締めくくる」感じがする最後の曲は『花束を君に』になるだろう。

他の歌手たちの選曲をみても、2016年の歌を歌う歌手・グループは少ない。それだけヒット曲が少ない、というのもあるが、同時に、紅白歌合戦を視聴する層の年齢が上がってきていて、彼らが昔の歌の方を好んでいる、という側面も強いように思われる。つまり、ヒット曲の多寡を論じる前に、そもそものニーズとして今年の歌、最近の歌が求められていないのだ。

その点、ヒカルの出演はRADWIMPSやピコ太郎らと共に"異色"ですらある。例えば、ヒカルに2015年までの実績がなかったとしても、言い換えれば、もし『花束を君に』がデビュー曲だったとしても、この歌の愛されぶりからして、2016年の最後の3曲のうちの1曲に選ばれても皆違和感も異論も持たないだろう、と言えるだけのヒットを記録した訳だ。そこが誇らしい。

宇多田ヒカルの知名度と実績と実力があれば、これから毎年紅白歌合戦に出演する事は可能だろう。そして、一年ごとに『Automatic』と『First Love』を歌っておけば、それはそれで皆納得する。今の石川さゆり状態である。彼女も来年は「津軽海峡冬景色」を歌ってくれるだろう。私も大好きな歌なので(メロディー自体は殆どロニー・ディオだもんね)それはそれで嬉しい。

だが、贅沢を言えば、ヒカルにそれはして欲しくないかな、と思う。その年にヒットした曲があれば出て貰えればいいが、何もないのに昔の歌を歌いに来るのは、それ自体は「津軽海峡冬景色」同様嬉しい事だし、世間はそれを求めているだろうし、何よりこれから年々どんどん更に紅白歌合戦は皆のニーズに応えて懐メロ番組になっていくだろうから、実はそれで何の問題もないのだ。でもそこで踏みとどまって我が儘を言う方が矜持を示したと言えるのではないか。これからの紅白の本道を外れていく形で、その年のヒット曲を歌うという"古き良き紅白歌合戦の伝統"を異質さを毎年強めながら受け継いでいければ、何て言うんだろうな、紅白歌合戦の出演に強くこだわっていた藤圭子に対する何よりの弔いになる気がする。一言で言えば、皮肉色の復讐劇だ。

ヒカルがそこの所をどう思っているかはわからない。今回出てみて快適でなかった(ベストなパフォーマンスを出せる環境を得られなかった)のなら、勿論二度と出演してくれなくて構わない。ただ、母の思いをどうするかに関しては、全く口を挟むつもりが私にはない。気の済むまで、憎しみも悲しみも喜びも懐かしさも怒りも何もかも抱えて放ってまた飲み込んでくれたら、と思う。好きにしろ。まぁそれだけだよね。こちらからしたら、これ以上は言える贅沢なんてない。また歌番組出演は、新しいテイクを得られるというだけで、無上の喜びなのですから。

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コメント
 
 
 
242明日は、『とと姉ちゃん』総集編とスピンオフ、そして『SONGS』スペシャルも・・・。 (赤い手)
2016-12-30 23:12:26
『SONGS』スペシャルの再放送は知っていても、『とと姉ちゃん』の総集編とスピンオフの放送は、誰も知らないようで・・・。
 
 
 
これはどうもどうも (i_@充希×架純)
2017-01-08 09:04:35
大丈夫ですよー、その点、しっかり宇多田共和国アカウントからツイートしておきましたから。読んだ人の中にはチェックしてくれた人も、居るんじゃないかな。
 
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