無意識日記
宇多田光 word:i_
 



「ライヴ/コンサート/ギグ」などなどの呼称の差異についてあれこれ。


5月1日のNHWBBSでの僕のカキコ転載:

コンサート: クラシックの「コンチェルト(協奏曲)」と同語源。要は演奏会のこと。

リサイタル: 主にひとり舞台的な催し物。人が主役と思って頂ければ。だからジャイアンがやるのはこの“リサイタル”。

ライヴ: 生演奏のこと。ラジオや蓄音機(~iPod)の登場で、音楽を聴くのが必ずしも生でなくなったことから出てきた使い方だと思われる。この表現が普及し始めたのは、レコードのコンサート実況録音盤のことを「ライヴ盤」という風に言うようになったからでは?と勝手に僕は思ってますが、真相のほどは定かではありません。「ライヴハウス」という表現がいつからあるのかがわかればねぇ・・・。

ギグ: 演奏者側が自分のやる“仕事”としてライヴのことを指す言葉。「今度あのハコでギグやるんだ」みたいに使う。でも今となっては見に行くほうの人も言うようになっていて“ライヴ”と殆ど同義になっちゃいましたね。

***** *****(以下、今日書いた分です)***** *****

 英語でいう「live」という表現は、結構昔からありますね。英国のラジオ放送局「BBC」での生演奏音源の数々は沢山CD化されてるんですが、タイトルは「BBC Live」「BBC In concert」「BBC Sessions」と多様です。(最後のは、あの曲にも出てきましたからみなさんご存知かと。(笑)) それぞれのミュージシャンのジャンルや録音時の状況等鑑みても、案外どれを使っても構わない雰囲気です。でも、やっぱり「Live」が多いかな。

 そんななので、日本で「ライブ/ライヴ」という表現が使われることもまた、昔から多かったわけです。(DEEP PURPLEの名盤「LIVE IN JAPAN」は1972年の作品ですからもう34年も前ですね)しかし、この言葉がより広汎な市民権を得始めた契機となったんのは、恐らく1987年の川崎クラブチッタの竣工でしょう。それまで、コンサートは席のあるところで聴くものだったのが、この日本初の「スタンディング専用会場」(つまり椅子がない)の出現により、「立ちっぱなしで騒いで参加するもの」へと変貌していきました。勿論、それまでは「ライヴハウス」なるものはあったのですが、このクラブチッタは最大で1400人という人数を押し込むことができる大きな会場だったので、メジャーなアーティストがスタンディングでコンサートを行うには格好の場所だったのです。

 以後、赤坂ブリッツとか全国のZEPPとか渋谷AXとか、似た趣旨の会場がどんどん増えていき、「スタンディング・ライヴ」というスタイルが定着していきました。

 それとともに「ライヴ」という呼称もまた一般化してきたんだと思います。「コンサート」というと、どうしても受身で「音楽を聴く」というイメージが強かったですから、このような「舞台の上と下が一体となって楽しむ」というスタイルは、その言葉のニュアンスにそぐわなくなっていったんでしょうね。・・・たぶん。

 なので、たとえば「コンサート・ホール」「ライヴ・ハウス」はたくさんあっても、「コンサート・ハウス」「ライヴ・ホール」というのは(僕の知る限り)ありません。「ホール」というと、いかにも音響と観客席の設備という感じ、「ハウス」というと、親密さのある、みんなで騒げるスペース、という感じがします。


 といっても、やっぱりライヴとコンサートの間に厳密な区別はありません。それでもこういう「なんとなくの使い分けの仕方」を強いて考えるなら、上述のように、「コンサートホールで行うのがコンサート」「ライヴハウスで行うのがライヴ」くらいのイメージでいればいいんじゃないでしょうかね。

 で、なかたにさんが宇多田ヒカルの「武道館コンサート(1999年の爽健美茶コンサート)」と「武道館ライヴ(2004年のヒカルの5)」って例を出してきはりましたが、そこには前述のようなニュアンスの違いをこめたかった、というのがあると思うんです。「concert」の接頭辞「con-」は、日本語に訳す場合は「協」あるいは「共」という漢字をあてはめることになりますから、「美茶コン」のほうは、他のアーティストたちと“共演”するので「コンサート」という響きがよくあてはまったのかもしれません。また、「武道館ライヴ」という表現は「武道館なら、ライヴハウスみたいに身近に感じられるのではないか」という願いを込めたくてつけられたものかもしれません。いずれにせよ僕の憶測に過ぎませんけどね。

 座長さんが例に出してくれたBOφWYの「GIG」っていうのも、似たような思いが込められているのではないでしょうか。彼らのお別れコンサートの模様を収録した「LAST GIGS at TOKYO DOME」は、「東京ドームみたいなデカイ会場でも、俺たちにとっては昔と同じように“GIG”なんだ」っていう主張なんだろうな、と発売当時の僕は解釈しましたし(小学生の戯言ですけどね(笑))、会場の大きさがどこであれ、ファンとの一体感を重視するとなると「ライヴ」とか「ギグ」とかいう表現を使いたくなるんじゃないかな。元々の語源は、座長さんが仰っているように、ジャズ・ミュージシャンの人がライヴハウスなんかで一晩演奏する仕事のことを「ギグ」と呼び始めたこと、みたいですが。

 いずれにせよ、ミュージシャンの使う言葉に対して「厳密な定義」を要求するのは得策ではありません。彼らは、あくまで自分のフィーリングを重視して言葉を選び使うので、本人たちからして言葉の選択理由をよく自覚していない場合が大半なのです。たとえば「ハード・ロックとヘヴィ・メタルってどうちがうの?」とかってきかれても、そもそも使い始めたひとたちが「なんとなく」とか「その場のノリで」「勢いで」としか考えてないので、どう説明するのが正しい、とか、ないんですよこれが。(ちな!みに「ヘヴィ・メタル」ということばを世に広めるキッカケを作ったのはジェフ・バートンという雑誌編集者の人ですが)

 そんななので、『「UTADA UNITED 2006」は果たしてコンサートかライヴかはたまたギグか!?』という呼称の問題は、結構不毛だと思います。(笑) でも、「ファンとウタダが一体化すること」がテーマだということですから、これは「ライヴ」と呼ぶのが一番しっくりくるかもしれませんね。いずれにせよ、それは実際に会場に足を運んで体験したときにわかることでしょうから、それぞれの思い入れで、今回のツアーの呼び方を決めればいいんじゃないかな。小難しく考えず、気楽にいきましょう、Take it Easy Breezy♪

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