無意識日記
宇多田光 word:i_
 



宇多うたの方は好調だが、もうひとつの目玉であるハイレゾの方はどうなっているのか。どうも芳しい雰囲気がしない。もし仮にくまちゃんUSBのシリアルナンバーがランダムでなく"先着順"だとすると、かなり厳しい状況だと言わざるを得ない。

ある程度の予想はついていた。何しろ、くまちゃんUSBには未発表音源の類は一切無いのである。ヒカル"入魂"のデザインがあるだけ。いや私なんかにはその"だけ"で十分過ぎるのだが。しかし、ハイレゾ購入層というのは基本的に配信購入環境が整っている層なのだ。中身だけなら半額以下なのだから、基本的にはそちらを購入するだろう。

しかし、そもそも高音質に対する意識改革も、ハイレゾリマスタリングの話題性もないんだなと痛感させられたのがiTunes StoreでのSingle Collectionのチャートアクションである。今回のMastered for iTunesより従来のバージョンの方が売れているのだ。検索の優先順位とかベストセラー順がデフォルトだからだとか言い訳は幾つでも出来るが、要するにiTunes Store利用者の本音は「音質なんてどうでもいい」のである。聴ければよいのだ。

この現状では、ハイレゾ配信を購入させる事は難しいし、Kuma Power USBを購入させるという目論見はもっと難易度が高い。困った。

私の売上予想の仕方は以下の通りであった。まず、毎度言っているように日本には「Utada Hikaruの音源が出たら何も考えずに買う」層が8000~10000人程度居る。この四年で大分減った感はあるがまだこの範囲内だろう。自分のTwitterのフォローさんフォロワーさんのうち、2~3割はこの層だ。なおIn The Flesh 2010に行った人間が20人前後含まれている。まぁつまり、自分の視界に入る人たちのパースペクティヴを大体100倍すれば日本のコアなUtada Hikaruファンの"生態"を知る事が出来るだろう、と想像した。その計算でいくと、自分の周りでKuma Charm USB(何だかコロコロ名前が変わっているが、現在手頃な呼び名を模索中ってことっす)を買ったと言ってる人数から推定して日本全国で大体2000~3000人位が購入してるんではないかと想定していた。まぁつまり、極々大ざっぱに言って、発売日までに限定5000体のうち半分位は捌けてるんじゃないかと。いやーそうじゃなかったみたい。
シリアルがランダムじゃなかったらね。

どこから推定をやり直せばいいかは私の今後の課題としておこう。それはいいとして、ハイレゾをUSBで売り、そこにアーティスティックなデザイン性を加味していくという基本路線は悪くないと思う。しかし今回は、

1.未発表音源が無い(既発曲のみ)
2.配信で全部買える
3.そもそも2.16万円は高い

という3点が、悪い方に出てしまったか。ランダムじゃなかったら、だが。(しつこい) せめて既発曲でもいいから、"USB限定ハイレゾリマスタリング音源"があれば違ったかもしれない。Flavor Of Lifeのオリジナル・バージョン、Passion - after the battle -、Prisoner Of Love Quiet VersionなどがUSB限定でハイレゾリマスタリングされていたら…いやされてなくても配信とUSB両方買っちゃったんだけども私は。

まぁ今となっては後の祭り。次に今回の教訓を活かそう。ここまで書いておいて明日「完売しました」表示がユニバーサルストアに表示されたら私間抜けだがそれはまぁめでたい事なのでよしとする。いや本来なら「限定品完売」はオークションでの高騰を招くので基本的には奨励されないのだが。

今回のような企画が今回限りになるのは惜しいし、何より、売れなかったらヒカルがガッカリするのが残念だ。せっかく気合い入れてデザインしたのにねぇ…。うん、でも試みはまだ始まったばかり。これからの展開次第でどうとでもなるだろう。私もここから頑張ってハイレゾリマスタリングのよさを宣伝していきますぞい。それで売れるのは配信の方ばかりな気もしますけどね…。

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昨日のCS特番で一通り宇多うた関連プロモーションは終了したのかな。お疲れさまでしたm(_ _)m いや収録はずっと先に終わってただろうけれども。

今回は私からすると全くの予想外となる初週2.13万枚を売り上げオリコン5位を記録するなど、いやはや見事なプロモーション戦略だった。自分がもし担当者だったら見込みを誤り売り切れ続出を招いて左遷決定だったろうから身も凍る思いだわ。自分が担当でなくてよかった。

本当に、発売週に辻褄を合わせてきたなぁという印象。そこに至るまでに「あ、これは買った方がいいのかも」と思わせる戦術。雰囲気作り。手慣れたベテランの仕事とはいえやはり上手い。一部で店頭品切れを起こしたというからそれでも見込みは低すぎたという事か。

勿論、このクラスの売上枚数の場合、何より内容の充実がいちばん効いた事だろう。井上陽水のインパクト、浜崎あゆみの話題性。それぞれのアーティストのファンの皆さんも、結構気にしてくれたかもしれない。特に、iTunes Storeでシングルカットされたあゆの存在感は特筆すべきだった。彼女にとってみても、自身の実績の再評価という面でメリットが多少はあったのではないか。

ならばもっと参加アーティストを増やしておけば、更なるリスナーの流入は見込めただろうに、何故今回は13アーティストという数に区切ったのか。何か13という数字に意味はあったのだろうか。

沖田さんによれば、例えば2枚組にするようなつもりはなかったという事だ。そこまでしてしまうと雰囲気が賑々しくなりお祭り感が出てしまう、と。寧ろこの作品は、"中編小説を読むような感じで"接して欲しかったと。確かに一時間前後というのは、数十ページの小説を読むのに要する時間と大体同じだ。"ソング・カバー・アルバム"と銘打つからには、宇多田ヒカルと参加アーティストたちの"作家性"にこそ焦点が当たって欲しい。ディレクターとしての狙いは非常に明確だった。ただ、13という数字はたまたまそうなったというだけで深い意味はないらしい。「どうせなら15周年という事で15アーティストにしておけばよかったかな、と気がついたのは後になってからでした(笑)。」と彼は冗談を飛ばしていたが、取り敢えずアルバムとしてはそこまで厳密にコンセプチュアルにしていた、という訳ではないらしい。

寧ろ、彼のアティテュードとしては、オファーするところまでは想像力をはたらかせるけれども、一旦オファーが通った後は完全に各アーティストの作家性を信頼し全面委任するかたちだったようだ。そこから先は自分の中の期待を一旦白紙に戻すと。これをやってくれるディレクターはなかなか居ない。アーティストの仕事を最大限尊重してくれる態度だ。選曲の重複を回避するといった最低限の仕事は徹底し、そこから先はアーティストに出来るだけ自由にやってもらう、その方向性を貫いた事が今作の期待以上の充実に繋がった。全く大したディレクション能力だ。これで彼もレコード会社の「名物ディレクター」として宇多田ファン以外にも名前が知れ渡ったらいいのに。いや御本人は「自分は裏方だから」と謙遜されるような気がしますがね。

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