うみのまぐろうの日々

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レビュー シンゴジラを見ての雑感

2016-07-30 22:07:14 | レビュー

シンゴジラは、確かに新しいゴジラといえるだろう。

ゴジラはその世相世相において、人間と自然、そして科学のかかわり方を反映する。メカゴジラであったり、ヘドラであったり、ビオランテであったり、キングギドラであったり、そういった作品群しかりである。

シンゴジラはの第一形態は未熟なものであったが、川を遡上し上陸すると、暴れまわって第二形態となって再び海へと帰っていく。

第四形態となって再び現れたゴジラは、鎌倉から上陸、町を直線状にぶっ壊しながら自衛隊を撃破。虎ノ門や霞が関を火の海にし、ロックオン背中レーザーやすぱっと切れる熱戦で貫通弾を用いて空爆を行う米軍の戦略爆撃機B-2を撃墜する。そしてさらに北上し、東京駅で停止し、充電期間に入る。

ちなみに、本作で描かれるゴジラは、核熱エネルギー変換生体器官を内蔵する混合栄養生物で、霞を食って生きられる仙人みたいなやつである。マグロ食ってるやつとは全然違ってその体長は過去最大の120メートルでしっぽも長い。

再びゴジラが目覚めるまでの二週間のあいだ、破壊された霞が関から立川へ居を移した、巨大不明生物特設災害対策本部の地道な戦いが始まるのである。

だが、前途は多難である。

国連はゴジラに核爆弾を落とすといってくるし、2週間すればゴジラは目覚めると予測されるし、しかも目覚めたゴジラは増えたり小型化したり飛んで行ったりするかもしれないという。

シンゴジラにおいて、地球防衛軍は出てこない。むしろ劇中で書かれる国連の動きは、ゴジラを東京もろとも核兵器で吹き飛ばそうとする、圧力団体である。

現実において、我々は、イラク戦争やイラン戦争、中東問題やアラブの春を経て、世界が一つにはなれないのだという現実を知っている。

また、オキシジェンデストロイヤーのような科学者の作り上げたゴジラを抹殺する超兵器は出てこない。また、Gフォースのメカゴジラやモゲラといった、ゴジラと正面から戦うための兵器は現れない。

我々は、福島原発の事故を経て、すべてが科学の力で即座に解決するわけではないという現実を知っている。天才科学者やよくわからないすごい機関がなんとかしてくれる、といった幻想はおそらく現代においては適さない。

そして、愛と友情、知恵と勇気でゴジラを倒す、スーパーヒーローも本作には存在しない。ゴジラを倒したのは、ゴジラを倒したいと思った人々の、知恵と努力が結集した、血液凝固剤の経口投入という地味な作戦で、そこに用いられる重機や兵器も既存のものだ。

そして、ヤシオリ作戦を成功させたのは、日本を核の炎をで焼かせまいとし、狡猾な外交手腕によってフランスを説得せしめ、核攻撃を1日遅らせた事務方や、米軍を動かし、日米の共同戦線を張った、日系アメリカ人の米国大統領特使の尽力がある。

本作においてクローズアップされ続けたのは、等身大の国のあり方であり、人のあり方であった。

シンゴジラでは、繰り返されるメッセージがある。「好きにしろ」という言葉である。本作のゴジラは、核汚染によって妻を失った、エネルギーにも精通している科学者が人類に警鐘を鳴らすために「好きに」作ったものだ。そしてその「好きにしろ」という言葉は、ゴジラという理不尽と戦う小さき者たちひとりひとりに課せられた命題でもある。

この世界には、ヒーローなどいない。快刀乱麻を断てるものなどいない。やりたいことをやるためのしがらみやルールも外圧も多すぎる。自分の人生や将来だって大事だ。しかしながらそういったものに知らねえよを突き付け、なにか一つのために不退転の覚悟を貫こうをという意味であると思う。やりたいことのために、周りのことはいいから、自分の将来のこともいいから、とにかくやってみようぜ、やや乱暴なというメッセージだ。だが、そのメッセージは現代に生きる我々に投げつけらるものとしては非常に胸を打つものとして伝わってくる。そして、凍結したゴジラを目の前に、政治家を辞めない、といった主人公矢口の言葉には、好きにした責任は前に進むことによってとれというメッセージも付加されていたように思う。

また、気のせいかもしれないが、本作のゴジラは、常に人間目線で描かれ、ゴジラも人間を見下ろしている。そういった点で、ゴジラと人間の対立構造は明確だ。そしてヤシオリ作戦であるが、あれぐらいでゴジラがぽんぽん転倒したり、本当にするのだろうか、と思ったりもする。ゴジラという神は人間の本気を見て、「負けてあげた」感があるように感じるのである。

 

緊急時の閣僚の動きがとてもそれっぽかったり、

緊急時の官僚の動きがとてもそれっぽかったり、

エヴァンゲリオンっぽい音楽が途中かかりまくったり、

前田敦子がちょろっと出ていたり、

無人在来線爆弾というネーミングが最高だったり、

ゴジラさんにもっと町を吹っ飛ばしまくってほしいと期待したり、

 

見どころはほかにもたくさんあるけれど、子供の心を持った大人が見る映画として、良い映画だと思う。

迷っているならば、必ず見ましょう。特に新宿のゴジラの下とかで。


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