(冒頭の絵は鳥居派による初代市川団十郎の歌舞伎絵である)
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喜多川歌麿は、宝暦3年(1753年)生まれと云われているが、年代が近い
浮世絵師は7歳後に葛飾北斎、8歳後には山東京伝(戯作者・浮世絵師)
がいる。菱川師宣や鳥居清信は90年以上前、鈴木春信も30年以上前の
人物で、歌川(安藤)広重は40年以上後の浮世絵師である。
<主な浮世絵師の生存年代>
1650 1700 1750 1800 1850
東洲斎写楽 (?不明)
鳥居清信 ----- (1664-1729)
鈴木春信 ----- (1725? -1770)
喜多川歌麿 ----- (1753-1806)
葛飾北斎 -------- (1760-1849)
歌川広重 -----ー (1797-1858)
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<歌麿は美人画の最高峰>
歌麿という名前のせいもあるが、美人画浮世絵の代名詞になっている。
浮世絵師が描く絵は、風景画、花鳥風月画、動物画、風俗画、役者錦
絵、美人画、春画など多岐にわたるが、その中でも人によって得意分
野、あるいは優れた分野とみなされているものがある。例えば、
葛飾北斎であれば、富嶽三十六景や富嶽百景に代表される新しい感
覚の「風景画」、
歌川(安藤)広重も、東海道五十三次に代表される詩情歌かな日本
の「風土描写画」、
鳥居清信は、均整のとれた八頭身美人画を得意とするが現代に至る
まで「歌舞伎錦絵」を本領としている、など。
そして喜多川歌麿は、個々の人物の動きや表情、仕草を捉えながら、
その心理描写を巧みに描いた「美人画」では右に出るものはいない。
また、「美人大首絵」という新しいジャンルを確立した。
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<すばらしい作品>
一般的には、「婦女相学十体」とか「娘日時計」とか「当時三美人」な
どの名前が挙がるが、他にもすばらしい作品が沢山ある。私が面白
いと思ったものを挙げてみる。
「針仕事」 ・・・子供が膝元にまとわりつくなかで、薄布を広げて
針仕事をしている光景
「婦人手業操鏡 洗濯」(ふじんてわざあやつりかがみ せんたく)
・・・婦人が小さな(風呂いすのような)いすに座って、
袖をたくし上げながら「たらい」で洗濯をしている
日常の家庭の情景
「姿見七人化粧」(すがたみしちにんけしょう)
・・・化粧をしている婦人が写る姿見の光景(写って
いるのは一人だが七人とはいかに?)
「ビロードを吹く娘」
・・・当時流行していた、吹いたり吸ったりして音を出
すビロードの玩具を吹いている娘の光景
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<礫川浮世絵美術館で今回鑑賞したもの>
「六玉川 丁子屋内雛鶴 つるじ つるの」
(むたまがわ ちょうじやうちひなずる つるじ つるの)
私の記憶違いでなければ、2005年秋に、福岡市博物館で開催された
北斎、広重、歌麿の「浮世絵三大巨匠展」で、歌麿の「風流六玉川」が
展示されていた筈だが、六枚つづりの風流画が一挙に展示されるのは
初めてで、珍しいことだと聞いた。
今回の「六玉川」がその中の一枚なのかどうか分からないが、この作
品は、動きや仕草、それに心理描写が伝わってくるような姿かたちに
加えて、呂の着物の色彩や描写から、夏の日のその場の情景が伝わ
ってくる。これもすばらしい作品であると思う。
「六玉川 丁子屋内雛鶴 つるじ つるの」
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<葛飾北斎をみる>
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