品格のない社怪学好きによる「あることないこと」雑記帳

趣味は温泉と映画、two wheelerのあることないこと・ないことないこと「つれづれ日記」

企業戦士の熱い共感?『ボーン・アルティメイタム』

2008年03月09日 | about 映画
第1作『ボーン・アイデンティティー』、第2作『ボーン・スプレマシー』に続く「ジェイソン・ボーン」シリーズの最終第3作、最後通告(アルティメイタム)

前2作もなかなか面白かったが、今回が最高傑作。

六年前に較べて、主役のマット・ディモンが存在感重厚。
記憶を失い、過去を探し求め、自らのアイデンテティを取り戻そうとする苦悩する役には、さすがに六年前のマット・ディモンではちと若すぎたかもしれないが、ジェイソン・ボーンの成長が彼の成長にそのまま重なったかのように成りきってる!!。
これは続編マチガイなし、の傑作か。

ベルリン、パリ、ロンドン、マドリッド、タンジール、ラストのニューヨークのそれぞれに見せ場があるが、秀逸なのはタンジールの屋上の追跡シーン。
狙われるのはボーンを理解し行動を共にする女ニッキー・パーソンズ。追う暗殺者、それを追うボーンは地元警察の執拗な追跡を受ける。
前回は救えなかった女を今度は救おうと緊迫の追跡劇。

特に、街中の雑踏の追跡シーンはブレた画像でもハンドカメラの威力がまざまざ、臨場感がすごい。

ほんの1秒足らずの刹那、追跡中のビルの屋上から!?隣のビルの窓へのジャンプのシーンは秀逸な出来!!!。
CIAが差し向けた暗殺者との狭い室内での格闘シーンも見もの。

ぜひブルーレイがでたらメイキング映像も見たい! 
100レンタルではメイキング画像が特典に含まれないのは残念。

ニューヨークの狭い街なかでのカーチェィスは30年前の「フレンチ・コネクション」へのオマージュと監督。
オレたちにもあれ以上に撮れるか、という意地と言おうか、しかして過去の作品とその製作者に敬意を払いつつ、それ以上の作品を、という挑戦。

特にラストの対決シーンが心に残る。
ボーンを追い詰めるCIAの工作員は、その前のカーチェィスのシーンでは事故った車の中で傷ついて、ボーンは彼に銃を向けるが撃たないで去っていく。

彼は再びボーンを追い詰め、丸腰のボーンに銃を突きつけながら問う「なぜさっき撃たなかった」と。
ボーンは応える。「なぜ俺たちは殺し合わなくてはならない? お前はオレを殺す理由を知らされているか? (こんな殺し合いをしている)俺たちはまともな人間と言えるか?」と。

「およげタイ焼きくん」ではないが、非情な組織や金儲け第一の企業の論理の中で、理由も知らされず、逆らうことも許されず、ただひたすら命令に従わされて、時に自らの良心も裏切って献身という名の忠誠を求められているかもしれない多くの労働者(会社に飼われた家畜=「社畜」という)にとっては、心に滲みるセリフかもしれない。

ciaという組織は、所詮アメリカ合州国の「国益」とやらを守るために活動していて、
例えば南アメリカで、中東で、アジアの片隅で
「親米政権」・・・つまり、アメリカの政策に従順に、企業が金儲けをするために協力する都合のよい政権を守るために、あるいは、そういう政権を作るために、
表に裏に武器を供給したり軍事顧問で入れ知恵したり、あるいは民主的に選ばれた政権を、クーデターを起こさせて転覆させたりしてる、つまりは「極悪非道」な奴ら(笑)、ではあるが。
かつて王様便羅ディンに武器供与し、兵士を訓練したのもCIA、それが911で牙を剥く。
他国の運命を弄んで恨みを買ったなれの果てが、ナインいれぶん。

『ボーン・アルティメイタム』そういうCIAの悪辣さを一見抉ったふりをしつつ、腐ったCIAにも、中には良心的な人は居る、というアピールをしているようでもある。

(ちょうど、「ソルジャー・ブルー」の欺瞞・・・
アメリカの騎兵隊がインディアンたちを虐殺したという史実を隠しおおせない以上、
正直に騎兵隊がインディアンの村を襲い女をレイプし、子供も殺した残虐非道を描いて
騎兵隊のありようを抉る社会派のふりをしながら、
実はそういう騎兵隊の中にも、卑劣な虐殺に心を痛める良心的な兵士もいた、
とアピールする偽善的な、免罪符の映画であるように)

まぁ、それでも面白かった。
ノンストップアクションとは言いながら、緩急の流れも見事。

サッカーでは、目の前の敵選手をドリブルで抜こうとするときには、一旦ボールをキープし動きを緩めながら、相手のスキを覗って次の瞬間に凄まじい俊敏なダッシュで相手を置き去りにするように。

この映画の緩急のリズムと、怒涛のしかし緻密に練られたアクションには脱帽する。
音声日本語・日本語字幕(吹き替え用)で、次に音声英語・日本語字幕で、最後にポール・グリーングラス監督による解説音声・その日本語訳字幕、で三回観ても面白い。
エンディングのテーマソングが耳から離れない・・・つて、睡眠不足で、何度も観ながらしまいには寝てしまって、睡眠学習で刷り込まれたってのは秘密です(笑)。

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