UGUG・GGIのかしこばか日記 

びわ湖畔を彷徨する独居性誇大妄想性イチャモン性前期高齢者の独白

ニュートリノでも突破できない司法という国家の壁・・・飯塚事件・・

2015-10-08 01:59:13 | 日記

今日は暗い話です。よろしければおつき合いください。

 一昨日の夕刻、東本願寺の施設「しんらん交流館」で行われた死刑問題に関する講演会を知人と聴きにいってきました。仏教関係者などの主催によるものでした。

 少し前の日記に、10月末に「死刑弁護人」というドキュメンタリー映画の上映会を行う予定であると記しましたが、死刑問題の勉強とこの上映会のPRを目的にこの催しで出かけたのです

 「飯塚事件」の弁護団長である徳田靖之弁護士が「飯塚事件再審請求と死刑制度」と題して話されました。

 死刑問題に関心が深い関係者のあいだでは、よく「東の足利事件、西の飯塚事件」という言い方がされています。どちらも同じ頃に起きた女児殺害事件です。「足利事件」は19905月に栃木県足利市で起きた事件であり、「飯塚事件」は19922月に大分県飯塚市でおきた二人の女児の殺害事件です。

 どちらの事件でも犯人のDNA鑑定が問題となりました。足利事件では菅谷利和さんという人物が犯人として逮捕され最高裁で無期懲役が確定していましが、2002年に再審請求、20081月に日本テレビが科学警察研究所によるDNA鑑定に問題があると報じたことなどがあって、同年12月に東京地裁がDNAの再鑑定を決定、最新の技術による鑑定が行われることになりました。その結果、菅谷さんのDNAと犯人のDNAが一致しないことが判明、最終的に2010年3月に、宇都宮地方裁判所は、「当時のDNA鑑定に証拠能力はなく、自白も虚偽であり、菅家さんが犯人でないことは誰の目にも明らか」と判示して無罪を言い渡しました

 一方、飯塚事件の場合は、事件発生から2年7月も後になって久間三千年さんという人物が犯人として逮捕されました。彼は一貫して全面否認していましたが、2006年9月に最高裁で死刑が確定。死刑確定後も無実を訴え続け、再審請求の準備を進めていたのですが、2008年10月、死刑確定からわずか2年後に、突如として死刑を執行されてしまいました。このため、遺族が2009年10月に再審請求を申立て、現在、福岡高裁で請求を認めるか否か、審理されています。

 飯塚事件の特徴は犯人とされた久間さんが、逮捕以前の任意の取り調べから死刑執行のその日まで、終始一貫して無実を訴え続けていた事件であるということです。

 自白はまったく得られなかったために、有罪の決め手とされたのはDNA鑑定と目撃証言です。この裁判の一番の問題点は、有罪判決の根拠とされたDNA鑑定が、再審無罪となった足利事件と、同じ時期に、同一人物によって、MCT118型鑑定と言われる、同じ方法で行われたものであったということです。

 足利事件では、このMCT118型鑑定が科学的に信頼される方法で行われていないとして、証拠能力が否定され、菅谷さんと犯人の型が一致するという鑑定結果が否定されました。しかし、これとまったく同じ方法によって行われた鑑定によって飯塚事件では久間さんは犯人とされたのです。一方は再審無罪、他方は死刑を執行されてしまったのです。

 この他にもDNAの鑑定に関しては重大な問題が存在しています。その一つは足利事件の場合に行われたように再鑑定を行おうとしても、鑑定のために必要な資料(試料)が残されていないとされていることです。

 再審無罪となった足利事件や東電OL殺人事件では、再鑑定のために試料が残されていたため最新の鑑定技術による真犯人の型が特定され、再審の道が開かれ、無罪判決が導かれました。飯塚事件の場合、関係者は百回以上の分析を行うに足る資料が残っているはずだと指摘していますが、検察側は全量を分析に用いてしまったため残っていないとしています。

 このほかにも、鑑定には問題が存在しています。再審請求に際して、科学警察研究所によるDNA鑑定の証拠写真のネガを取り寄せデジタル化して分析したところ、鑑定書に添付されていた写真は、ネガの一部を切り取ったものであり、証拠写真に手が加えられていたことが明らかになっています。切り取られた部分には真犯人のものである可能性のあるバンド(型)が現れていました。

 以上に記しましたように、飯塚事件のDNA鑑定は様々な重大な問題を含んであいるのですが、山中の道路で犯人とされた久間さんの車を目撃したという証言も、一瞬、山中の曲がり角の路肩に止まっていた車を目撃しだだけにしては、

車の細かな特徴など、やけに詳細を極めており、取調官による誘導があった疑いが大きいとされています。というのは、弁護団が実際に再現実験を行って、そのような詳細な証言を行うことは無理だということを立証しているからです。すなわち同じ場所に、同じ型の車をとめておいて、目的を告げずに、二十人ばかりの方々に同じ場所を走行してもらって、どのような車を目撃したのかを述べてもらったところ、誰からも目撃証言にあるような詳細な説明を得ることはできなかったのです。

 そして、最大の問題は死刑の執行時期が不可解であるということです。先に述べたとおり、犯人とされた久間さんは、無罪を訴えて再審請求を準備中であり、法務省をそのことをよく承知していました。それにもかかわらず、判決確定からわずか2年後、死刑が執行されてしまいました。2008年10月というのは、先に記したように、足利事件について、再審開始に向けて希望の灯が灯りはじめた時期でした。久間さんによる再審請求の道を塞ぐためではなかったのかと疑われても仕方がない時期の、唐突な死刑執行であったのです。

 主任弁護人の徳田靖之氏は「もっと早く再審請求を行っておくべきだった、そうすれば死刑執行を防ぐことができたかもしれない。これは弁護団のミスでありました。このことを遺族に深く詫び、遺族の方々の許しを得て、遺族による再審請求に踏み切った」と述べておられました。

 そして最後に徳田弁護士は以下のように締めくくりの言葉を述べられました。

 「ところが、福岡地裁は、昨年3月31日に、再審請求を棄却しました。有罪判決の柱がこれ程までに崩壊したというのに、なお再審開始を認めませんでした。 おそらくは、既に死刑にしてしまったという事実の重さが、担当した裁判官らの自由な判断を奪ってしまったとのだと思います。そうです、飯塚事件が再審無罪となれば、国が無実の国民の生命を奪った、殺人を犯してしまったということを意味することになるからです。そのことに重さに裁判官らは怯んでしたったのです。」

「死刑制度の残虐性は、飯塚事件のような形で、無実の人間を国家が殺してしまうことになるという点に極まると私は思います。その意味で、飯塚事件で再審無罪を勝ち取ることは、死刑制度の廃止に向けて、大きな流れを作り出していくことになるはずです」

「飯塚事件は、支援組織もできておらず、遺族は孤立した状況で闘うことを強いられています。心ある方々のご支援を切に願うしだいです」

 なお、徳田弁護士の話によれば、当初、再審請求の審理を担当した福岡地裁の裁判官は、定年退官が迫っているため、自らの任期中に再審請求に対する判断を下すと明言していたが、とつぜん裁判官が交代し、東京から新たに着任した裁判官が再審請求棄却の決定を下した、とのことです。裁判官が交代していなければ再審開始の決定が下っていた可能性が考えられたと徳田氏は述べています。たこの再審請求棄却に関しては、日本弁護士会も厳しく批判する会長声明を出しています。

 GGIの考えますところ、裁判所は今後、何度再審請求がくりかえされても、頑なに再審開始を拒むことになるでしょう。このことは名張ぶどう酒事件で犯人とされた奥西勝さんが、ついに自由の身になることなく獄死を迫れたことからも明らかです。再審開始を認め、久間さんが無罪ということになれば、国家が無実の人物を処刑したことになり、死刑制度の根幹が崩れることになるからです。ですから、徳田弁護士らの法廷闘争は今後困難を極めることになるのは間違いありません。それでも、どんなに困難を極めても、望みがあろうが無かろうが、

徳田氏をはじめとした弁護団のみなさんは闘い続けるしか道はないのです。

 死刑事件に立ち向かう弁護士の仕事とは、何と厳しいのでありませう、

 死刑が執行された日の午前、マスコミから今日検察が何か記者会見をおこなうようだとの問い合わせがあったものの、まさか死刑執行とは思っていなかったそうです、午後になって一本の電話があり、死刑を執行したと知らせてきたのですが、徳田弁護士と組んで弁護活動を行ってきたもう一人の弁護士は、茫然自失、しばらく仕事がまったく手につかなったそうです。

 講演を終わっての帰り道、京都駅前で号外が配られていました。ニュートリノの研究者がノーベル物理学賞を受賞したというニュースでした

 GGIはいっしょにいた知人に申しました

 ニュートリノという粒子は遠く宇宙の果てから飛んできた、地球を貫通していくそうです、でも、いかにニュートリノと言いましたも、司法という国家の壁を突破することはできないでせう、それでも何とか突破しようとする弁護士の仕事はノーベル賞学者の仕事に劣ることのない貴重な意味を有するものであると思いませんか・・・

 今日の写真は講演を行う徳田靖之弁護士の姿を撮ったものです、クリックしてご覧いただければ幸いです 

グッドナイト・グッドラック!

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