『やんちゃジジイ・ゆうちゃん』のイカすセカンドライフ

我儘で『やんちゃ』な爺さんの目標は、
周りに笑顔を振りまいて、楽しくセカンドライフを生きる事。

笑えない笑い話

2017年08月03日 | Weblog

今日は所長である元同僚の車で、送ってもらい帰ってきた。
再就職先のある山梨に住民票を移して、普段は週末しか東京へ戻らないのだけれど、
明日は月次報告の会議なので、一日早く東京へ帰ってきたらしい。
毎日、山梨と八王子を往復していて、『タフだなぁ』って感心していたのだけれど、
流石の彼も、年と共に体力も衰えてきて、毎日山梨との往復は疲れると言うようになった。

そういう時は必ず、通りがかりの武蔵小金井まで車で送ってもらう。
その間に、車の中で話す事と言うと、殆どが今の事業所の運営法についての話。
事業所の連中に『仕事のしかた』をどう教えるか?が、話題の中心。

ここでおかしいと思う方もおられるでしょう。
そう、普通は『仕事』を教える。
ところがあまりにもレベルの低い、意識の低い人間には、
普通に『仕事』を教えても通用しない。
つまり『仕事の仕方』を我々が考えないとならないのです。

事務所のメンバーが居る所では、出来ない内容なので、
車で一緒に帰宅する時が唯一の作戦会議の場になる。

僕:『なんかさあ、若い頃に行った職業訓練校の事を思い出しちゃったんだよ』
所長:『おぉ、実は俺も同じ事を思ってたんだよ』
この時、初めて知ったことだけど、僕と所長は似たような経歴を持っていた。
僕:『職業訓練校の、連中に物を教えて居るみたいな気分なんだよなあ』
所長:『うん、そうだね。』

ここで職業訓練校の話。
職業訓練校と云うのは、職業安定所が仕事に就く為の技能を教える訓練校。
基本的に、授業料は無料で、僕と所長は一旦就職したあとに入校したから、
1年間の職業訓練期間は、失業保険が丸々下りる。
それで『勉強しながらお金が貰える』という事で、通ったのでした。

ところが、僕が通った自動車整備科や、所長が通った機械科の受講生の殆どが
中学校卒業、もしくは高校中退といった連中だった。
特に僕の通った自動車整備科は、ほぼ7割が暴走族や、鑑別所や少年院に居たような連中。

馬鹿にする訳じゃないけれど、こいつらは小学生並みの国語力と、
小学校低学年程度の算数しか出来ない人間ばかりだった。

僕は高専、所長は大学卒業の上に、受講したのが24歳だったので、さすがにプライドがあった。
『こいつらに、何一つ負けてはいけない』
と思って、テストは毎回ほぼ満点。
そのお蔭で、連中からはいつも尊敬され、喧嘩を売るような奴も居なかった。

それでも荒くれ共、ちょっとしたことで喧嘩になる。
顔を寄せ合って、まさに暴走族のにらみ合い。
そういう時も、僕が割って入って仲裁に入る。
でも、そうすると『先輩の顔を立てて許してやらぁ・・・』って感じで喧嘩が収まる。
何回かそんな事を繰り返すうちに、僕の前ではイザコザを起こさなくなった。

本当はね、僕が奴等と喧嘩したらボコボコにされたかも知れない。
そういう意味では、何だか不思議な礼儀をわきまえた連中でしたね。
そんな可愛い連中だったから、何とか一人でも多く国家試験に受かって欲しかった。

そういうわけで、僕の受講期間の半分は、この連中に『算数』と『理科』を
教えながらの毎日だった。
職業訓練校の先生は、合格させるための授業はしてくれません。
そういう事を望むのなら、民間の学校へ行きなさいというスタンス。
たしかにそうだなって、その時は思いましたね。

この話は長くなるのでこれ以上は割愛しますが、
とにかく『算数』の加減乗除すら判らない若い暴走族あがりの連中に、
自動車工学の基本のところの『力学』や『速度と加速度』を教えるのは、
想像以上に大変だったのです。

ところが、今はそれに近い感覚。
指紋を付けないために手袋をしろと言っているのに、
指の先に穴が開いているものを使用していて、それを僕が
『手袋、指先に穴が開いてるよね?』って言ったら、
『えぇ、この方が滑らなくていいんです』という答え。
『手袋は何のためにしてるの?』と訊けば、
『手を怪我しないようにしてます』と胸を張って、まじめな顔をして答える。
まるで、お笑いネタでもやっているような感じ。

品質保証、品質管理、作業効率なんて全く頭に無い連中。
そういう連中に『仕事の仕方』を教える。

僕:『何だか、凄く大きな壁にぶち当たった感じだよ』
所長:『そうだなあ・・・・』
僕:『いい大人だから、染みついた悪い習慣はなかなか取れない。職業訓練校の小僧たちより、厄介だよ』
所長:『そうだねえ、ははは・・・・』
僕:『ハハハ・・・・じゃねえよ!』

先が見えない断崖絶壁の下に立つ、二人。
笑えない、笑い話なのでした。 

コメント
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