悪魔の囁き

少年時代の友達と楽しかった遊び。青春時代の苦い思い出。社会人になっての挫折。現代のどん底からはいあがる波乱万丈物語です。

若葉と青葉と紅葉と・・・

2016-10-30 10:49:51 | 日記
第一話【小さな目】


また、イースト本社から第二課に飛ばされて地方に営業に出るまで、1人で食堂に入る事が出来なかった。
定食屋、ラーメンショップ、ファミレス、喫茶店など1人で入れなかった。
二人で喫茶店に入り、コーヒー1杯で粘っていると、ウエイトレスに嫌がられるのではないかと思うと、落ち着いて座っている事が出来なかった。
『もう!出ようか?』
『何!来たばかりじゃないか』
『何んか?落ち着かないんだよな』
『どうして』
『誰かに見られているようで、気が散るんだよ』
『そんなの考えすぎだよ』
『それに、狭いところで座っていると息苦しくなるんだよ』
『そうかい!俺は感じないけどな』
『お前は、鈍感なんだよ』
『お前!そんなに、神経質だったけぇ』
『そう、旅行などで旅館に泊まると、便秘になるんだよ』
『それじゃ、合宿なんかで1週間も泊まれなかったろう』
『うん!トイレに入っていて隣に人が入ると、音が気になって用を足していられないんだよ』
『そんな時はどうするの』
『仕方ないから、出るよ』
『ふん~』
『それで、考えた末、朝早く起きて誰も来ないうちにトイレに行くんだよ』
『そうすると、出るのかい』
『うん!落ち着いて出せるよ』
『男でも、そんな奴いるんだな』
『だから、人に家など遊びに行くなど嫌でなぁ』
『じゃ!女性の家など行ったことないだろう』
『そう!もし、彼氏と鉢合わせしたらとんでもないことになるんじゃないかと思うと行く気にもなれないよ』
『男がいる女は自分の家には呼ばないだろう』
『そうだといは思うけどな』
『もう少し、神経が図太くならないと営業マンは務まらないぞ』
『元々、営業出る気はないからいいけど』
『でも、うちは、販売会社だから、いやでも出なくてはならなくなるよ』
『その時は、大木主任に頼んで業務課に置いてもらうよ』
『それじゃ、万年平になるぞ』
『俺は出世なんかしようと思いっていないよ』
『お前も、夢が無いな』
『他人と争うのが嫌いなんだよ』
『平和主義かい』
『そう言う訳ではないけど、ただ、気楽に仕事がしたいだけだよ』
『年を取るたびに、責任感を持たなければならないんじゃないかなぁ』
『俺は人の上に立つタイプじゃないからな』
『でも、40歳過ぎて後輩に追い抜かれて出荷しているのも、情けないぞ』
『うん!確かに30歳過ぎると、電話取りに回されているものなぁ』
『商品知識があるから誰でもできるからな』
『俺なんか、電話が鳴ると怖くて取ることが出来ないよ』
『気が小さいな』
『そぅなんだよ。電話が鳴っただけで頭に中が真っ白になって、今まで覚えていた商品のことなど忘れてしまうんだよ』
『二階にいて電話取りから電話が来ると取っているじゃない』
『内線は大丈夫なんだよ』
『それなら、内線からだと思えばいいんだよ』
『やはり、気持ちの問題だから切り替えができないな』
『その性格から直さないとダメだな』
『治るかねぇ』
『まぁ!場を何度も踏んで行けば治るんじゃない』
『そうかなぁ』
『飲んだ時の事を考えれば何も怖いものがないだろう』
『じゃ、一杯飲んでやるかな』
『即、首だよ』
『ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \』
また、スーパーマーケットにもレジ打ちは女性だしお客も女性ばかりと想像すると入れなかった。
コンビニも入った事がなかったので弁当を売っているのも知らなかった。
それでも、場外馬券は買いに行けた。
そして、腹が減っていても昼飯抜きで仕事をしていた。

代々木オリンピックセンターに新人企業研修に4人で行った時に、昼食を食いに一人で行く事になった。
『みんな、昼飯食ったの』
『とっくに食ったよ』と都内か勤務になった、同期の小牧が言った。
『そうかよ。待っていてくれれば良かったのに』
『遅れてくるのが悪いんだよ』と車町倉庫勤務になった同期の下村が言った。
『それで、何処にレストランはあるの』
『2階にあるよ』
『じゃ、食ってくるよ』
『1時までだからな』と小牧が言った。
『わかっているよ』と言ったが、
『困ったな!?1人じゃ恥ずかしく入れないやぁ』
『しかし行くしかねぇか』
そして、階段を上がっていくと右側にレストランが在った。
すると、自動販売機で食券を買ったら食べるようになっていた。
しかし、自動販売機の使い方が分からず、買うことが出来なかった。
そして、別の食堂に行くと、壁にメニューが貼ってあった。
しかし、脳みそが小学校程度だったので、オムレツをオムライスと勘違いして注文した。
すると、注文を聞いたお姉さんが『オムレツだけでいいですか?』と聞いてきた。
『はい』と思い込んでいたので何の躊躇なく答えた。
『!?!?!』首を傾げていた。
そして、出てきたのは玉子焼きだった。
『お待ちどうさま』とホークとナイフが付いていた。
『すいません』

『なんだこれは』
『やばいな』
『困ったな』
『どうやって食うんだ』とキョロキョロと周りを見た。
『飯が食いたかったなぁ』
『今から、ライスだけ頼むのもカッコ悪いな』
『誰か知っている人、来ないかな』と出入り口を見た。
『何時だ』
『12時45分かぁ』
『後、15分』
『今から頼んでも間に合わないな』
そして、オムレツの皿にホークとナイフが当たり、擦れるガチャガチャ耳障りの鈍い音を立てて食べた。
つづく


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