若葉と青葉と紅葉と・・・

少年時代の友達と楽しかった遊び。青春時代の苦い思い出。社会人になっての挫折。現代のどん底からはいあがる波乱万丈物語です。

若葉と青葉と紅葉と・・・

2017-07-18 10:36:59 | 日記
第三話【崩れる神話】


「なんだ。またかよぉ」と発送ベルト掛け担当のテツちゃんが言った。
「昼飯がくえないじゃねぇかぁ」と嘱託梱包係の関根さん65歳が言った。
「なんで、6階の専務室で、やらねんだろぅ」と私が不満げに言った。
「あそこなら、企画室もあり食堂より広いじゃないか」と後輩の平田が言った。
「おそらく社員の出入りも多いから、聞かれたくない話もあるんじゃないか」
と松永が言った。
「それなら、本社の会議室を使えばいいのにねぇ」と嘱託梱包係の米田さん68歳が言った。
「営業本部が麻布店だから、社長たち総務関係者もこっちに来ているんだよ」
と嘱託梱包係の関根さん70歳が、知ったかぶって言った。
「そうなると、営業会議も一緒にやっているのかなぁ』とテツちゃんが言った。
「どうだろうな。課長連中は得意先周りをしているからな」
と発送責任者の三田村主任65歳が言った。
「しかし、少しは、俺たちのことを考えて欲しいよ」と平田が不満を表して言った。

「3階の倉庫で弁当を食うのもいいけど、お茶がないもんなぁ~」と私が言った。
「4階の応接室で食うか」と平田が提案した。
「ダメだよ。あそこは、何時得意先の御偉いさんが来るか分からないから入れてくれないよ」と私が言った。
「もう、弁当を取のはやめようかぁ」とテツちゃんが言った。
「しかし、外に食いに行くと高いし混んでいて時間がかかり、休憩時間がなくなるからな」
と松永が言った。
「業務課の若い連中は、玄関前の喫茶店で弁当を特別に作ってもらっているから、俺たちも頼もうか」と平田が言った。
「ダメ。あそこは、中井主任が湯川マスターに頼んで業務課10人だけの個数限定なんだよ」と私が言った。
「頼めば2~3人は食わしてもらえるんじゃない」
「どうかなぁ。他社の社員が来て頼んだけど断られたみたいよ」と私は付け足した。
「どっちにしても、昼ぐらい中断して飯でも食いに行けばいいのになぁ」
と私たち商品品出し係りや梱包発送の嘱託社員には、将来のことなど先の事は見えなかった。
何時でも食堂に出入りが出来る、70代の掃除の瀬戸ヨネおばちゃんに聞いた。
「まだ、終わりそうもない」と私が聞いた。
「何か、全員難しい顔して、タバコを吹かしているから終わりそうもないね」
「そうかぁよぉ~」
「おばちゃん。昼だから、社長たちに食事に行くように言ってよ」とテツちゃんが頼んだ。
「馬鹿なこと言っているんじゃないよ。私が怒られるよ」
「どんな話をしていた」と私は、興味津々で聞いた。
「お茶を出し直しして、灰皿を交換して出てきてしまうから、話の内容はわからないよ」
“ふぅん~”
「ただ、高輪と車町の倉庫はなくなるみたいだよ」と付け足した。
「その噂は本当だったんだなぁ」と私は酒の席で聞いたことを思い返した。
「そうすると、社員整理も始まるかもしれないな」と平田が言った。
「そう言えば、電話交換手はいなくなったねぇ」と三田村主任が言った。
「同僚の古田さんは退職して田舎に帰ったけど、行くところのない峯岸さんは、たまたま、総務課のますみちゃんが、SS業者のお客さんから、預かっていた跡取りの上山と恋愛?で寿退職したから、タイミングよく引き継いで首にならなかったけど、使い物にならない業務課のこずえちゃんは首になったもんなぁ」と私は悔しさを込めて言った。

この時期は、SS業界も下り坂だったが、食うに困るほど傾いてはいなかった。
「ますみさん。峯岸さんで大丈夫なの 」と地方課電話取りの増山が聞いた。
「総務など、現金の出し入れが合えば、別に難しい事はないから、誰でもできますよ」
「それならいいけど、電話交換手で入社したから、経理など出来ないんじゃないかと思ったよ」
「まぁ 信頼して任せてやってください」

ますみさんは、歳は25歳、身長は170cm、色白の細身でファッションモデル体型だった。
丸顔で小さく、髪は右から6:4に分けてストレートで肩まで流していた。
眉墨を細めに書き、二重瞼でまつ毛が長く上にカールしていた。
ブラウンの瞳が大きく、白目が深いブルーだった。
鼻が山なりで高く伸び、先端が上を向いていた。
鼻の下は短く、上下の唇は赤く受け口で、下唇の右下にホクロがあり、こじんまりして閉じると、真ん中に丸い隙間が出来た。
黒縁のメガネを外すと、右側にも泣きボクロが有り、吸い込まれるような艶かしい色気があった。
ただ――
残念な事に、猫背だった。
私が、電車通勤していた頃は、定期券などは、何処から何処までと申請書に、バスや電車を書けば、三ヶ月分の定期代がどんぶり勘定で貰えた。
買ってきても見せる必要がなかったので、余った金は自分の小遣いにできた。
また、歩いいて30分以上だとバス代が出たので、申請だけ出して金を貰い、定期券は買わずに歩いて駅まで行き定期代は丸々懐に入れられた。
私が、第二課に飛ばされて、営業車で通勤になった時から、定期券を買ってきてから、金を払うようになった。

運転免許と取り、前任者の若原先輩と交代で集荷担当になった。
電話取りから、麻布店に在庫のない部品の注文が来ると、集荷ノートに書き出されてあり、港区界隈の仕入れ先に取りに行たり、本社カウンターに取りに行いた。
本社から確認で電話取りと業務課に電話を入れた。
「中です。追加ありますか」
とサービスカウンターで待機していて、10時になると最初に電話取りに入れた。
「今のところないよ」と地方課電話取りの山路さんが言った。
「それなら、業務課に回してください」
「あいよ」
「欠品あった」
「今日ないよ」とストックコントロール兼出荷点検のデコ斎が言った。
「これから、一軒回ってから帰ります」と麻布店に帰った。
昼休みが終わると4階行き欠品メモ用紙をもらい集荷に出る事になっていた。
「中さん。本社に行ったら、これを、総務の真行寺さんに渡してください」
とますみさんから茶封筒を渡された。
「何が入っているんですか」
「社長のお給料ですよ」
・・・ほほほほ・・・
「へぇ~ ぜいぶん、ブ厚いですねぇ~」
「80万円入っていますから」
「ホントですか。社長ていっぱいもらえるんですね」
「そうですよ。中さんも早く社長になりなさいよ」
「俺なんか、定年退職するまで、ペイペイですよ」
「そんなことないですよ。集荷に行っても、仕事が早いから、時間道うりに戻ってくるから安心していられる。と電話取りセールスも言っていましたよ」

朝9時半に麻布店を出て、集荷をして、午前中の配達に間に合うように11時に戻ってきた。
午後便は、1時半に出て都内課の緊急品や客注を集荷して、地方課の運送便に間に合うように3時半に戻ってきた。
最終出荷に間に合い、都内課も地方課も欠品がなく納品が出来た。
「わかりました」
「落とさないでくださいねぇ~」
「はい 」と作業服の内ボケットにしまった。
午後1番で本社に行き、3階の総務課に行った。
「真行寺さん。これ、ますみさんからです」
「ご苦労様です。重かったでしょ」
「こんな大金持った事ないから、仕入先に寄らずに、一番最初に持ってきましたよ」
「仕事に関係のない事をさせて、申し訳ございません」
「いいぇ。これも大事な仕事ですよ」
「まぁ 」
――ほほほほ――
「また、預かったら直ぐに持ってきます」
「よろしくお願いします」
ちなみに、3年努めた私の月給は税込2万9千円だった。

大島こずえちゃんは、一身上の都合で退職した藤川さんの後釜に太田課長が洒落で入社させた事務員だった。
歳は16歳、中卒で太田課長の知り合いの娘さんだった。
身長は150cm、細身で額が狭く髪はショートカットで小さな耳を出していた。
顔は逆三角形で眉毛が太く、一重瞼で細長い目をしていた。
鼻が三角形で小さく、鼻の下が長かった。
ほっぺたが赤く、赤い上唇が薄く、下唇が厚く受け口だった。

「うちのこずえ、太田さんところで雇ってもらえませんか」
「こずえちゃんは いくつだったけ」
「去年中学を卒業して16歳ですね」
・・・ふうん~・・・
「電卓で計算は出来るよね」
「大丈夫ですよ」
「それなら 峯岸さんとも知り合いだから、明日から一緒に来て」
「ありがとうございます」
入社すると、業務課の仕入れ伝票の日計を計算していた。
精神年齢は小学校6年生程度だったので、落ち着きがなく、根気がないために、計算間違えが多く、中井主任がやり直していた。
「まいったなぁ~」
「そのうち出来るようになるよ」
「一時間もじっとしていないからな」
「しょうがねぇ娘だなぁ~」
・・・ニャハハハハハハ!!!!・・・
「中井 長い目で見てやって」
「はい 」

3階の倉庫で、各メーカーへの発注書を書いていた。
仕入れ計算業務に飽きた、こずえちゃんが入ってきた。
「何しに来たんだよ」
「計算しているのは飽きちゃった」
「それが、こずえちゃんの仕事だろ」
「うぅん だけど、一人で事務所にいると寂しんだもん」
「しょうがないだろ。皆、品出ししているんだから」
「私も、品出ししたい」
「出荷係りになると2階から3階に籠を担いで行くんだぞ」
「みんながやっている事だからできますよ」
「女性が籠を担いているところを見られたら、恥ずかしいだろ」
「別に、恥ずかしくないですよ」
「そうすると、仕入れ伝票を計算する人がいなくなるだろう」
「誰か、別の人雇ってくれないかなぁ~」
「それは、無理だよ。そんなことしたら、こずえちゃんが“クビ”になるよ」
「えぇ~ 私、辞めたくない」
「そしてら、我慢してやりなよ」
「ブゥ~・・・」
「課長。朝はいたけど、どこに行った」
「わからない」
「最近、出かけることが多くなったな」
「うん この前、品川倉庫に行くようなこと言っていた」
「あれっ 品川倉庫はあったかなぁ~」
「知らない 」
「こずえちゃん。何をやってんだよ」と大島くんが出荷伝票を持って入ってきた。
「休憩しているの」
「こんなところでオフィースラブしているんじゃないだろうな」
「倉庫じゃ、オフィースラブと言うより、バックヤードラブだよ」
「棚の上に二日酔いで気分が悪い時の為に寝床が作ってあるから、何時でも出来るよ」
「いやラシィ~」
「何がよ。いいじゃねぇか」
「こずえちゃんだって、嫌いじゃないだろう」
・・・ニャハハハハハハ!!!!・・・

「今持っている伝票で品出しするんでしょ」
「そうだよ」
「私も品出ししたいなぁ」
「商品が分からないのに無理だろう」
「教えてくれれば、大丈夫だよ」
「大島くん。都内課の伝票だろう」
「そうですね」
「午前便は締め切ったから、試しに伝票を持たせて教えてやりなよ」
「それも面白いですね。こずえちゃん。3階の分だけね」
「うん いいよ」
遊びで品出しさせた。
「スケベェ~」
――!?!――
「どうしたんだよ」
「だって、大島さん。お尻触るんだもん」
「何を言ってんだよ。高い所にある商品は、棚の上に乗らないと取れないから、後ろから支えてやったんじゃねぇ」
「でも、お尻触ることないじゃない」
「落ちて怪我をしたらかわいそうだから押さえていたんだよ」
「こずえちゃん。事務所でおとなしく計算しているのはしていた方がいいよ」
「そうする」
「今度また教えてあげるね」
「バカ<――」
「あんな、小娘のケツ触ったって面白くないだろう」
「小ぢんまりとして“プリット”したお尻が可愛いですよ」
「お前 課長に“チク”られたら怒られるぞ」
「あれで、結構喜んでいるから大丈夫ですよ」
「好きだなぁ~」
「この前、矢島なんか、こずえちゃんに抱きついていたよ」
「しょうがねぇなぁ~ たっく。たまには吉原に行って抜いてこいよ」
「一緒に行きますか」
「当たり前じゃねぇ」
「それに あんな小娘性の対象になるなか」
「ならないけど まだ、子供だから出来るんですよ』
「それもそうだけどなぁ」
「可愛いだけでどうにかしょうなんて考えていませんから」
「それで、ゴルフコンペの予約取れたんだって」
「中井主任が手配して、千葉県市原のパブリックコースにしたようですよ」
「それなら、少し、練習しておくかなぁ」
「みんなんで、玉川の土手の打ち放しに行くような事を言っていましたよ」

「今度の日曜日だからだから、少し練習しておくか」
「太田課長も来ますよね」
「行くよ。ゴルフ倶楽部があるから、中、お前俺の家まで迎えに来い」
「えぇ~ 春日部まで行くの」
「当たり前だよ」
「遠過ぎますよ。朝、何時に起きるんですか」
「お前の家は江戸川区だろ」
「そうですけど」
「新中川から江戸川の土手を登ってくれば早いよ」
――なるほどぉ. ――
「別に本番じゃないから早く来ることもないさ」
「そうですね」
「とりあえず、麻布店に10時に集合しよう」
「それなら、十分に間に合うよな」
「ついでに、こずえちゃんも連れて行くから、途中で拾って行くからなぁ」
業務課と電話取りの若手10人で玉川の土手に行った。
3~4カゴ打ち込んだが、自己流なので上達はしなかった。
太田課長は運動神経がよく、初めてでもドライバーショットを250ヤードは軽く超えていた。
「ナイスショット <<<――」
座り込み下からボールが真っ直ぐ飛んで行くのを確認していた。
「課長。飛ばしますねぇ~」
「少し練習して“コツ”がわかれば、こんなもん簡単だよ」
「俺なんか、手袋していても、クラブが回転してしまって、ボールが上手く当たらないんですよ」
「それは、グリップの握りからが悪いんだよ」
「そうですか 」
「クラブを握ってみな」
「こうですか」
「それじゃ、ダメだよ」
「どこが悪いんですか」
「手のひらで握らず、指で握るんだよ」
「ここですか 」
「そう 鉄棒だって竹刀だって指で握るから、しっかりと持てることができるんだよ」
「本当だ。手のひらで握るより、掴む握力が違いますね」
「そうだろう。猿だって指に引掛けて木から木に移動するから落ないんだよ」
打ってみると確かに、グリップは回らなくなった。
「こずえちゃんも打ってみる」
「うん。やりたい」
「男物のドライバーだと長すぎて重いし、佐々木小次郎になってしまうから、5番アイアンで打ってみな」
10個ぐらい打つと前に転がるようになった。
「上手くなって来たじゃない」
「でも、このクラブ重たい」
「8番アイアンに変えるか」
慣れてきたかなと思い安心して見ていたが、疲れたのか?
「ナイスショット」
と言いたかったが、ボールはゴムのティーの上に残っていて、クラブが飛んでいった。
「あぁ~ 」
「オッ~ なんてこと――」
・・・ニャハハハハハハ!!!!・・・
「すいません。ストップ。ストップ。ストップ」
と他の客の打つのを止めて、クラブを拾いに行った。
「ありがとございました」
しかし、恥ずかしかった。
「こずえちゃん。少し休憩しな」
「手が痛くなって離しちゃった。ごめんなさい」
「疲れてくると握力がなくなって、すっぽ抜けるのはよくあるよな」
とゴルフ好きのサーちゃんが言った。
「俺なんか、ショートホールでボールを打つたら、クラブも一緒に投げたもんなぁ」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \
仕事はダメだったが、性格が明るくて、笑顔の可愛い子だったので、業務課のマスコット的存在だった。
太田課長が連れてきた子なので責任を持って、地元のラーメン屋に雇ってもらう事になった。
それから三年後、結婚して子供が出来たと噂で聞いた。
「でも、よかったよなぁ~」
「それに、営業マンや電話取りも出来の悪い奴は、第二課に飛ばされているからな」
「安泰なのは、業務課だけか」
「太田課長の底力だよ」
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小説
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