若葉と青葉と紅葉と・・・

少年時代の友達と楽しかった遊び。青春時代の苦い思い出。社会人になっての挫折。現代のどん底からはいあがる波乱万丈物語です。

若葉と青葉と紅葉と・・・

2017-05-15 10:30:59 | 日記
第二話【桜のない校門】


ダービーも無事終わり、馬券を外したので、この年の優勝馬は忘れた。
6月半ばから梅雨の季節に入った。
今は中央扱いで福島競馬場にて開催しているが、この頃は中山開催だった。
前日夜の天気予報だと明日は雨が降らないと言っていた。
『時期的に寒くも無く暑くも無く、長袖シャツ一枚で体も動き易く土曜日なら空いているので久しぶりに中山競馬場に行って見るか』
とかぁちゃん弁当を作ってもらい勝負をしに行く事にした。
AM8時に家を出て、いつもの通り東西線葛西から西船橋駅で降り中山競馬場行きの京成バスに乗った。
『今日こそ大穴を当てるぞ』と勇み武者震いして場内に入った。
朝1番で着いたので、予想試しに1レースから初めた。
新馬戦では、メジロエスパーダーやスピリットスワップスなどが他馬を引き離し4コーナーを曲がり始めた頃には直線の坂を駆け上りぶっちぎって勝った。
新馬戦で大差勝ちすると強く見え、次のレースから人気になるが殆どが、仕上がり早のマイラーだった。

何時もの結果だが2R・3Rと買ったが、1レースもかすりもしなかった。
ここでどうしても当たり癖を付けなくてはいけないと思い、午前中最後の4レースの障害に、今日の運を賭けてみた。
“ガッチガッチ”の1番人気は牡馬ゴールドシャトゥーだった。
1番人気は連勝複式には絡む可能性が高いが、単勝と成ると2番人気の方が信頼性としては確立が高かった。
石橋を叩いて渡る心算で確実に的中する馬券を買うことにした。
電光板のオズを見ると締切10分前は1・4倍の配当金で140円だったが、ゴールドシャトゥーの複勝馬券を特券1枚買った。
何時もの指定席ゴール手前50メートルの所で柵にもたれて観る事にした。
ファンファーレが響き渡り各馬は厩務員に誘導されて奇数番から順に偶数番とゲートインして行った。
完了の合図旗と共に“ガッシャ”とゲートが開き一斉に飛び出した。
今まで晴れていたのにスタート前から青空が暗く成って来た。
『あれぇ~ なんだぁ~』
見上げると雨雲が競馬場を覆い被るように重く垂れ込んで来た。
スタートと同時に今日は降らない予想だった雨が急に落ちて来た。
『何だよ。降らない予想だったのに――』
とちょっとムカ付きながらレースには何の不安も無く観ていた。
時間と共にレースが進み残り上がり3ハロン600メートル~4コーナーに差し掛かった。
直線に向くと先頭は2番人気の馬で、大差で先頭を走り2番手の馬が後を追っていた。
3番手はゴールドシャトゥーで後ろの馬に大きく溝を開けて4コーナーを曲がってきた。
落馬さえしなければ3着は確実だった。
『とりあえず 馬券が取れ当たり癖を付けられるなぁ』と安心して観ていた。
直線を向き坂の手前頃から空が一段と暗くなり雨が本降りに成り激しくなった。
ゴールドシャトゥーが尻パネをしながら走っているのに気が付いた。
『あれ どうしたのだろう 何かおかしいなぁ~』と首をかしげて観ていた。
坂を上り始めた頃から左に斜行し出し、私の観ている方に向かってきた。
それでも、何か得体の知れない魔物に引きずられるように、何度も尻パネをしながら、私の立って観ている方に走って来た。
騎手も手綱を握り締め振り落されないように、ゴールドシャトゥーにしがみ付いている形に見えた。
『此のバカの目の前で騎手を振り落とせ』
とゴールドシャトゥーは尻パネをしながら耳元で悪魔に囁きを聴いたのかも知れない。
それでも、私は不安はなかった。
『これで馬券は取れる』と安心して立って観ていた。
『これでもか』と騎手の手綱さばきを無視してグングン私の方に向かって斜行して来た。
昔、シンザンの有馬記念の時と同じくラチすれすれまで来て走っていた。
私は馬を見据え顔を右から左へと動かして行った。
『こんな近い特等席で観られて得したな』
と興奮しながらレースで馬の足音や息使いを、聞きなだら思って観ていた。
“アット 驚く”思いもしていなかった事件が起きた。
私の目の前に来て、柵から2メートルも離れてない位置で、逆立ちするように最後の尻パネをした。
二本の後ろ足を高く上げた時に、落ちまいと必死にしがみ付いていた騎手は見事に鞍と一緒に崩れ落ちるようにゴールドシャトゥーから落ちて行った。
『こんな事が有るのか 』と其の瞬間、私は目の前が真っ暗に成った。
開いた口が塞がらない間々、雨に打たれながら唖然としていた。
『マヌケ バカヤロー 何やっんだ 金返せ タコヤロー ふたけんなぁ~』
と腹の中で叫んでいたが、落馬した騎手に罵声を浴びせる事も無く呆然としていた。
雨は激しくなり土砂降りの中、顔面蒼白となり眩暈が来るのを抑えて、ぼんやりと立っていた。
落馬した騎手が悔しそうな顔をして鞍と鞭を拾い、歩いて行く後ろ姿を複雑な思いで見送った。
夢なら覚めて欲しいところだが現実は無情なものだった。
此処まで勝負の女神の見放されるとは思わなかった。
此の先何処まで地獄に突き落とされるのかと博才の無さを思い知らされ落ち込むばかりだった。
私は一生に一度見られるか見られないか解らない、不思議な出来事を勝負運に見離された此の目でしっかりと体験させてもらった。
その後、障害レースだけは二度と買う事はなかった。
我に返り気が付くと1段と雨足が強く成って、頭から足の先までずぶ濡れになった。
午後からのメンイーンレースを買う金は幾ら残っているか財布の中身を確認していた。
“ザーザー”降りの中、前日の天気予報では雨は降らない事だったので、傘を持って来ていなかった。
余りにも無情なレースのショックで気が抜けてしまいベンチに座り込んだ。
競馬場の屋内に移動して雨宿りする気もなく食欲も無くなっていた。
落ち込みながら朝、かぁちゃんに作って貰った弁当を食べ始めた。
二度と立て直せない程のショックで気持ちが暗くなり虚しさが込み上げて来た。
良く“砂を噛”とは、こう言う事かと思いながら何を食べて居るのか解からず、とても喉に通す事は出来なかった。
『この雨が降らなければなぁ~』と1人運の無さを嘆いていた。 

午後に成り5レースがスタートする頃から黒雲は東の空に流れて行き、雨も上がり薄雲から日が射して来た。
『これで南の空に虹でも出れば最高なんだけれどもなぁ~』と感傷に浸りつつあった。
『晴れて来た。これで濡れた服が乾けば流れが良い方に変わり、運も出て来るかもしれないな』と弱り切った心を立て直した。
5レース・6レース・7レース・8レース・9レース・10レースの準メインレースまで買い続けた。
『それ いけぇ~』
直線50メートル手前で力が入る事も無く惨敗に終わった。
メインの11レースの時間に成りパドックに出走馬が出て来た。
テレビに映るように電光掲示板の下、右端の角一番前に立って見ていた。
前の日から、どの馬に注目するかは検討して置いた。
本番は出来具合を確認するだけだった。
『牝馬の1番人気は来ない』と言うのが私の持論だった。
パドックを観ながら1番人気の5歳牝馬ニシノシラサギの状態の良し悪しを、目玉を拡大させて穴の開くほど頭からシッホまで舐め回すように視ていた。
何周目かで突然ボロを出した。
『よし。これで絶対来ない――』と確信した。
1番人気の牝馬ニシノシラサギを外した馬券を買った。
予想通り1番人気の牝馬ニシノシラサギが直線で坂下から馬群に沈んでいった。
配当金が8400円を付けた大穴を的中させる事が出来た。
『ヤッターァ~ ザマー見やがれぇ』と最後に大逆転して心の中で叫んだ。
『此れで今晩は景気よく上手い酒が飲める』と気合が入ると急に腹が減り出した。
忘れていた食べ残しの冷え切った弁当を美味しく食べる事が出来た。
勝っても負けてもお決まりコースの螻蛄街道を、心“ウキウキ”スキップをしたく成る程弾む脚で家に帰った。 

記憶に中に、日本最長距離で前半の2000メートルは歩いていて残りの2000メートルから走り出すと言う、飽き飽きするレースがあった。
決着が10分以上掛かる面白くも何とも無い4000メートルのレースでホワイトホンテンが逃げ切った事を思い出した。
流石に距離が長すぎて不評の為に、今は無くなった。
土曜日の勢いを保ったまま、明日も勝負をする事にした。
『昨日の分の金がるし』と余裕で日曜日は大穴を狙う事にした。
日経賞はホワイトホンテンの逃げ切りを予想した。
錦糸町場外に行きホワイトホンテンから連勝複式を総流しで買った。
2時半からテレビ中継が始まった。
『先ず、来ないだろうなぁ~』とゴロリと横に成り気楽にレースを観ている事にした。
ゲートが開きスタートすると予想通り4枠から飛び出したホワイトホンテンが逃げた。
残り3ハロンから流れが速くなり4コーナーを回っても先頭に立って逃がまくっていた。
『そろそろ捕まるなぁ~』と直線を向くと思っていた。
『あれぇ』
坂を駆け上っても先頭で粘っていた。
私もビックリして横に成って観ていたが跳ね起きた。
『其のまま 其のまま 行け 行け』と思はず大声を出した。
拳を握り締め本気で応援していた。
1着でゴールを通過して、綺麗に逃げ切った。
2着は出遅れた8枠のフジノパーシャーがッ込んで来て万馬券になった。
昨日は、あれだけ落ち込んで“ガックリ”していた博才の無い私が一発当てただけで“ガラリ”と流れが変わった。
『賭け事と言うのは勝ち負けどっちにしても運次第で一転してしまうものだなぁ』
と不思議に思った。
次の年の、ダイヤモンドステークスで直線の叩き合いでホワイトホンテンが真ん中で右にウォープレス・左にフジノパーシァー三頭の優勝争いになった。
中ホワイトホンテンが三番手から抜け出そうとするところを、外フジノパーシァーと内ウォープレスの左右のムチが飛んできて顔を“ビタビタビタビタ”叩き付けた。
ホワイトホンテンは怯まず、下がりもせず最後まで抜け出そうと頑張っていた。
一着はフジノパーシァー二着にウォープレスで三着に粘るホワイトホンテンのド根性は、
“名馬ここにあり”だった。
………………………………………………
つづく
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小説
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