若葉と青葉と紅葉と・・・

少年時代の友達と楽しかった遊び。青春時代の苦い思い出。社会人になっての挫折。現代のどん底からはいあがる波乱万丈物語です。

若葉と青葉と紅葉と

2016-10-14 10:27:48 | 日記
第一話【小さな目】


私が小学校3年に成る頃には、高度成長と共に新中川も、農薬や工場などの汚染水の垂れ流しだった。
今まで泳ぐ事に出来た程、透き通っていた川は青黒く濃い緑に変わり護岸には、コケが生えてプランクトンの死骸が付着して赤くなっていた。
水深が0mに近く成り、手を入れても肘まで入る殆ど見えにくくなるほど汚れてしまった。
家の前の護岸で釣りをしていても、四谷怪談のお岩さんみたいな小さなお化けダボハゼしか釣れなく成った。
『自分で好きで成った訳でも無いし、自分達で川を汚して訳でも無いのに、こんな醜い姿に成り果ててしまって可哀そうに』と鼻の奥がツンとして目頭が熱くなった。
川向いに有る妙見島の工場にハマグリの貝殻が山積みになっていた。
潮の匂いや魚の生臭い中、殻を取りに行って肉厚の貝殻を拾ってきた。

紙芝居屋がハマグリの貝殻に赤い食べ物を入れて販売していた。
舐めていると、唇から口の中かまで真っ赤にしていた。
『キン坊口が真っ赤じゃん』
『マツ坊だって同じだよ』
『ニャハハハハハハ!!!!』
今は、甘かったか?苦かったか?味は忘れた。
ガキどもと新堀川の堤防にまたいで座り叩きあって貝割をした。
そして、勝って持っていくと紙芝居オヤジから景品をもらえた。
ズルをして拾ってきた貝殻で勝負をして勝った。
『おじさん!勝ったよ。景品ちょうだい』
『どれ見せてみなぁ』
『はい!!』
『ぼうず!この貝殻どこから買ってきた?』
『おじさんのところからだよ』と嘘を付いた。
『そんなことないだろう。俺のところから水飴は買ったけど、貝アメは買わなかったじゃないか』
『トシ坊が買った貝殻をもらったんだよ』
『嘘つくな!大きさが違うじゃないか』
また、オヤジが持って来る貝殻と肉厚が違うので直ぐにバレてしまった。
残った貝殻を拾ってきた貝殻と貝割をして遊んでいた。

工場の直径ドラム缶程の大きさの排水溝から、お潜水が朝昼晩休みなく24時間吹き出していた。
その周りには白い泡を山盛りにして川に浮かべていた。
その為に、カッパ達も二度と泳ぐ事が出来なくなった。
また、繋がれている網船の隙間に隠れて泳いでいた。
しかし、巡回して来た水上警察に強制的に上がらされてしまった。
そして、この川を我物顔で悪戯をしながら自由に遊び泳ぎ回っていた、カッパたちもいつの日か消えてしまった。

新川口橋から50m程なだらかに下った坂下に、私の生まれて育った4,5畳と6畳の二間の平屋の借家があった。
裏庭には便所の横に夏みかんの大木が家に接して植えてあった。
其処の木を登り屋根に上がって遊んでいた。
平屋でも、周りの家も平屋だったので見渡しは良かった。
私が生まれた頃から植えられていた、夏みかんの木は、50年経った今も、平屋と共に残っていた。
新堀川は護岸も桟橋も蓋をされてカッパたちの存在を否定していた。
昭和の、長閑かな自然の遊びを覚えた証拠までも封印して消してしまった。
今は公園と成り、時代が変わった事を教えてくれた。
高層ビルに壁を作られてしい、バス通り橋の上から見えた東京タワーも消えてしまった。
そして、橋の上に立った時に、川の中から『砂船が来たぞ』と微かに空耳が聞こえて来た様な気がした。
『この下には掘り起こす事の出来ない、俺の思い出が沢山詰まった、お宝が隠されて居るのだな・・・』
そして、二度と現れないカッパ達に別れを告げた。
つづく
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