透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

カフェ・シュトラッセで「M8」を読み終えた。

2008-09-14 | A あれこれ


 カフェ・シュトラッセで『M8』高嶋哲夫/集英社文庫 読了。帰る頃にはすっかり暗くなっていた。ここの夜景は初めてだが田舎の小さな分教場のような雰囲気がなかなかいい。

さて『M8』。東京が直下型大地震によって死者2万人近く、負傷者15万5千人、全壊家屋4万3千棟、消失家屋36万棟という大災害を被る。

この手の小説には災害の全貌を描写すると共に被災した市民一人ひとりを描写することが求められる。ズームアウトとズームイン、司馬遼太郎の鳥の眼で見るような俯瞰的な捉え方と藤沢周平の虫の眼で見るような捉え方の使い分けが必要なのだ。

両者のバランスが適当か、また2つの眼それぞれから未曾有の大災害が過不足なく描かれているか、という面では少し減点されるかもしれないが、一気読みさせるだけの力を備えた小説だった。

主な登場人物は4人だが、全員が阪神・淡路大震災で被災し、家族を亡くしている。内3人は高校の同級生で現在は地震予知を研究しているポストドクター、議員秘書、自衛官になっている。あとひとりは当時大学教授だった地震学者。この4人の職業からおぼろげながらこの小説のイメージが浮かんでくるのではないか。

ところで小松左京の『日本沈没』は国土を沈没させてしまうことで日本とは何か、日本人とは何かを読者に問うというものだったが、この『M8』で高嶋哲夫は技術者らしくあらゆる自然災害に関する総合的な防災研究の必要性を訴えたかったのかもしれない。

**この東京直下型地震で、来るか来ないか分からない地震に予算を使うことに否定的だった議員も目が覚めたでしょう。必死に今までの言動の言い訳をしている。無駄な高速道路やダム建設に数百、数千億円を注ぎ込むより、よほど生きたお金の使い道。(後略)**とやはり阪神・淡路大震災で被災した国会議員に発言させている。

「備えあれば憂いなし」とは言うけれど・・・。

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