お釈迦様でも治せません(旧八月の月戦記)

いつの間にやら、音楽制作機器紹介や制作方法ばかりみたいな感じ…

過去ログにはヘーベルハウスの建築記を書いてます。

音楽の世界でも記録媒体は年々安くなっているのです。vol.2

2010年11月15日 12時12分48秒 | MUSIC

あ~なんかすっかり自分の音楽遍歴になってやがる…
格好悪いから書かなかったんだけどなあ…

何せ、楽器はあまり弾けないのに人前でPIANO弾いてみたりしてて、格好付けてたからなあ…

えっと…前回記録媒体の事とかで終わるつもりだったのに、何でかシンセの話になったんで。
今回は話を戻して…

その後YAMAHAからDX-7というシンセサイザーが出現…書いたそばからシンセ出す奴…

記憶媒体っすよね…記憶媒体

オープンリールのマルチトラックテープレコーダーの22-4は結構長く使いました。


↑これね…
東京に居た時もこれに頑張ってもらって創った楽曲をデモテープにしてレコード会社各社に置きに行きました。
ほぼ100%守衛さんに渡せるだけで、コレって意味無かったです。
郵便で送ったほうがよっぽど良かったんじゃないかなと今にしてみれば思います。

ここで「マルチトラックレコーダーってなあに?」な人へ

この一般に言う録音テープというのは
金属酸化物などの磁性体を塗布し、更に磁性体の向きを揃える磁気処理を行った媒体(ウィキコピペ)です…

成分はプラスチックです。
経年変化を起こし表層コーティングが剥がれたりします、なので長い時間を経ると記録した信号が消滅したりします。
磁石などの強い磁性体を近付けても記録が消去されてしまいます。

ま、そんな事はどうでもいい事ですが。

音声のレコーダーってのは大抵ステレオですよね。
コレは2つの場所にレフトとライトを別々に記録しているということです。
記録する場所の事をトラックと言います。
レフトとかライトとかの再生時に使う記録部をチャンネルと言います。
カセットテープなどは、表裏で使用しますよね? ですからステレオ再生にはレフトとライトで2つチャンネルが必要になります。
と言う事は記録する場所(トラック)も2つ必要だけど、両面使用するので。
2(レフト&ライト)×2(両面)で、合計4トラック必要になるのです。

ですからカセットテープは4トラックテープで2チャンネル使用
これを略して、4トラ2チャンと呼称するという事になるのです。
勿論これに限った事ではありません、テープ幅を一杯に使った2トラ2チャンってのもあります。
これはまた別用途での話。

このトラックを同じ方向で全て使用し、同時に録音信号と再生信号をモニターできる様にしたものがマルチトラックレコーダーです。
カセットでいえば、4トラック(4つの音)を別々に録音再生出来る様になります。
先ずは一つのトラックに録音。
そして今度は録音済みのトラックの音を聴きながら、それに合わせて次のトラックに録音する。
という風に進行していくのがマルチトラックレコーダーの使い方<多重録音>というやつです。
図とかに描くと判り易いのですがメンドイので。



ちょっと作りましたけど…
うっかりしてましたけど多分コレはカセットテープの概念ではないです。
オープンリールテープのトラック配置概念だった気がします…何となく…
クロストーク(隣接チャンネルの音漏れ)を嫌ってチャンネルの隣接幅をあけてあったんだったと思います…
カセットはLRが隣り合わせていた筈です…ヘッドを小さく作るために…何となく…

概念、理論って理解するの難しいよね…興味の無い事に普通は首突っ込まないもんね…
コレが基本として、テープの幅を広くして行き、同じトラック幅を持たせたとして。
1/8インチのテープで4トラックならば1/4インチテープで8トラック。
1/2インチテープならば16トラックという風に倍倍に…
ただコレは概念なので、実際はトラック幅に持たせる領域が様々ですから「この幅のテープにはこのトラック数」という決まりは無いです。

実機での比較だと判り易いです。
22-4
144
この2機は方や1/4オープンリールテープの22-4、今一方はカセットテープ(え~っと1/8インチ?)の144なのですが。
どちらも4トラック4チャンネルレコーダーなのです。
テープ幅は相手の倍または1/2…見るからにオープンテープ大きいよね。

スピードもカセットは通常ならば毎秒4.76cm(144は倍速の9.5cmだった)
オープンの22-4は毎秒38cmの速度で、スイッチ切り替えで19cmがあったと思いました。
AKAIのGX-4400Dは確かキャプスタンに直径の太いキャプスタンパイプをねじ込んで19cmにした気がします。
通常4トラ2チャンのオープンは9.5cmがデフォルトです。

すげ~よね…モーターの回転数変えずにギア比変えて出力側の回転数変える様なもんだもんね…減速装置か…
つか…確か19cmしか使わなかった気がする…

つまりこの幅と速度の違いは記録密度に現れてきます。
記録する面積が大きくなればなる程、情報量の拡大、高密度での記録が可能になるということです。
簡単に言えば<音が良い>ですね。

マルチトラックレコーダーに関しては、MTRというキーワードでググッて下さい。
識者達が基本以上の情報を書き続けてくれてます。

話を戻して…この22-4には大きな欠点がありました。
廉価版の悲しさで、オーバーダビング(録音してある音を聴きながらリアルタイム演奏を録音する)時の再生音は周波数特性が極端に落ちてしまうのだそうです。
コレはTEACの技術の方から直接伺いました…
当時自分が使ってたノイズリダクションシステムのdbx222二台が使えなかったので聞いてみたんです。

この上の機種の33-4という物ならそれは出来ると聞き、ガッカリしたのを覚えてます。

↑こいつがそうです…33-4…別にこいつには嫉妬を感じなかった…何故ならこの時点では8トラックに気持ちは行ってたから…

どうして問題なのかというと、ミキサーを介して再生音とリアルタイムでの演奏をミックスしたものを録音すれば、理論的に無限の回数が録音できるのです。
この時の再生音が周波数特性の落ちた再生音であるが為に、ノイズリダクションを介してエンコードされた信号を正確に再生できないので全く使えないいびつな音になってしまうのです。
このノイズリダクションシステムについての解説を始めると長くなるので止めときますが。

と言いつつ簡単に説明すると…
圧縮して記録(エンコード)した音を伸長(デコード)させて再生させる。
すると、この工程を踏む事でテープなどが元々持っているサーノイズが消えるというものです。
Dolbyシステムも似たような物です。
コレの大原則として、エンコードした信号が正確に再生されなければならない、という物があるのです。
それが出来ないが故に、音が変化して聴けない音になってしまうという事なのです。

もう一台マスター用に買ってあったdbx224はカセットデッキに接続して使ったりしてました(コレは本当にスゲ~物だったんですよ)。

ノイズが無くなるだけじゃなく、ダイナミックレンジもカセットテープの域を超えるレベルに変えてくれました。
カセットテープデッキのダイナミックレンジっていうと、確か60db~70db辺りだったと思いました。
高級機のナカミチ辺りでその位が精一杯だったと記憶してますが…本当かなあ…
これがdbxを介して録音そして再生すると90db~100db辺りまで伸びたと思いました。
ダイナミックレンジというのは、最小音から最大音までの領域の事です。
この数値が大きければ大きいほど歪みは少なくなるという事です。 数字上は。

しかし、このdbxというのは記録するソースのレンジ自体が低くなるために。
テープに記録する際に負担を掛けなかったので凄まじく良い音に変化してましたよ…

MTR22-4は、ノイズの多い状態での使用だとしても、やはり多重録音が出来るという事には変わりなく、嬉しいものでした。


この頃の自分は東京都下の某オーディオショップに勤めていました。
偶然に音楽の街だった事も幸いして、自分は多重録音コーナーを任されました。
なので毎日毎日居残りで勉強の日々になりました。
所詮素人だったので、本物を売るからには当時の知識を詰め込まなくてはならなかったのです。

実はそのオーディオショップはコンピュータも売っていました。
勿論その当時の話ですから、パソコンと言えばNEC PC8800シリーズが主流です。
当時のアップルコンピュータ(まだMacintoshではない)はパソヲタの憧れの存在で、高値の花過ぎて話になりませんでした。

毎晩1時とか2時とかになって、終電が無くなったりする事もしばしば。
何をしていたかって言えば…

一生懸命スペースインベーダーのプログラムを打ち込んでいました…
何度も何度も間違えては最初からの組み直し…
エンターしてランした時は嬉しかったと言うよりも…疲れ果ててました…
それを8インチのフロッピーに記録して次の日にロードしようとしたら壊れてた…あはは、良い思い出です。

録音機材のディスプレーでメインに使っていたのは、当時もの凄く注目を浴びた33-8でした。

この写真、ヘッド周りの構造もよく判るようになってますね。
ヘッドは左から<消去ヘッド><録音再生ヘッド><再生ヘッド>です。
真ん中のヘッドがこいつの肝なのです。 コレがあるからオーバーダビングが出来る。
このヘッドと再生ヘッドは同一の再生スペックを持ってます…ですからこいつはノイズリダクションが使える。
オプションで8チャンネルdbxユニットが出ていたはずです。

コレの前身?にあたるのが80-8ですが価格は掛け離れてました。


本体のみで800,000円、dbxノイズリダクションユニットが200,000円…合計1,000,000円
音は聴いたことが無いけど…良かったんだろうなあ…
テープは1/2インチ(ハーフインチと呼称してました)
33-8もハーフインチテープでしたね、ランニングコストが半端無い事になるのは目に見えてますよね。
価格は580,000円、まあ、安くはなったと言っても高かったねえ…
dbxユニットは4チャンネル仕様を2台接続して使ってました、幾らだったのかちょっと判りません。

てな風にMTR等の記録媒体はとっても高価だったのですよ。
(ふう…やっとタイトルに遵ずる内容じゃないか)
んで、多重録音のコーナーなので、記録媒体だけじゃ話にならない。記録した音声を最終的に一つの音源として、レフトチャンネル+ライトチャンネル=STEREOにまとめなければならないのですよ。

これを<トラックダウン>とか<ミックスダウン>と言うのですが。
それを作るためには<ミキシングコンソール>という物が必要になるんですね。
通称<ミキサー>という物です。

ディスプレーに使用するために選択したのは、デッキの3と同じ型番シリーズのM-308

これは33-8と同時期に出た廉価版のシリーズ(安か無いけどさ…)値段が判りません、高い事は確かなのさ…

仕様とか詳しいスペックのlogが見当たらないので省きます。
とにかくこれを使ってトラックダウンを行います。

この時に前回書きまくったディレイとかリバーブとかの残響音とか音質加工してSTEREO音源を作ります。

このミキシングコンソールのアサインマップとかを穴が空くほど見て、読み、理解しないと信号の処理の仕方が判りません。
配線にも関わる事ですし、ノイズとかの対策やら何やら…「オレ電気屋さん?」的な知識まで身に付けなきゃいけませんでした。
インピーダンスに関しては本当に大変ですよね…単に抵抗値を覚えたって組み合わせの仕方も判らない。
これじゃ、マイク、ギター、ラインの音量コントロールも出来ないとか…色々ありました。
イコライザーの形式も基本2種類ありますグラフィックと、パラメトリック。
そんな知識など、始めた当初はありはしないし、覚える必要性が出てくるとは考えもしませんでした。

その時に初めて気付きました。
「あ~…だからレコーディングエンジニアと言うのか」と…

余談ですけど(余談ばっかりだけど)
あたしには尊敬するエンジニアさんが居ます。
勿論、会った事などありません…でもこの方の創る音は30年前の時代には世界一だと思ってましたし、現在もそうであろうと思います。
<吉田保>という方です。

当時はソニーの偉い方だった筈です。
ソニーですからスタジオは<SONY信濃町STUDIO><SONY六本木STUDIO>がメインの活動拠点だった筈です。
社員さんですから、ハウスエンジニアという形ではなかったと思うのですが。

この方はミュージシャン<吉田美奈子>の実のお兄さんです。
吉田美奈子といえば「夢で逢えたら」(作曲、大瀧詠一)という曲が有名です。
あたしはこの吉田美奈子って日本の<ケイト・ブッシュ>だと思っています。

その吉田保さんが手がけた人ってのはもの凄い数の人々なので、つまんでみます。
<山下達郎><大瀧詠一>等、名だたるミュージシャンのエンジニアを勤めています。
日本のミュージックシーンの影の立役者だと思ってます。
この方の創る音は本当に素晴らしいです…何処がどうって言う事さえおこがましい…あたしには世界一のエンジニアさんです。
ただ…あたしに悪影響を及ぼしたのもこの方に違いありません。
あたしのリバーブ好きはこの方の影響ですから。

特徴があるんです…この方のリバーブには。
量もそうですが、そのプリディレイタイムの長さとリバーブタイムの長さは恐らく世界一だと思います。
専門的に書くと、一次反射音であるプリディレイのタイムは、吉田さんは普通に133m.secを使ってると思います。
実はあたしも133ないしは113です。
そしてこれが最も特徴的なのですが、リバーブタイムです。
普通、デジタルリバーブのHALLプリセットなんかでは2.4秒位になっていると思います。
でも、吉田さんは短くて3秒…普通に5秒位のリバーブタイムなのです。
これにプリディレイが加わるので、もっと長く発音している筈です。

今のレコーディング界では、エコーというのは空間シミュレーターで表現される事が多く。
実反射音(人間がその空間で感じ、認識できている残響)のシミュレートしか使っていないと思います。
ですから、録音物は一見(一聴?)ノンエコーに聴こえる物ばかりになってます。
何故か機械のセンシングした数値と人の耳に入って認識している実音には違いが出てしまうのです。
数値では出ている筈なのに、実際に音にすると聴こえていないというのがほとんどなのだそうです。

今の録音物は原音のハッキリしたものが取りざたされてますけど、逆に無個性化していると思います。

吉田さんのエコーは本当に奥深い残響音で、いつまでたっても消えないって印象なのですが。
全く五月蝿くない・・・もの凄く気持ち良い空間を創ってくれるのです。
なかなか減衰していかない残響音にもかかわらず原音がハッキリと前に出てくる。
これは実はもの凄い事なのです…もう魔法です。
何といっても芯の太いベース、ドラム…綺麗な響きの鍵盤楽器…うっとりするストリングス…弦楽器。
以外にハッキリとパンポットさせる定位定義、位相のしっかりとした基本的な音。
この人の手がけた音楽は本当に「ブラボー」です。
解り易くは言えないけれど、耳触りの良い優れた音なのです。


デジタル機器の普及に伴い、否が応でも平均化してきたレコーディング環境とリスニング環境。
その中でいつまでも太陽の様に素晴らしい音楽を聴かせてくれている素晴らしいエンジニアさんの話でした。


あれ?…ま、まあいいや…
んじゃまた。


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