【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

個人事業者が寄附をした場合(必要経費か?)

2012-01-10 17:00:00 | 所得税の確定申告
昨年は東日本大震災の件で寄附をされた方が多いことから、寄附金の確定申告における処理に関しての質問をよく受けます。その中で、個人事業者の方から「寄附金を必要経費で処理できるのか?」という質問があります。

必要経費とは、事業における収入を得るために直接必要な売上原価・販売費管理費・その他費用のことですので、寄附金は必要経費には含まれません。寄附金は事業とは無関連の人に善意でするからです。寄附金には見返りを求めないのです(寄附金は必要経費のように事業における収入を得ることを目的としていないのです)。

●寄附金控除という所得控除として扱われます

国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合には、所得控除ができます。所得控除とは、計算された各種所得からさらに一定額を差し引けるというもので、基礎控除、扶養控除、配偶者控除、医療費控除などが要件を満たす全ての納税者に(所得の種類に関わりなく)認められます。

義援金等を支出した場合には、その義援金等が国や地方公共団体に対する寄附金、財務大臣が指定するものなど一定のものであるときは、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象とすることができます。

●寄附金控除の控除額の計算方法(震災関連寄附金があるとして)

「特定寄附金+震災関連寄附金」の合計額【注】-2千円= 寄附金控除額

【注】その年の総所得金額等の80%相当額が限度です。「総所得金額等」とは、純損失、雑損失、その他各種損失の繰越控除後の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る配当所得の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額及び退職所得金額の合計額をいいます。

●寄附金控除の適用を受けるための手続

寄附金控除を受けるためには、寄附金控除に関する事項を記載した確定申告書に寄附した団体などから交付を受けた領収書などを添付するか、確定申告書を提出する際に提示する必要があります。確定申告書に寄附をしたことを書くとともに、寄附をした証拠を見せなければならないのです。

善意でしたことなのに面倒な手続が必要で、なんとも融通が利かないですね・・・

●特定震災指定寄附金特別控除額

震災関連寄附金の内の特定震災指定寄附金は、上記の寄附金控除に替えて(納税者の選択により)、下記の額を所得税額から控除することが(税額控除)できます。

(特定震災指定寄附金の合計額-2千円)×40%

特定震災指定寄附金の合計額は、総所得金額等の80%相当額が限度です(特定震災指定寄附金以外に寄附金がない場合)。特定震災指定寄附金特別控除額は、所得税の25%相当額が限度です。

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★すでに必要経費として処理している場合(まだ申告書は提出していないとして)

次の仕訳で取り消してください(雑費で処理しているとします)。

≪借方≫事業主貸≪貸方≫雑費

事業と無関連の出費ですので事業主貸勘定で処理しておく必要があります。

★寄附を受付けた相手が領収書を発行してくれない

「特定寄附金」でない可能性があります・・・

★「特定寄附金」「震災関連寄附金」「特定震災指定寄附金」とは?

国税庁のサイトをご覧ください。

「特定寄附金」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1150.htm

「震災関連寄附金」「特定震災指定寄附金」
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/gienkin/toriatsukai.htm