街角一代日記

『Machikado』walking

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

ニュースペーパー・タクシーズ

2017-03-06 19:13:08 | 日々の事柄
やみくもに動き回った数日後は、読んでいない朝刊・夕刊がたまります。

今でこそそれはスマートフォンに配信される形にしてあるので、かさばりもしないのだけど、学生時代はそれこそニュースペーパー、たる、紙の新聞を配達してもらっていました。

朝刊が投函される瞬間を初めて間近に見たときのスリルは、今でも忘れられない。

その日は丑三つ時をすぎても起きていた。
たしか、玄関に続く狭い台所で、ベーコンの切れ端と野菜をしこたま入れ、最後に冷凍のスイートコーンを散らす、当時のオリジナル料理『星空スープ☆』を作っていたのだと思う。


まず、アパートの前にバイクが止まる音が聞こえた。
最初はそれが新聞の配達とはわからず、ただ警戒して、反射的にドアに駆け寄り、覗き穴を覗いたんでした。

砂を削るような鋭い足音を立てながら猛然と走ってくる足音がして、まさかの展開に心臓は高鳴る。
恐怖でいっぱいになりながらも離れられない覗き穴の下に現れたのは、苦しげに息を弾ませたリーゼントの男でした。

ドアを挟んで向かい合う、リーゼントの配達員と己。それはほんの刹那であり、
私の腹部の高さにあいた郵便受けに新聞をぶちこみ、リーゼントは走り去って行った。

しばらくは新聞による打撲のダメージでその場に立ち尽くしていたが、後にも先にもあのようなスリルはなかなか無かったと思う。

その日から、寝ている間にあの荒々しい足音を何度か聞くことはあったものの、起き上がって覗き穴をのぞきに行くことは二度とありませんでした。

それは、また盗み見るようなことをするのはその人に悪いような気がしたから、というのもあるし
なにより、焼き付いているので、もうわざわざ見に行く必要はなかったからです。

魚眼レンズの向こうに見た、息を切らせたあの顔は、目鼻立ち整ったものではなかったけども
ロックバンドが渾身のバラッドを唄うさなかに魅せるような、そんな必死さがあって、心を運ばれていってしまった気がする。
それはつまり、確実にある種の『色気』だったんだと思います。


いそがしい人が身の回りにたくさん居る。
いそがしい日々は身体の両脇を流れていく。
誰かの働いているところを見てみたいと思うのは、そこにある、ある種のそういうものを見てみたいからなのかもしれません。


ジャンル:
ウェブログ
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 肝心なのはストーリー | トップ | 彩の国へ »