鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

秋草図鐔 宗典

2010-02-12 | 
秋草図鐔 宗典

 

①② 秋草図鐔 銘 江州彦根住藻柄子宗典製

 
③秋草図鐔 無銘美濃

 江戸時代中頃、美濃様式の装剣小道具を製作したことで良く知られている一人が、近江国彦根住藻柄子宗典(そうてん)である。その作例二点Photo①、Photo②を紹介する。形は竪丸形と木瓜形だが、いずれも地を鋤き下げて魚子を打ち施し、秋草の文様を編み目のように密に組み合わせて高彫し、金の色絵を華麗に施している。深彫様式は受け継いでいるが文様の彫り際の立ち上がりに古美濃のような鋭さがなく、金の色絵の端縁部もすっきりとせず、それぞれの花が連続している。
 Photo③に江戸時代初期の美濃と極められた鐔を併せて紹介する。文様部分の肉の高さが宗典に比して低く、文様構成も濃密な感はないが、美濃の様式は良く伝えており、肉が低い割りに彫り際がくっきりとし、色絵の際も鮮明であるところが少々時代の上がる要素とされているのであろう。
 藻柄子宗典はこの種の鐔を製作しているだけでなく、和漢の歴史人物や伝説などに登場する人物を題に得、鉄地を肉彫象嵌地透(にくぼりぞうがんじすかし)とし、殊に合戦図などの例では屏風に描かれた合戦絵のように雲などで画面を分けた各場面を巧みに連携させ、奥行き、立体感、時間的な要素などを超越した迫力ある作品を生み出している。その構成の一つでもある背景を透かして図柄を鮮明に際立たせる手法は、確かに古典的な美濃の要素を採り入れていると言えよう。

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