問答無用の日常生活

日本語は悪態をつく言葉のほうが褒める言葉より豊かなのです。だったら大いに悪態つこうじゃありませんか。※一応「詩」です。

2008-02-17 11:40:48 | Weblog
風呂に入っても
床屋に行っても
最近、どうも髪を洗うのがこわいのです
水を流すたび流れ落ちる髪の本数 数えては
ため息が思わずこぼれてしまう きょうこのごろ
ノイローゼ気味なのでしょうか
夢にまで見るのです
犬に毛を齧りとられて
てっぺんだけ妙に寒くなったり する夢
あわてて目覚めて
頭をなで回して
やれやれと安堵する毎日
さっきも櫛に6、7本
シャンプー流すとき口の中に入ったりするのが
またイヤで
くるべきときにはごっそりいちどきに
いってしまうのだろうか
それともちまちまじわじわと薄くなっていくのだろうか
などと考えると、さてどうしたものか
あれこれとあてどなく思いはめぐりめぐって
養毛剤でマッサージ、これはかかせません
カツラも大いに考えられるが、いかんせん
タイミングがきわめてむずかしい
つるつるのあとフサフサでは
いかにもバツがわるい
兆候があらわれはじめたら
いっそ我が手で我が髪にけりをつけて
ぶちぶちと引っこ抜いてから
素早くカツラに転身したら、
などと半ば自暴自棄的に思いめぐらすのも
われながらおぞましく
かといってロマンスグレーで
ひとりでシブがっているのも、なんか好きじゃない
(禿げるよりはいいけど)
と考えたあげく、退路を絶たれ
要は気の持ち方しだい、と居直るほかない
禿げる禿げると恐れるその気持ちが
気持ちをこわばらせ頭皮の緊張を生み
ほんとうに禿げさせる
要はこれ
〈禿げてもけっこう、
 いやもう一歩すすんで禿げてもらおう〉この精神
これでもなおかつ禿げた日には
それは誰の責任でもない これが運命
ひとそれぞれよ、と割り切って
あきらめるより致し方ない
でも、そうは言っても
実際そうなったら
やっぱ、淋しいだろうなあ
の堂々めぐり



※24歳のときに出した第一詩集のなかに入っている詩。幸いながら、20年経ったいまでもどうにかこの感じをまだ保ちながら読むことができております。

海底の生活

2008-02-16 21:13:21 | Weblog
部長はキンメダイだ!
課長はタツノオトシゴだ!
ワカメOLやウミウシ新入社員なんてのもいるぞ
おっと忘れちゃならない、オニカサゴ社長もおりますな
要するにわれわれは海の中にいるのだ
海の生き物のような顔してるくせして
風に流され
波にもてあそばれ
あっぷあっぷあっぷっぷー
シャレになりませんですね
誰か助けてクレー、なんて叫んでみたところで
海は甘くはないのだ
誰も振り向いてはくれないのだ
波の瀬の瀬に揺られて揺れて
太陽の光がやけにまぶしいぜ、ありゃりゃ
タコ専務の自慢の額の照りかえしだぜい
エチゼンクラゲさんはえらい大繁殖だといいますな、
景気がいいっこてすな、うらやましい!
おおおおお、なんでこんなところに
キハダマグロの大群なんてのが、わざわざくるんですか、
何を考えてるんですか
あなたがたの活動テリトリーは
もっと南の海じゃなかったんですか?
それをわざわざこんなところまで進出してきちゃってさ
こちとら商売あがったりではないか!
くいぶちがますます減るではないか!
世の中まちがっとる! すべてがまちがっとる!
地球温暖化だ! 環境破壊だ!
一触即発だ! サルノコシカケだ!
最近の海水の塩辛いこと
塩化ナトリウムが濃すぎますね
これもいわゆるひとつの地球温暖化現象ですね
おおお、シュモクザメ常務が向こうから
のしのしやってきた、最近やせましたね
いいもの食ってないね、ありゃあ
アオノリとかイソギンチャクなんてものにまで
手を出してるんじゃないですか? 生きてくためには
やむを得ない選択をされたということでしょうけども
落ちるところまで落ちたね
そこまで落ちたかないね
なんて、言ってる余裕すら、実はすでにないのであります
いっそ、深海にでも行きますか
いやいやこれがなかなかどうして
深海だって、楽な世界じゃない
太陽が届きませんね
あたりは真っ暗だ、まるでホラー映画だ
水温だって寒いしさ
水圧だって厳しいし
まあ、どこへ行っても大変だっていうことですね
おおお、チョウチンアンコウ次長がいるぞ
下唇が、絶妙な感じで受けてる
リュウグウノツカイなんていう、ケバケバ派手派手な
男だか女だかわけのわからないやっちゃがおるんですが
あ、社長の奥様ですか
これはえらい、すんません
リュウグウノツカイさん、
えらくきれいなウェストラインをしてらっしゃいますな
ユーリファリンクスペレカノイデスなんていう、
この世のものとは思えないようなやからだっておりますぞ
あらら、社長の息子さんですか
あのわけのわからなさぶりは
フォローのしようがない
とにかく、にぎやか このうえない
しょせん、われわれは海の中
おおお、シラスの大群だ
それ行けやれ行け絶対に
死んでも離すな、意地でも食らいつけ
根性だ、気合だ、アイアイサーだ!
それが男の 生きる道
それがわれわれの生き残る道だ
いくぞいくぞいくぞー!
やるぞやるぞやるぞー!
いざー、突撃ー!


※ウイーン幻想派の画家アリク・ブラウアーの画を観たとき、この世のすべてが海底世界のものとして曼荼羅のようにして描かれていて、ものすごく衝撃を受けたのを思い出します。詩でも書いてみたいなと思って、なんとか一編、ものにしてみました。

決戦の最終電車

2005-09-06 16:37:53 | Weblog
今夜も結局は飲みすぎた頭をフラつかせながら
人人人で埋め尽くされた階段を敗残兵よろしく昇りきってみるならば
そこにはなんとまた、プラットフォームにあふれんばかりの人、人、人が
ぎっしり並んでる 老いも若きも男も女も
終電間近の土曜日のJR渋谷駅のこのアナーキーな喧騒をみよ
ガヤガヤガヤガヤ、ガヤガヤガヤガヤ
これはもう賑やかというよりはお祭りのさなかとでもいうべきもので
そろそろ秋口だというのにやけに蒸し暑いぞ熱気でムンムンだぞ
まだまだ人が昇ってくるぞ次々改札を抜けてくるぞ
おお、向こうの一群では万歳三唱が始まりよった景気がいいではないか
おお、気がつきゃあっちでもこっちでもべたべたいちゃいちゃ男と女が
抱き合ったりキスしたりパンツが見えそうなやつまでいるではないか
うーむ公衆の面前でかくも大胆な もっとやんなさい
おお、柱のたもとでは盛大に吐いているやからがおるぞ、女の子ではないですかしかもあれは
いやいやまったくもって見事な吐きっぷり、近くの女性が「大丈夫?」とかなんとか言いながら背中をさすっているぞ、あらま髪の毛に汚物が飛び散ってあわてて逃げてった
友情もとどのつまりは汚物には勝てんのだ
実際のところがオレにしてからが少々飲みすぎていて
足元フラフラ覚束ないとはいうものの
公衆の面前でああも激しく吐ける女というのはあれはもはやひたすらあっぱれというしかないのではなかろうか
駅員さん、ほんとにご苦労さん
あれら吐き散らされた汚物をきれいにしてるんですよ、毎日毎日
ほんとうに心の底から感謝の意をここに述べたいのであります
なに、最終電車に人身事故が発生だと?
当駅への到着が大幅に遅れる見込みだと?
ええい、よりによって最終電車に飛び込むアホウはどこのどいつじゃ成敗してくれるは
どよめく大衆、怒りの叫び声、嗚咽に悲鳴
バカだのアホだのタコだのマヌケだの
トンマだのすっとこどっこいだのおかちめんこだの
あらん限りの罵声があちらこちらと飛び交っているわけであります
しかし、最終電車が実際のところ早く来てくれんことには
ネットカフェかカプセルホテルかサウナか漫画喫茶にしけこむしかなくなるわけで
そいつだけは勘弁してもらいてぇところだぜ
顔を真っ赤にしながら駅員に食ってかかる若いやつらにおっさんたち
まさに一触即発の緊迫した空気があたりを包み込んでおります
あちらでは化粧を直している女もいるぞ、ありゃりゃ
さっき盛大に吐いていた女ではないか
立ち直り早いな でも案外美人だよ、あーしてみると
あの吐きっぷりのわずか数分後にいとも涼しい顔をしてああして化粧を直してるのだから
やはり大物というしかないですね、あれは
われわれ小物にはとてもかないそうにないぞ
いやいや、世の中、結局、大物が勝つようにできているのだ
小物はそのあとをくっついていくしかないのだ
あんた惚れましたか、あの女に 滅相もない 何をおっしゃいますか
酒で酔った頭がぐるぐる回転している
なんだか思考回路までおかしくなってきたようだ
おっ、電車が思いのほか早く運転再開だ
いやはやよかった、よくぞやってくれた
褒美をつかわす といって出てくるのはポケットの中から丸めたレシートくずばかり
まぁこうしたもんです、えらいすんません、酔って気ィばっかりでかくなっております
ほらほらきみたち電車がくるぞ、危ないですから黄色い線の内側に下がってお待ち下さい
どひゃどひゃ、すでに乗車率500パーセント、寿司詰めぎゅーぎゅー詰めの満員御礼だ
あれに乗れってのかい、いくらなんでもちーと、そいつはねぇんでねぇかい
無駄口たたいてねぇで、さっさと乗らんかい! 
ちくしょうこんちくしょう、乗るっきゃないとなれば乗るっきゃないだろう
つまりはこの怒涛の群衆のなかにあって勝つしかないということだろう
さあさあ少しでも前に出ていたほうが勝ちだすでに戦闘状態開始だ
押さないでください降りる方を先に降ろしてあげてください
そんな悠長なことを言ってられっか! 勝つか負けるか勝負は瞬間で決まる
扉が開く、降りまーすとか言っているやつらも中にどんどん押し込んでしまう
こうなりゃ暴力団顔負けだね
足音歓声悲鳴嗚咽
自動洗濯機のなかにねじ込まれる下着のように
はさみ込まれねじ込まれ押し込まれたたみ込まれ
うっ、おっさん、鼻先で酒くせぇ息を吐きつけてくれるなよ
うっ、おばさん、バッグの角をオレの背中にこれでもかとねじつけてきやがって
そこまでこすい手をつかって他人を妨害するんですか
ええい、そのような妨害工作にめげるような私ではないのであーる!
なんとか中に入れそうだ、さっさと扉を閉めてくれ
外にはうごめくゾンビたちがいるぞ、死んでも外へはね飛ばされるもんか
ぎりぎりのぎりぎりで 扉がしまります ぎぇー、尻がはさまれた
いてぇのなんのって
でも前向いてなくてよかった、もっと大事なところがはさまれるところだった
電車が動き出す 外ではゾンビたち うらめしそう
さよならゾンビたち、君たちのことは一生忘れないよ
どうか明日の朝まで 無事にすごしてくれたまえ
ネットカフェかカプセルホテルかサウナか漫画喫茶か
選択はよりどりみどり だから東京は好きだよね
そうだろ、ゾンビの諸君たち



※アナーキーな状況を、酔っ払っている語り手がさらにふらふらした意識の中で見ている、というところがミソ。

ポエトリー党結党宣言

2005-09-06 16:34:57 | Weblog
本日、ここにお集まりの皆さん
足元のおわるいなか、ご参集くださいまして誠にありがとうございます
皆さん、皆さんはいま、幸せですか
毎日の生活に追われ、時間に追われ
やりたいと思うことの半分もやれずに
会社からは、成績をもっと上げろと尻をたたかれ
家に帰れば、女房子供にもっと家庭を顧みなさいと取り締まられ
女性であるならば、なんだか頼りなさげな恋人や伴侶になかば絶望し
できのわるい男に振り回されているくらいならば
いっそわが手で自らのキャリアを形成し
独り立ちしていったほうがよっぽど気持ちの上で楽だと
そう、お考えになっているのではありませんか
いったい、いつから、いまのような日本になってしまったのかと
皆さんはお考えになったことはありませんか
私が思いますに、一九八〇年代の初頭
にっかつロマンポルノ映画の世界に彗星のように現れました
美保純ちゃんという女優が、かくもあっけらかんと明るい性格をもって
そのあられもない肢体をスクリーンにさらしたときに事は端を発するのであります
彼女の登場以来
世の男性も女性も、それまでの性にまつわる呪縛や束縛から解放され
自由にその表現をしてよいのだと覚醒を促され、こんにちに至っているわけであります
かくして、女優・美保純の遺した偉大な成果と足跡を継承しながらも
こんにち、それがために男性と女性の意識の溝がますます深まりつつある事態を憂慮し
その改善のための具体的な実践活動の場を早急に形成することの必要性を深く意識し
ここに、政権選択政党ポエトリー党の結党を宣言し
男性と女性のあり得べき将来像を見据えた社会づくりを
わが党の焦眉かつ喫緊なる課題として真摯に受け止めながら
皆さんとともに歩んでまいりたいと考える次第であります
皆様の積極的なご参画とご助言を心よりお待ち申し上げながら、ここに
ポエトリー党発足の挨拶と変えさせていただきます

       二〇〇五年九月五日
               ポエトリー党初代党首  toshi-shun


※小泉さんが前代未聞の「郵政民営化」衆院解散をやってのけたときの演説の雰囲気を、ちょっくら私なりに再現してみたくなりましたもので。

問答無用の日常生活

2005-09-06 16:33:42 | Weblog
窓を開けても 光はみえない
線路は続くよ どこまで行っても
オレたちいったい どこ行く、これから
リストラつづきで 社員は激減
そのぶん仕事は ふえてくいっぽう
残業つづきだ からだがもたねぇ
居酒屋スナック ついついふらふら
ビールに焼酎 日本酒もいい
しみじみ飲んでりゃ しみじみしてくる
一本二本が 気がつきゃ四、五本
そうなりゃ気持ちも 大きくなって
できないことなど ないよな気がする
あーだこーだと わめいて騒いで
昔のはなしが やたらと出てくる
周囲もへきえき あいすみません
若いときから このよなありさま
結局ちっとも 成長してねぇ
これからどこいく 日本は世界は
それよりおまえは いったいどこいく
まずは終電 目指して駅へ
走るつもりが 足がのびねぇ
おなかもずいぶん 出てんでないの?
運動不足に 体力不足
ほんとにやばいよ あんたの生活
大きなお世話だ アッチョンブリケだ
わかっちゃいるのに やめられないのが
問答無用の 日常生活



※この詩をメインタイトルとした連作詩集を、のんびりと書き溜めています。

勤徒出陣

2005-09-05 16:41:37 | Weblog
このわずか二車線もない狭い狭い道をわれらは行く
自転車チャリチャリ調子は上々おっ原チャリだリヤカーだ歩行者だ歩行者
集団登校ランドセルがたがた子供たちそんなに広がって道を塞いでくれないでちょーだい
背後から車だクラクションブーブカ鳴らしよるムカつくぜ非常にムカつくぜ
前から四駆のローバーだニヤつく運転手の銀歯がキラリと光るぜ
どうしてこんなに狭い狭い道にかくも豊かな利用者たちがいっせいに
この凍てつく朝のこの瞬間にあたかも申し合わせたかのように集まるのだ
ハンドル握る手かじかむぜ鋭角サドルに食い込む痔疾の尻がキリリと痛むぜ
うっ、ついに出よったバスだバスああよりによって後ろから前から挟み撃ち
ほらほらつかえて動けない車も自転車も原チャリも不満がたまって鬱積状態
この一分一秒を争う朝のあまりにも大切すぎる時間帯にこれらバスどもが
どうしてどうしてこんな狭い道ですれ違おうなんて大それた考えを抱くのか
横ちょをするり薄笑み浮かべ通り抜けてく歩行者めいまに見ていろ待っていろ
ようやく開通だおらおらさっきの薄笑み野郎はどこにいるあいつだあいつ
ザマをみろまだまだ甘いな未熟だなおとといおいでのアッチョンブリケ
わが自慢のファッションサイクルよ行けよ目指すは駅前自転車置き場
おっ、このやろうオレを抜いてくなんていい根性してやがるおっさんだぞしかも
そんなに気張って漕ぐなよ脳天薄いぜ力みすぎだぜ明らかに
ああばぁさん乳母車押して前方ヨタヨタ非常に邪魔なんだなこれが
そこ行く学生服覇気がないぞ眼差し虚ろだやる気はあるか幸せか
ほうほうこの寒空に太腿開陳OLサイクラー抜くのが惜しいな誠に惜しまれる
いたいたさっきの力みのおっさんペース落ちてるなもはや射程距離圏内だ覚悟しなさい
うっ、オレのこと意識してんのかいきなりペース上げよった大人げないやっちゃ
こんちくしょうめこっちだって負けていられるかパワー全開120%
ほうほうよさそうなコート着込んじゃって内股で歩いてるぞ兄ちゃん
さぁさぁあれだ目的地自転車置き場の親父たちきょうも不景気なツラしてやがる
今朝はオレも思わず気合い入ってどうやらいつもより三分は早そうだ
おっ、今日も来てるな地方議員白い手袋にマイク握って
熱意は買うが、たぶん選挙じゃ投票はしないと思うよあしからず
さてさて何せ三分の余裕だ階段上る足取りもかろやかにミントガムだって買ってやるぞ
今日は木曜日か明日いきゃ休みかたまったDVDだって久々にみてやるぞ
さぁ気合い込めていざ出陣だドヒャ今日の電車はまた一段と混んでやがる



※4/26のポエトリー・リーディングで読む予定が時間切れで読めず、9/5に再度メニューに載せました。