風呂に入っても
床屋に行っても
最近、どうも髪を洗うのがこわいのです
水を流すたび流れ落ちる髪の本数 数えては
ため息が思わずこぼれてしまう きょうこのごろ
ノイローゼ気味なのでしょうか
夢にまで見るのです
犬に毛を齧りとられて
てっぺんだけ妙に寒くなったり する夢
あわてて目覚めて
頭をなで回して
やれやれと安堵する毎日
さっきも櫛に6、7本
シャンプー流すとき口の中に入ったりするのが
またイヤで
くるべきときにはごっそりいちどきに
いってしまうのだろうか
それともちまちまじわじわと薄くなっていくのだろうか
などと考えると、さてどうしたものか
あれこれとあてどなく思いはめぐりめぐって
養毛剤でマッサージ、これはかかせません
カツラも大いに考えられるが、いかんせん
タイミングがきわめてむずかしい
つるつるのあとフサフサでは
いかにもバツがわるい
兆候があらわれはじめたら
いっそ我が手で我が髪にけりをつけて
ぶちぶちと引っこ抜いてから
素早くカツラに転身したら、
などと半ば自暴自棄的に思いめぐらすのも
われながらおぞましく
かといってロマンスグレーで
ひとりでシブがっているのも、なんか好きじゃない
(禿げるよりはいいけど)
と考えたあげく、退路を絶たれ
要は気の持ち方しだい、と居直るほかない
禿げる禿げると恐れるその気持ちが
気持ちをこわばらせ頭皮の緊張を生み
ほんとうに禿げさせる
要はこれ
〈禿げてもけっこう、
いやもう一歩すすんで禿げてもらおう〉この精神
これでもなおかつ禿げた日には
それは誰の責任でもない これが運命
ひとそれぞれよ、と割り切って
あきらめるより致し方ない
でも、そうは言っても
実際そうなったら
やっぱ、淋しいだろうなあ
の堂々めぐり
※24歳のときに出した第一詩集のなかに入っている詩。幸いながら、20年経ったいまでもどうにかこの感じをまだ保ちながら読むことができております。
床屋に行っても
最近、どうも髪を洗うのがこわいのです
水を流すたび流れ落ちる髪の本数 数えては
ため息が思わずこぼれてしまう きょうこのごろ
ノイローゼ気味なのでしょうか
夢にまで見るのです
犬に毛を齧りとられて
てっぺんだけ妙に寒くなったり する夢
あわてて目覚めて
頭をなで回して
やれやれと安堵する毎日
さっきも櫛に6、7本
シャンプー流すとき口の中に入ったりするのが
またイヤで
くるべきときにはごっそりいちどきに
いってしまうのだろうか
それともちまちまじわじわと薄くなっていくのだろうか
などと考えると、さてどうしたものか
あれこれとあてどなく思いはめぐりめぐって
養毛剤でマッサージ、これはかかせません
カツラも大いに考えられるが、いかんせん
タイミングがきわめてむずかしい
つるつるのあとフサフサでは
いかにもバツがわるい
兆候があらわれはじめたら
いっそ我が手で我が髪にけりをつけて
ぶちぶちと引っこ抜いてから
素早くカツラに転身したら、
などと半ば自暴自棄的に思いめぐらすのも
われながらおぞましく
かといってロマンスグレーで
ひとりでシブがっているのも、なんか好きじゃない
(禿げるよりはいいけど)
と考えたあげく、退路を絶たれ
要は気の持ち方しだい、と居直るほかない
禿げる禿げると恐れるその気持ちが
気持ちをこわばらせ頭皮の緊張を生み
ほんとうに禿げさせる
要はこれ
〈禿げてもけっこう、
いやもう一歩すすんで禿げてもらおう〉この精神
これでもなおかつ禿げた日には
それは誰の責任でもない これが運命
ひとそれぞれよ、と割り切って
あきらめるより致し方ない
でも、そうは言っても
実際そうなったら
やっぱ、淋しいだろうなあ
の堂々めぐり
※24歳のときに出した第一詩集のなかに入っている詩。幸いながら、20年経ったいまでもどうにかこの感じをまだ保ちながら読むことができております。