秋の花といえばワレモコウという印象もあるが、このワレモコウを見ることは稀になった。花というよりは実のようにも見える。このあたりでは9月に咲き始めるが、花期は長い。印象としては野にもっと咲いていたように思うのだが、田んぼの土手や人家の近くではめっきり見なくなった。山に入ると、まだまだ見ることはあるが、山も日のあたらないような山が増えてしまい、なかなか生育環境が少ないのかもしれない。
まっすぐ伸びた細い茎の先に、坊主頭のような花の穂を咲かせる。ワレモコウには、われもまた紅い、との意味での「吾亦紅」、あるいは、わが国の木香の意味で「吾木香」、 小花の形が割れ目を入れた木瓜の模様に似ているから「割木瓜」など、さまざまな漢字があてられている。
「吾も亦(また) 紅(くれない)なりと ひそやかに」と詠んだ高浜虚子。この字がわたしには最も当てはまっていると思うが、実は姿を見ていると「紅の稲穂」という印象がある。稲穂といっても稲の穂ではなく、小正月の飾りとして供えられる稲穂である。豊年を祈念して歳神棚などへ飾るもので、餅を稲穂に見せて竹に刺したりする。地方によっては紅の餅を混ぜて紅白に見せたりする。その餅を使った花に似ているのである。我が家では餅花と言っていた。同じようなものに、やはり小正月の繭玉飾りもある。すらっと伸びた茎にいくつもの餅がついているようで、親近感がある。ダンゴバナなんていう呼ばれ方もするというから、わたしのような見方をする人もいるのだろう。
妻の実家の裏庭では9月の頭のころからこのワレモコウが咲いている。このワレモコウは数年前に人からいただいたもので、数年たってだいぶ増えてきた。いろいろ在来の種がたくさん残っている実家の周辺ではあるが、このワレモコウの姿は見ない。
さて、写真のワレモコウは、我が家から2キロほど中央アルプス側へ入った山の中にあるため池で撮影したものである。別ブログで「サワギキョウ」を紹介したため池と同じため池である。池の周りには釣り人のゴミがけっこう目立つのだが、貴重な植物がたくさん生育していて、加えて山の奥にあるということで雰囲気が違う。きがかりなのは、そんな釣り人が行き来するような場所にそんな貴重な植物が生育していることである。
撮影 2006.10.7
見せていただいてありがとうございました。
あまり出歩かないから無理かも知れませんが。前から撮りたかったのです。
毎日みせていただいております。今後も宜しく。
私は飯田の鼎です。