Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

木曽の谷から見る木曽駒ケ岳

2007-04-15 01:29:08 | つぶやき


 「仏滅なのにお見舞いに行っていいの」という会話をしながら、「お見舞いは前にしているから、今日は顔を見にいくだけ」ということで豊科まで家族で少し遠出である。珍しい話ではないが、わが家にとって家族で遠出は2年ぶりくらいになる。豊科じゃあ遠出のうちにも入らないが、わが家ではこのところ家族で外出することが本当になかった。せいぜい妻の実家まで行く程度で行動範囲は狭かった。息子が中学の部活で忙しかったり、卒業までの数ヶ月は体の不調でそんな余裕すらなかった。ということで遠出とはいえ、たかが1時間もかからない豊科まで高速を走った。伊那ICの近くは、高速道路の路肩の法面に桜の木がたくさん植えてある。高遠の口元であるということでそのイメージに添った演出なんだろうが、高遠と同じくらいの咲き具合で高遠の桜の状態をうかがうにはちょうどよい目安になっている。昔なら伊那ICで渋滞になっていたが、この日はそんな様子もなかった。ETCの導入で渋滞が解消されているのか、それともたまたまなのかは解らない。豊科ICでゲートをくぐっても、ふだんの平日ならETCレーンの通行車両が8割くらいになったこのごろだが、この日はETCレーンに入る車が2割程度で、まったく逆の状態だった。

 さて、珍しい外出ということで、お見舞いの後に木曽谷を通過して帰ってきた。伊那谷に住む人間にとっては、木曽の谷を南北に通過することは滅多にあることではない。たまたま権兵衛トンネルが開通して木曽の谷も身近にはなったが、縦走というケースはない。塩尻市奈良井から旧山口村まで走ったが、わたしにはそれほど感じなかったものの、妻たちは「木曽谷が長い」と何度も口にした。確かにそこそこのスピードで走っているのに、なかなか木曽の谷は抜けない。国道19号は、信号機が少なく、大型車がスピードを出すことから木曽高速などと言われる。70キロから80キロほどスピードで走るのが通常で、60キロ程度で走っていると、後ろに大型車でもいると煽られる。だから通常の一般道に比較すればずいぶん快適に流れる道路である。にもかかわらずひたすら走り続けるという印象があり、木曽の谷が南北に長いことを認識する。

 ちなみにその実際の距離感を数字で追ってみよう。塩尻市の国道20号や国道153号との交差点(1)から旧山口村(2)までの距離は、88.9kmである。旧山口村から名古屋市起点(3)までは90.0kmというから、旧山口村がほぼ中間点ということになる。(1)の交差点から伊那谷を走る国道153号を旧山口村と同じ程度の距離南下すると、飯田ICの先である。考えてみれば少し伊那谷の方が南北に長いかもしれないが、並列して南北に沿っている木曽谷なんだから、遠いに決まっている。この間に二つの郡がある伊那谷にくらべれば、一つの郡にくくられている木曽は広いわけだ。(1)の交差点から長野市の国道18号交差点(4)までは、87.5kmであるから、(3)の名古屋市と(4)の長野市までを3等分すると、そのポイントが(1)と(2)になるわけだ。旧山口村(2)から長野市まで約176km、名古屋市なら90kmということでどう考えても空間は中京圏である。かつて山口村が岐阜県中津川市との合併に際して、田中康夫がいろいろ言って知事の座を失う一つのきっかけにもなった事件があったが、「いまさら何を言っているんだ」という地元の複雑な気持ちは、この距離感から理解できるだろう。木曽郡の県の出先機関がある福島までの距離も50キロ近くある。隣の中津川市内まではすぐそこなのだ。

 木曽の谷を走ると、スピードが出ているから景色を見ている余裕はない。加えて山の中だから遠景を望めるポイントは少ない。旧日義村あたりから木曽駒ケ岳の山並みがのぞけるが、あとは滅多に中央アルプスの姿を望むことはない。そんななか、上松町の寝覚の床を過ぎたあたり滑川の谷を横断する際に左手の中央アルプス側をちらっと見たら「宝剣岳か」と思わせるような山並みが一瞬ではあるが望める。伊那側に住んでいる者にとって、宝剣岳の山のイメージは強い印象として記憶の中にある。だからほぼ同じ位置の木曽側を想定すれば「宝剣岳か」と思うわけだ。そう思った山並みが写真である。もちろん尖っている部分を見てそう思ったのだが、自宅に帰って地図や山のガイドで調べてみると、どうも宝剣岳は写真の中には写っていない。ぎざぎざしている部分は牙岩と言われる部分で、左手の山が麦草岳(2,721m)、右手の山が木曽前岳(2,756m)だろう。木曽前岳の奥に駒ケ岳があって宝剣岳はさらに右手奥になるだろう。牙岩から下ってきている沢が北股沢となり、滑川に合流する。写真は吉野地区に渡る橋下で撮影したものだが、この滑川があまりに急流であることに驚かされる。大水が出たらどうなんだろうと思う。

 国道19号が左岸側を走っているため、なかなか中央アルプスの姿をうかがえないわけだが、数少ないポイントのひとつであった。ガイドなんかを見てもなかなか木曽側からの写真は少ない。だから伊那側の山容を頭に描いていると、まったく別の世界である。

コメント    この記事についてブログを書く
« 散り始めた桜 | トップ | 歴史から何を学ぶ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

つぶやき」カテゴリの最新記事