Cosmos Factory

地方は終焉を迎え、無秩序な空間は途方もなく宇宙まで続く。

「長生きしんでいい」

2016-12-19 23:45:20 | つぶやき

 1週間ぶりに病院へ。だいぶ指の状態が良くなっているのだとは思うが、そうはいっても折れたとなると無理に使わない方が良いだろうと、左手を使わずに作業するように心がけている。そんな経過観察という感じの通院である。病院内の駐車場に置くと駐車券の処理をしてもらわなければならない面倒さもあって、病院外にある病院用駐車場に車を停めて少し歩く。するとうしろの方から賑やかな声が。聞くところによると「長生きしなくてもいいから」、とか「手術なんかしなくていいから」といった内容のもの。さかんに大きな声で話しているのは年のころ、80歳代に入ったくらい、いやもう半ばくらいだろうか、お婆さんである。一緒に歩いている方は、さかんに病院の方に向かって歩くように促しているのだが、その声はずいぶん大きくて周囲にしっかり聞こえている。とはいえ、それほど周囲を人が歩いているというわけではないが、数メートル先を歩いていたわたしには、よく聞こえた。一緒に歩いているのはお嫁さんなんだろうか、それとも娘さんなんだろうか、そんなことを思いながら急ぐわたしは彼女たちからはしだいに遠ざかっていった。

 目的の診療科に着いて診察券を出し、待合室の椅子に座っていると再び賑やかな声が聞こえてきた。先ほどの女性二人連れだ。相変わらずお婆さんは「もう歳だから手術なんかしなくていい」、「長生きなんかしなんでいいから」と連れの女性にさかんに話しかける。付き添いの女性は「手術で治った人がいるんだから」と促しているが、お婆さんは同じように繰り返す。でも、けして足を止めることはなく、意外と自ら進んで歩みを刻んでいるから、けして本当に抵抗しているというわけではなさそうだ。広い待合室中の人たちに聞こえそうなくらいに「長生きしんでいい」なんていう言葉が流れてなかなか病院らしい雰囲気を醸し出していたが、目的の診療科の席に座るとその声はおさまった。何事もなかったように、わたしもその二人連れから視線を外して、すっかり忘れたころ彼女たちの姿を思い出したように追ったところ、もう二人の姿は待合室から消えていた。

 きっと「先生、治るんならお願いします」、なんて診察を受けて口から発しているに違いない。きっとこれまで病院にはあまりお世話になってこなかったに違いない。

『長野県』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
« イメージセンサークリーニング | トップ | 「なぜここでブレーキを踏む... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

つぶやき」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL