Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

冬タイヤの向こうに

2005-12-06 08:11:27 | つぶやき
 冬タイヤに交換したのが12月の頭なんていうことは、今までなかった。もちろん単身赴任して長野に来ているからということもあるが、昨日の朝は、自宅のある南信でも積雪があったから、朝、通勤しようと思えば、やはり冬タイヤが必要だった。高速道路が通行止めになっていることを知らずに北上し、苦労して長野までたどり着いたが、伊北インターで誘導している人に様子を聞こうと思って話しかけ、顔を見てびっくりした。自宅の近くの人で、息子が小学校のときは、PTAで会うとよく話をした人であった。測量会社にいて、先が見えてきたということもあるのだろうが、辞めて家の農業を始めた。しかし、農業だけでは収入が少ないのか、時折測量のアルバイトのようなこともしているようだったが、高速道路の誘導もしていたとは知らなかった。息子の同級生の父親も、農繁期は果樹栽培を行い、冬場は高速道路の除雪に出るという。身近にそういう人がけっこういるんだと、改めて認識した。田舎の男たちはみんなそんな苦労をしている。わたしなどは気楽なものだ。
 さて、今はもう忘れられてしまったが、15年ほど前まではスパイクタイヤというものがあった。タイヤに鉄のピンがついていて、そのピンが雪に、氷に食い込んで滑るのを防いだ。当時の長野県では、ほとんどの車がこのスパイクタイヤをはいた。凍結や積雪の道路には完璧なくらいによくきいた。チェーンより車によってはきいたものである。ただし、ドライの道では、ピンがタイヤ面を浮かせてしまうため、よく滑った。だからドライの道路でカーブで減速しないと、かなり外側に流されたし、もちろんブレーキを使った際にも止まらなかった。このスパイクタイヤが禁止されたのは、ピンがアスファルトを削って、粉塵による公害がひどかったためである。禁止された当時は、全面禁止ではなく、市町村指定というような変則的な禁止だったため、かなりもめたことを覚えているが、そんなもめごとは一時的なもので、一斉に現在のスタッドレスタイヤに変わっていった。もちろんスタッドレスタイヤでは、凍結や積雪路面での安全性が劣るということはみんな知っていたが、粉塵による公害を一掃しようという流れは、強かった。
 わたしはスパイクタイヤの時代に豪雪地飯山に暮らした。スパイクタイヤを持ってはいたが、ドライ路面で滑るということもあって、長い道のりのうちのわずかな区間のためにずっとスパイクで走るということに抵抗があった。したがってなるべく換えたくたくないというのが本音であった。今にくらべると、ドライが続くと、再び夏タイヤに履きかえるという人も多かったように思う。自宅から飯山へ向かうときは、だいたいドライ状態で、もちろん飯山市へ入れば積雪はあるが、消雪パイプというものがあって、幹線道路は夜でも消雪孔から地下水が出ていて、よほどの吹雪でない以上、飯山市内に入っても普通タイヤで走ることは可能だった。したがって、消雪パイプがない飯山市内までの道のりの方が、気をつけなくてはならない道だった。それでも当時は高速道路はなかったが、松本市から長野市の間の北安曇郡八坂村、あるいは長野市以北あたりの難関をクリアーできれば、普通タイヤでも十分飯山市まで行けたものである。事実、冬を5回越したが、ほとんどスパイクタイヤに履き替えなかったシーズンもあった。今、こういう話をするとみんなびっくりするかもしれないが、今同じ経路を飯山市に向かったとしたら、普通タイヤで冬を越すことは100パーセント無理である。
 それはなぜかということになる。昨日もそうだったが、伊北インターから以北の高速が通行止だったため、辰野町から岡谷市を通過して塩尻まで行った。岡谷市内を走っていて信号機に止まると、発進の際、前の車が揺れているのである。それほど坂ではないのだが、横すべりしているのである。どうして?と思っていると、自分の車も尻を振るのである。スタッドレスタイヤを履いていても、そして比較的平らでも駆動輪を回したときに滑るのである。これはスタッドレスタイの効きが悪いのではなく、これでも精一杯効いているのである。スタッドレスタイヤは、雪の上をなぞるように走る。したがって何度も走っていると、どんどん雪面がツルツルになっていく。タイヤが路面を滑りやすくしているようなものなのだ。だから、昔のスパイクなら、雪面をツルツルにするようなことはなかった。そのため、普通のタイヤでもゆっくり走れば、なんとか走ることができたのである。ところが、今のようにツルツル状態では、とても普通のタイヤでは滑ってしまって走れないのである。近ごろ田舎でも、歩行者が転んで怪我をするという話を聞く。昔にくらべて体が順応しなくなったともいえるが、そうばかりではなく、車がこれだけ多くなって、そしてスタッドレスタイヤをはいているのだから、人が歩く場所がなくなったということになる。くれぐれも気をつけなくてはならないのは、横断歩道であることは、言うまでもない。歩行者があわてて横断歩道や交差点に入ったときは、必ず転ぶ、というくらいに見ていた方がよい。
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