Cosmos Factory

地方は終焉を迎え、無秩序な空間は途方もなく宇宙まで続く。

ホタルを考える

2017-06-15 23:20:23 | 自然から学ぶ

 

 仕事の関係の方たちで辰野の「ほたる祭り」を訪れた。天竜川端の西岸にある公園内のホタル水路は、30年以上前に会社の先輩たちが整備に関わっていた。盛んに先輩の口から聞かされて記憶から消えることはない。もともとホタルの生息地だったところにこうした整備が進んで、今や近在では最も知られるホタルの名所となった。このホタル水路がある山際にかつての西天竜幹線水路の残骸が今も残ることは、以前にも触れた。「ほたる祭り」の期間はこの10日から今週末18日までとの1週間ほど。もちろん期間外においてもホタルは舞っているのだろうが、期間中が最もホタルが舞うと言われる。昨日は2万匹のホタルが舞ったという報告があって、今日はさらに多くなるのではないかという期待も。辰野町では7種類のホタルが確認されているといい、その中でも松尾峡のほたる祭りで舞うホタルはゲンジボタルが主となる。いわゆるカワニナを餌とするホタルはゲンジボタルなのだ。ヘイケボタルはタニシやモノアラガイという。

 ほたる祭りは以前伊那の事務所にいた際にも訪れたことがあり、6年ぶりぐらいだろうか。そもそもどこでもホタルが舞うという時代ではなくなっただけに、ホタルの乱舞なるものを見たのは昔のこと。したがって当時も少なからずその乱舞に心踊りはしたが、驚く程の舞ではなかったと記憶する。今年は幼虫の上陸数が多かったことから多いという情報が事前に流れていたよう。ということで一昨日1万ほど数えられたホタルが昨日は2万と言われ、近年では数が多いという。そして実際にほたる公園内へ。天竜川東岸からホタルの舞が確認できたが、天竜川の橋を渡り西岸に足を踏み入れるとホタルの点滅が視界いっぱいに広がる。この感覚は以前訪れた際にはなかった。いわゆるホタルは一斉に光を灯す。その発光パターンに人々は酔いしれるわけで、これがバラバラだったらまた違った印象を受けるのだろう。いただいた資料によると、ゲンジボタルでも発光パターンは地域によって異なるという。西日本では2秒型、東日本では4秒型と言われ、長野県内は重複地域とされているよう。松尾峡のホタルは2秒型である。実は西日本型発光パターンであることについては、多くの論文や指摘がされているように、松尾峡のホタルは移入されたものだからという。前述したように会社で一時盛んにホタル水路なるものにかかわった。県内各地で「ホタルの舞う里に」という意図をくんでのものだが、そうした事業が盛んになると、移入ホタルという問題が報道された。生態系を破壊するという指摘である。1960年代に大量に移入されたゲンジホタルが現在の祭りの担い手となっているわけだが、この生態系保護に関する指摘に対してすでに観光地化された辰野町としては答えることができなかったのかもしれない。問題視発言は多いが、絶滅したと思われる在来種を復活させることは、現在の「ほたる祭り」を見ている限り不可能に近いのだろう。すでにこの地域では半世紀にわたってこの文化が醸成されてしまっているから。ただ、この松尾峡のホタルが周辺地域の在来種にも影響を与えているという指摘を踏まえると、複雑なものが増幅する。

 今年の松尾峡の午後8時は見事な光景を展開してくれた。これが作られたものとしても、映画や絵画だと思えばひとつの作品かもしれない。わたしの記憶にある子どものころのホタルの乱舞は、このような一斉に発光するパターンの世界ではなかった。そもそも何匹も視界に入っても、ばらついた発光だった。ホタルは松尾峡以外においても乱舞するような場所があちこちにある。あたらめて比較してもらい、ホタル問題を考えてみるのも良い。

 

参考

辰野の移入(外来)ホタル 生物多様性の喪失へ

長野県辰野町における移入ゲンジボタルについて

 

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