蕃神 義雄 部族民通信ブログ

部族民の精霊信仰、異界交流など独自の世界観は今も人の心奥に潜んでいます。彼等の心情と感性で今世界を批判したい。

猿でも分かる構造主義 6

2017年04月19日 | 小説
表題6回目の投稿

前回はメルロポンティの現象学をさらりと述べた。
彼の限界とはデカルトの伝統に反発しているのだが、それでもデカルト的世界に論理の骨子を置く点に尽きる。領域(無秩序のかたまり)から信号(秩序)を引き出す力が知覚(perception)。デカルトが唱える理性主義とは存在(etre)に本質(essence)が隠れているが、それに迫るには属性(attribut)を知性(raison)の力で分離するとしています。メルロポンティの知覚とはデカルトの知性で、信号(例えば旋律や詩、絵画)はデカルトが語る本質、領域(音や色、行動が無意味に溢れる環境)は同じく存在の言い換え。そして、カソリック信者として、これら領域、信号、知覚はこの世界そのもので、それら全てを神が創造したと教えている、そう言い切れます。
A学院の哲学講師I女史は「メルロポンティの用語法、思考の仕組みはデカルトに近似する」と教えてくれた。となるとスピノザの決定論で行き詰まったデカルト哲学の再興、あるいは「焼き直し」かも知れません。これ以上は語りません。
シモーヌドゥボーヴォワールがメルロポンティの思い出を書いている(ある少女の思い出=ガリマール出版)。エコールノルマルで同級生だったメルロポンティ(本上ではPradelleと別名)とは信条などで離れているものの、個人の印象が強かったのだろう、もの静か、明晰、カソリック信者、上流志向の優秀な学生として前向きに描写されている。その一節A l’Ecole(高等師範校)on le(この代名詞がメルロポンティ) rangeait(分類されていた) parmi les talas。このtalaとはノルマリアン(高等師範校生)でカソリック信者を言う(と辞書にあった)
上流階級、知識階層の生まれ、カソリック、ノルマリアン。フランスでエリートの資格をかき集めている体を感じてしまいます。それが伝統とは決別できなかった彼の「限界」かもしれない。
ちなみに、
投稿子はI女史の現象学講義で「メルロポンティの考え方で、領域を無秩序(chaos)として信号を秩序(ordres)と規定する、謂わば対立構造、二元論として理解できないか」と質問した。I女史は「その解釈は成り立たない。そのようには書かれていない。彼の理論の根本はco-existance=共棲にある」との答えを受けた。
宜なるかな、フランス語に未熟なる投稿子が読んでもメルロポンティの文中に「対立構造」はない。同様の質問を投稿子は三度試みた。同じ趣旨で三回問い質す背景とは、頭の構造に欠陥が隠れる証拠なのだが、エレガントなI女史は「頭が悪いのでは」などの嫌悪表情など一切見せず、丁寧に、そのたびに「co-existance」と答えになられた。
「これほどにも美しい理論(知覚の現象学)なのに、混乱のかたまりの中に、曖昧モコと大事な信号が、何となく逼塞していると語るとは」投稿子は忸怩たる思いでI女史の指摘を聞いていたのです。
カソリック信仰者は、神が創造したこの世界、根源的に、対立が内包しているとは思いこみたくないかもしれない。さらに考えるとデカルトも本質と属性は物=etreに内包されているとしている。対立する二重構造を取り出すと、世界はそこに収斂してしまう。神が無くとも「物=etre」だけで完結する。
レヴィストロースが展開した構造主義がこれに当たります。「世界には対立構造が内包している、その構造の中から理性が生まれ、社会が形成された」と教える。
その彼は無神論者です。
6回の終了前に彼が無神論者である証拠を上げる。
Le monde a commence sans l’homme et il s’achevera sans lui. (Tristes tropiques 495頁)拙訳:この世界は人類無しで始まった、そして彼=人類=無しで終わるだろう)
天地創造も神の予定調和も完璧に否定してる。読み進め、この有名な一行に出あった時に、やっと来たかの達成感を覚えた。それと同時に、世界の終わりは「単純未来形」で語られていた。確実にその日がやって来る、猶予も条件も無し、彼の信念を現しています。
レヴィストロース思想の冷たさに身震いする思いで頁をそれ以上は開けなかった。

猿でも分かる構造主義 6の了
(これまでの出稿4月5,6,8,10,13、16日、次回予定は22日)
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