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”最悪の地”ラスベガスでリベンジに挑むロシアン・クラッシャー - ウォード VS コヴァレフ II 直前プレビュー -

2017-06-18 05:29:31 | Preview
■6月17日/マンダレイ・ベイ・ホテル&カジノ,ラスベガス/WBA・IBF・WB3団体統一O世界L・ヘビー級タイトルマッチ12回戦
統一王者 アンドレ・ウォード(米) VS 前統一王者 セルゲイ・コヴァレフ(ロシア)



このリマッチが実現するのかどうか、当初は懐疑的に見ていた。何だかんだ言っても、結局ウォードは勝ち逃げするんじゃないか。場合によっては、練習中の怪我を理由に長期休養に入り、IBFとWBOのベルトを順次放棄。融通無限大のWBAは、1年半やそこいら試合から遠ざかったとしても、スーパー王座を召し上げたりはしないだろう。

ウォードが手放した王座の1つを、コヴァレフはすぐに巻く。S・ミドル級に続いて、L・ヘビー級でもNo.1をウソぶくウォードは、世界中のファンと関係者が待ち望む(?)ゴロフキン戦を少しでも有利に運ぶべく、シビアな条件闘争に明け暮れる・・・。

しかし、ウォードは再戦に同意した。少なからず驚いた。あれだけ採点を巡って紛糾し、メディアやファンから異論反論が噴出したら、ダイレクト・リマッチが行われるのは当たり前。それが20世紀のボクシングでは常識だった。ところが今では、リマッチを平然と回避するケースも珍しくない。

プロデビューしてから暫くの間、ウォードの評判は散々だった。無名のボクサーたちを相手に、強引に倒しに行っては反撃を食う。大慌てのへっぴり腰で必死に抱きつき、あられもないクリンチで時間をやり過ごす以外に策は無し。金メダリストのヘタレっぷりに、全米のファンは「Boo!」の大合唱。

「史上最大の期待外れ」

「ダン・グーセン(ウォードを獲得した最初のプロモーター)は、超特大の外れクジを引いた。」

「アンドレ・ウォードはいったい何処にいる?。どのチャンネルに合わせたら、金メダリストの活躍を見ることができるんだ?。」


マイナスが積み重なる一方のウォードへの評価が、まるでツー・テン・ジャックのように大逆転したのが、「Super SIX トーナメント」だった。S・ミドル級のトップと目される6名のボクサーが一同に介し、正真正銘のNo.1を決める。SHOWTIMEが仕掛けた一大イベントに、世界中の注目が集まった。

アルトゥール・アブラハムに逆転KOされたジャーメイン・テーラーが早々と脱落し、アンドレ・ディレルも撤退を表明。ウォードのヘッドバットを浴びたミッケル・ケスラーは、負傷が癒えないままカール・フローチとの一騎打ちに進み、眼窩底骨折の重傷を負ってドクター・ストップ。

空中分解の危機に見舞われたトーナメントを維持する為、SHOWTIMEは格落ちのアラン・グリーンと大ベテランのグレン・ジョンソンを急遽ピンチヒッターに駆り出す。ディレルとの親友対決を回避したウォードは、唯一アウェイへの遠征を免除される厚遇を受け、目論み通り優勝に辿り着く。

ホームタウンのオークランド以外では、カリフォルニア州内でも客が集まらない。不人気に喘ぎ続けた”神の子(Son of God)”に、ようやくスポットが当たる。リング誌のパウンド・フォー・パウンド・ランキング入りを果たし、不遇を囲っていた(?)ウォードは「やっと正当な評価を得た。」と満足げな笑顔を浮かべた。

その後ウォードは、ダン・グーセンとの関係清算に動く。怪我を理由に防衛戦の履行を拒み、本格的な法廷闘争に入って試合枯れ。WBCのベルトを失い、リング誌のランキングからも外されたが、ロック・ネイション・スポーツとの契約に漕ぎ着け実戦復帰。前々から噂されていたL・ヘビー級進出をようやく決断。ラスベガス開催でコヴァレフへの挑戦に踏み切った。


第1戦の判定は、明らかに正当性と妥当性を欠いている。より勝者に相応しいのは、ノックダウンを奪い、終始攻め続けていたコヴァレフであることは明々白々。だからと言って、リマッチでも優位になるとは限らない。まずはスポーツブックの賭け率を見てみよう。小差ではあるが、いずれもウォードがリードしている。


□主要ブックメイカーのオッズ

<1>BOVADA
ウォード:-140(約1.71倍)
コヴァレフ:+110(2.1倍)

<2>5dimes
ウォード:-140(約1.71倍)
コヴァレフ:+120(2.2倍)

<3>MYBookie
ウォード:-145(約1.69倍)
コヴァレフ:+125(2.25倍)

<4>ウィリアム・ヒル
ウォード:4/6(約1.66倍)
コヴァレフ:5/4(2.25倍)
ドロー:20/1(21倍)


クリンチ&ホールドに甘いレフェリング、ジャブ(軽打)&ペースポイントを金科玉条のごとく奉るジャッジ。審判団の面子は総入れ替えされ、コネチカットとニュージャージーから副審2名が呼ばれてバランスを取ったかに見えるが、ウォードの”ヘタレ・スタイル”を強力にバックアップする布陣と体制であることに変わりはない。

コヴァレフをプロモートするメイン・イベンツは、東部での開催を主張して相当頑張ったとのことだが、交渉のイニシャチブはウォード陣営にある。当て逃げタッチスタイルを追いかけるスラッガーに取って、ラスベガスは”最悪の地”だ。

相手の先制打をかわしざまに頭から飛び込み、組み付いたまま腹を叩きつつ、離れ際にセコく顔面を狙うウォードは、ひたすら打ち合いを回避して判定に逃げ込みさえすれば、勝利が転がり込んで来る。

「KOしなければ勝てない。」

倒すことに意識を集中し過ぎると、コヴァレフほどのボクサーでも余計な力み生じてしまい、大振りの傾向が増す。そのまま直進するのが一番まずい。第1戦で主審を務めたロバート・バードのクリンチ&ホールド容認は論外だが、今回選ばれたトニー・ウィークスも大同小異。

ボクシングの未来を明るくする為にも、コヴァレフのKO勝ちを願うけれど、前回のダウンでウォードの警戒レベルはレッドゾーンを振り切るに違いない。あられもなくコヴァレフにしがみつき、渾身の力を振り絞って打ち合い回避に徹するウォードを詰め切るのは、いかにロシアン・クラッシャーといえども困難を極める。

執拗なウォードのホールディングと、頭から突進するタックルに対して、主審のウィークスがどこまで厳正に対処するつもりなのか。甚だ心許ない希望だが、真っ当なレフェリング&スコアリングに少しでも近づくよう、今は天に祈るしかない。

黒人でもなければ、ヒスパニック系の移民でもない。アメリカで戦うロシア人という現実が、またしてもコヴァレフに重く圧し掛かる。


◎ウォード(33歳)/前日計量175ポンド
WBA・IBF・WBO3団体統一L・ヘビー級王者
元WBA S・ミドル級(V6/スーパー王座),元WBC S・ミドル級(V2)王者
戦績:31戦全勝(15KO)
アマ通算:114勝5敗(115勝5敗説有り)
2004年アテネ五輪L・ヘビー級金メダル
2003年全米選手権L・ヘビー級優勝
2001年全米選手権ミドル級優勝
身長:183センチ,リーチ:181センチ
右ボクサー

◎コヴァレフ(34歳)/前日計量175ポンド
全WBA(V4),IBF(V4),WBO(V8)3団体統一L・ヘビー級王者
戦績:32戦30勝(22KO)1敗1分け
アマ通算:193勝22敗
2007年及び2005年世界軍人選手権L・ヘビー級金メダル
2006年世界軍人選手権L・ヘビー級銀メダル
2008年ロシア選手権L・ヘビー級銀メダル
2007年ロシア選手権L・ヘビー級銅メダル
2005年ロシア選手権ミドル級金メダル
2004年ロシア選手権ミドル級銀メダル
2001年ジュニアロシア選手権ミドル級銀メダル
2000年ジュニアロシア選手権L・ウェルター級銀メダル
身長:183センチ,リーチ:184センチ
右ボクサーパンチャー




○○○○○○○○○○○○○○○○○○

□オフィシャル

主審:トニー・ウィークス(米/ネバダ州)

副審:
デイヴ・モレッティ(米/ネバダ州)
スティーブ・ウェイスフィールド(米/ニュージャージー州)
グレン・フェルドマン(米/コネチカット州)

立会人(スーパーバイザー)
WBA:レンツォ・バグナリオル(ニカラグァ/WBAインターナショナル・コーディネーター)
IBF:アニバル・ミラモンテス(亜/ランキング委員長/米ニュージャージー州在住)
WBO:フランシスコ・バルカルセル(プエルトリコ/WBO会長)


●●●●●●●●●●●●●●●●●●

■判定を巡り紛糾した第1戦

※2016年11月19日/T-モバイル・アリーナ,ラスベガス/WBA・IBF・WB3団体統一O世界L・ヘビー級タイトルマッチ12回戦
元WBA・WBC S・ミドル級王者 ウォード 判定12R(3-0)3団体統一L・ヘビー級王者 コヴァレフ


□オフィシャル

主審:ロバート・バード(米/ネバダ州)

副審:
バート・クレメンツ(米/ネバダ州):114-113
ジョン・マッケイ(米/ニューヨーク州):114-113
グレン・トゥロウブリッジ(米/ネバダ州):114-113

※オフィシャル・スコアカード




※ハロルド・レダーマン(HBO/アンオフィシャル・ジャッジ)のスコア
116-111でコヴァレフ


※管理人KEIのスコア:117-112でコヴァレフ



○○○○○○○○○○○○○○○○○○

□パンチング・ステータス

○ヒット数/トータルパンチ数(ヒット率)
コヴァレフ:126/474(26.6%)
ウォード:116/337(34.4%)

○ジャブ:ヒット数/トータルパンチ数(ヒット率)
コヴァレフ:48/242(19.8%)
ウォード:168/55(32.7%)

○強打:ヒット数/トータルパンチ数(ヒット率)
コヴァレフ:78/232(33.6%)
ウォード:61/169(36.1%)

※パンチング・ステータス(Compubox)




手数の総数と着弾数を明らかにし、命中率を具体的な数値で示すパンチ・スタッツは、あくまで参考資料に過ぎない。着弾によるダメージの軽重を、正確に数値化するのはほとんど不可能に近く、一流の域に達したボクサーが限界まで手数を抑えて、守備的な安全策に閉じこもりつつ、相手の打ち終わりをタッチする戦術を徹底した場合、手数を出しながら追いかける方はどうしても命中率が下がる。

専守防衛で逃げ切りを図る側が、追いかける側を捌いているかのごとく見えてしまう。前に出続ける方のアグレッシブネスは、評価の要素からごっそり抜け落ちかねない。パンチ・スタッツは、リング上で拳を交える2人のボクサーの優劣を、客観的かつ冷静に見つめ直す為の指標として有用なものではあるが、絶対的な判断基準にはけっしてなり得ない。

そもそもパンチの分別が大雑把過ぎる。ボクサーが試合で放つパンチが、「ジャブ以外はすべてパワーショット」である筈がない。


第1戦のスタッツを見てわかることは、トータルの手数と着弾で上回っているのはコヴァレフだが、ウォードはジャブ(軽打)の着弾で大きくコヴァレフを引き離し、手数が少ない分だけパワーショットの命中率でも僅かにリードする。

「ウォードはコヴァレフの強打から身をかわし、的確にヒットを奪っていた。」との誤った見方も、数字の解釈次第で成立してしまう。パンチ・スタッツのマジックである。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○

□メディアによるスコア(アンオフィシャル・ジャッジ)

<1>コヴァレフ支持:44(72.1%)
ハロルド・レーダーマン(HBO):116-111
キーレン・マルヴァーニー(HBO):114-113
スティーブン・スミス(HBO):114-113
エリック・ラスキン(HBO):114-113
ダン・ラファエル(ESPN):115-112
ダグ・フィッシャー(Ring Magazine):117-110
クリフ・ロルド(Boxing Scene):115-112
ライアン・バートン(Boxing Scene):115-113
ビクトル・サラサール(Boxing Scene):115-112
スコット・クリスト(Bad Left Hook):115-112
ケヴィン・マクレー(Bleacher Report):115-112
クリス・マニックス(Yahoo! Sports):115-112
スティーブ・ゼマク(Fox Sports 640):115-112
アラン・フォックス(Boxing news 24):117-110
フレイザー・コフィーン(Bloody Elbow):115-112
アンドリュー・ハリソン(Boxing Monthly):117-111
ジョン・A・マクドナルド(Boxing Monthly):114-113
ダニー・ウィンターボトム(Boxing Monthly):114-113
ボビー・デイヴィス(The 13th Round):116-111
ランス・パグマイア(L.A.タイムズ):115-112
ボブ・ヴェリン(USA Today):114-112
ロン・ボルゲス(Boston Herald):116-114
ティム・ダールバーグ(AP):116-111
スティーブ・キム(UCN Live):115-112
ダニエル・アティアス(AUSboxing):114-113
ホルヘ・エルナンデス(SW Fight):115-112
アレックス・モリス(Next Big Pod):114-113
サム・シェパード(Next Big Pod):115-112
ボウ・デニソン(The Boxing Truth):114-113
ダニエル・ヴァーノ(Checkhookboxing):114-113
アンディ・ピーターソン(Boxing Asylum):114-113
ベン・ウェイスマン(Boxing Asylum):114-113
マイケル・モンテロ(Montero On Boxing):116-111
ベルナルド・オスナ(ESPN Deportes):115-113
ギャレス・デイヴィス(テレグラフ):115-112
ショーン・ブラウン(TalkingBoxing.uk):115-112
ティム・スタークス(Queensberry Rules):115-112
The Guardian Online:115-112
G・レオン(Box talk):114-113
Boxing Monthly Online:114-113
Heavy Bag Boxing:115-112
Fighters Rated:115-112
Boxhard Podcast: 115-113
Bokser.org:115-112


<2>ウォード支持:16(26.2%)
ケヴィン・アイオリ(Yahoo! Sports):114-113
ブライアン・キャンベル(ESPN):114-113
トム・グレイ(Ring Magazine):116-115
トム・クレイズ(Bad Left Hook):116-111
マーク・ブッチャー(Boxing Monthly):114-113
アダム・アブラモヴィッツ(Saturday Night Boxing):115-112
ケン・ポリット(The 13th Round):114-113
マイク・コッピンガー(USA Today):114-113
LA Times Online:114-113
New York Post Online:114-113
ラモン・アランダ(3 More Rounds):114-113
ダニー・リチャードソン(Script Media):115-112
World Boxing News:114-113
マーク・オルテガ(Freelance):115-112
ヴォルフガング・シフバウアー(German Freelancer):114-113
ポール・スミス(Sky Sports):116-113


<3>ドロー:1(3.2%)
トニー・ベリュー(Sky Sports):114-114
ジャンル:
ウェブログ
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