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電力業界の現状分析と将来の展望(つづき4)

2017-04-12 18:04:32 | 経済
 事例:カナダ
~以下抜粋~
  電力需給:水力中心、余剰電力は米国へ輸出
カナダの電力需要は1990年から2009年までの19年間に4,330億kWhから5,034億kWhへと約16%増大しました。これは年率平均0.8%の伸びに相当します。部門別需要の比率は1990年から2009年までの期間、産業部門が42.2%から36.9%、家庭30%から31.8%、商業その他22.1%から26.2%、行政機関2.9%から2.5%、農業部門2%から1.9%、運輸0.8%から0.7%と推移しています。産業部門の比率が小さくなった分、商業その他の比率が大きくなっています。鉱業や石油・ガス生産、製造業を含む産業部門の需要は、2005年をピークに漸減傾向にあります。
一方発電電力量については、1990年から2010年までの20年間に4,661億kWhから5,667億kWhへと約22%増大しました。2010年の発電電力量の燃料別内訳は、水力61.3%、在来火力18.4%、原子力15%、燃焼タービン4.4%、内燃力0.2%、風力・潮力0.6%となっています。この内訳は20年間ほぼ変わっていません。カナダは水力資源に恵まれ、歴史的に水力を中心とした電源開発が行われたことから、1950年代には水力発電の比率が95%に達していましたが、その後火力発電や原子力発電の開発も進められ、現在の水準まで低下してきました。発電量を州別にみると、2010年において上位のケベック、オンタリオ、アルバータ3州で全体の68%を占めています。
カナダと隣国米国との電力輸出入も盛んです。米国との国際連系線は23万V以上のものが21回線、小規模のものも含めれば100回線を超え、総連系容量は約1,900万kWに上ります。国全体としては通常輸出超過ですが、2001年から2003年にかけて輸出が減少する一方で輸入が増大、2003年は輸出入の格差が最も小さくなりました。それ以後は再び輸出の増大傾向が続いています。2010年は輸出437億kWhに対して輸入184億kWhで、253億kWhの輸出超過でした。
■電力市場の再編:多くの州で卸市場を自由化
カナダの電気事業は基本的に州単位で組織・運営されています。その中で州有の電力会社7社は、カナダ全体の発電電力量の約8割を担ってきました。これらは発電から送配電までを一貫して行う垂直統合型の事業者ですが、欧米における近年の電力自由化の流れの中で、従来の事業構造に変革を求められています。
前述のように、カナダの電力会社は古くから米国との間で電力の輸出入を積極的に行ってきました。そうした中、電力自由化が先行する米国側からの要求に応じて、カナダにおいても送電線を開放し非差別的に送電サービスを提供するなど、卸電力市場を自由化する互恵的な措置を講じています。
2011年末現在、10州のうちニューファンドランド州とプリンスエドワード・アイランド州を除く8州(ノバスコシア、ニューブランズウィック、ケベック、オンタリオ、マニトバ、サスカチュワン、アルバータ、ブリティッシュ・コロンビア)で卸電力市場の自由化(送電線の開放)が実施されております。
さらに、大規模な州有電力会社の多くは、発電・送電・配電の事業部門制を採用したり、会計上の分離を実施したりしています。なお、カナダには大手州有電力会社の他にも、垂直統合型の私営電力会社、自治体営の配電会社、独立系発電事業者(IPP)など多数の小規模電気事業者が存在しています。
■小売市場の自由化は依然限定的
小売市場の全面自由化は2011年末現在、アルバータ州およびオンタリオ州の2州のみに留まっています。大口産業需要家のみにオープンアクセスを認める部分自由化は、ニューブランズウィック州、ブリティッシュ・コロンビア州、ケベック州の3州で実施されています。
アルバータ州では、1996年からパワープールの運用が開始され、2001年1月からは家庭用需要家も含め小売電力市場が全面自由化されました。
オンタリオ州では、2002年5月から卸電力市場と小売電力市場が同時に全面自由化されました。自由化に先立ち、州有電気事業者オンタリオ・ハイドロ社の分割も実施されました。同州では2003年の北米大停電を受け、2004年12月に長期需給・系統信頼度の確保を目的とした「電力再編法」が成立、電力再編の方向修正が図られました。同法に基づきオンタリオ州電力公社(OPA)が設立されるとともに、自由化時に設立された独立市場運用機関(IMO)は独立系統運用機関(IESO)に改称されるなど、規制と競争を組み合わせたハイブリッド市場が採用されております。
■気候変動問題:大規模投資と変革の必要性
カナダは、京都議定書の基準年となる1990年以降、先進主要国の中で温室効果ガス(GHG)排出量の伸び率が高い国の一国で、世界のGHG排出量の約2%を占めています。
2009年のGHG排出量は約6億9,000万トン(CO2換算)で、1990年比17%増でした。2009年のGHG排出量のうち、部門別の排出シェアは産業部門50%、運輸部門27%、住宅、商業ビルなどの建物部門11%、農業部門8%、ごみ処理場3%、その他1%となっています。産業部門をさらに細分化すると、発電部門14%、石油・ガスの生産と配送23%、その他産業施設13%となります。
COP15のコペンハーゲン合意(2009年12月)を受け、政府は2020年までにGHG排出量を2005年比で17%削減する中期削減目標を公表しました。さらにまた2050年までに60%から70%削減する長期目標も公約として掲げています。
発電部門については2020年までにゼロ・ミッション電源で総発電量の90%を賄うとする目標を設定しています。2010年4月、プレンティス環境相は、天然ガスコンバインドサイクル(NGCC)発電所を基準とする石炭火力発電のGHG排出規制案を提案しました。これは既存のすべての石炭火力発電所に対し耐用年数に達した時点でNGCC発電所と同等のCO2排出基準を義務付けるというもので、基準を満たせない場合は閉鎖となります。この規則は2015年7月に発効する予定で、GHG排出量が1,500万トン削減されると見込まれています。(抜粋終わり)
電力供給体制(アルバータ州)

注)州によって体制が異なっていますが、本図はアルバータ州の事例を示しています。

  事例:イギリス
~以下抜粋~
■エネルギー供給:化石燃料資源の枯渇と温暖化対策で激変
英国は石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料資源に恵まれた国であり、一次エネルギー需要の7割近くを自給しています。2010年の一次エネルギー需要は、227Mtoe(100万石油換算トン)で、その内訳は、石炭14%、石油35%、ガス41%、電力他10%となっています。しかし、この英国のエネルギー供給構造は、北海油田・ガス田の枯渇や地球温暖化対策によって、大きな転換期を迎えようとしています。
英国では1960年代から70年代にかけて北海油田・ガス田の開発を本格化させ、1980年以降、20年間にわたってエネルギー自給率100%を達成してきました。しかし、消費量が年々拡大する一方で、油田やガス田の枯渇が進み、2015年頃には石油もガスも半分近くを輸入に依存することになると予測されています。
■エネルギー政策:原子力、クリーンコール、再生可能エネルギー開発に重点
このような予測の下、国際ガスパイプラインやLNGターミナルの建設が進められる一方、エネルギーの過度な海外依存を防ぐ観点、さらには温暖化対策として、原子力や炭素回収・貯留設備(CCS)を設置した石炭火力や石炭ガス化発電を推進する動きが活発化しています。また、2009年に制定されたEUの再生可能エネルギー利用促進指令によって、英国は2020年までに最終消費エネルギーの15%を再生可能エネルギーで賄うことが義務付けられており、今後、洋上風力を中心にその開発を急ピッチで進めることとしています。
■再生可能エネルギー:拡大に向けた国家計画を策定
EUの再生可能エネルギー利用促進指令は、加盟国に対し、2020年までに最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギー消費量の割合を加盟国平均で20%(英国の場合15%)に高めることを義務付けています。英国政府がこの達成に向けてEUへ提出した国家行動計画(NREAP)では、英国に求められる15%(電力量換算で年間約2,400億kWh)の約半分に相当する1,170億kWhを電力部門、残りを熱供給部門と輸送部門に割り当てています。この達成には電力部門では4,000万kW以上の再生可能エネルギー電源の導入が必要となります。
その主力となるのが洋上風力で、2010年1月には、3,300万kW分の洋上風力サイトが競争入札によって風力開発事業者に割り当てられました。再生可能エネルギー支援の柱は、小売事業者に一定量の買取を義務付けるRO制度(RPS制度に類似)ですが、2010年4月から小規模電源を対象に、固定価格買取制度(FIT)を導入しています。現在、許認可制度の改革、送配電網の整備、スマートグリッドの研究開発、系統接続・運用方法の見直し、低炭素化に向けた卸電力市場の改革などを通じ、再生可能エネルギーの拡大に向けた環境整備が行われています。
■温暖化ガス削減目標:2020年までに34%、2050年までに80%削減
英国の場合、京都議定書に基づく温室効果ガスの削減義務は12.5%(2008~2012年に1990年比で)ですが、石炭からガスへの燃料転換や老朽産業設備の取替え等によって、すでにこの目標値をクリアしています。
このような中、2008年には、温室効果ガスを2050年までに80%削減(1990年比)することを規定した「2008年気候変動法」が施行され、翌2009年には、その途上の2020年までに34%削減する目標を設定するとともに、これを達成するための国家計画「低炭素移行計画(LCTP)」を発表しました。
LCTPで示された主な施策としては、再生可能エネルギーの利用拡大(発電比率30%)、スマートグリッドの開発、スマートメータの全世帯設置(2020年)、新設火力へのCCSの設置、立地手続きの簡素化、新築家屋や政府ビルのカーボン・ニュートラル化、グリーンディール(新たな形態の融資制度)、自動車の燃費改善や電気自動車の普及、賃貸住宅のエネルギー効率度を示す「エネルギー効率証書」制の導入、自治体レベルでの再生可能エネルギーの開発、需要部門を対象とした排出権取引制度の導入、社会的弱者家屋のエネルギー効率化事業の強化などがあります。
■低炭素電源導入のため電力市場制度を改革
英国では、再生可能エネルギー、原子力、CCS付火力など低炭素電源へシフトする政策を掲げていますが、現行の卸電力取引制度(BETTA)は、このような政策を前提に策定されたものではなく、強力な施策が導入されない限り、開発コストが高いこれら電源は市場から締め出されることになります。
そのため、英国政府は2011年7月、これらの電源を支援することを目的とした電力市場改革(EMR:Electricity MarketReform)に着手しました。EMRでは、現行の卸電力取引制度の枠組みはそのまま残すものの、卸電力市場に低炭素電源を導入する強いインセンティブを組み込むべく、数々の施策の導入を掲げています。その一つがCO2排出権価格に下限値(CPF)を設定するというものです。これは火力発電事業者が購入しなければならない排出権の価格を一定以上に保つことで、低炭素電源を相対的に優位に立たせようというものです。その他に、デリバティブの概念を用いた固定価格買取制度(FIT-CFD)の導入、石炭火力に対するCCSの実質義務化、および電力の供給保証の観点から確実に電源を確保することを目的とした「キャパシティーペイメント制度」(電源を保有することに対する報酬制度)の導入などがあります。これらの制度は2013年以降、順次導入されることになっています。
■原子力開発:福島第一原子力発電所事故後も継続
英国は原子力開発をその黎明期から手がけてきました。国産技術による1950~60年代のマグノックス炉(黒鉛ガス冷却炉)、1960~70年代のAGR(改良型ガス冷却炉)に続き、1970年代終りには軽水炉開発に着手、1994年にはサイズウエルB発電所(PWR1基、125万kW)を完成させました。原子燃料サイクル施設も整っています。2011年6月現在、運転中の原子力発電ユニットは18基、合計出力997万kWで、国内総発電量の約15%(2010年)を発電しています。
英国の原子力開発は、1990年の電力民営化や競争導入という流れの中で、サイズウエルBを最後に途絶えましたが、前述のように、北海ガス田の枯渇や地球環境問題が切迫した問題となりつつある中、政府は2006年から原子力開発の再開を視野に入れたエネルギー政策の策定に取り掛かかり、2008年1月には、政府として原子力を推進するとした新たな原子力政策「原子力白書」を発表しました。この白書に基づき、許認可プロセスの見直しや炉型の承認作業などを通じ、民間電気事業者が原子力を開発するための環境整備が進められました。2010年5月に誕生した保守党・自由党の連立政権も、前政権のこの原子力推進政策をほぼ引き継ぎました。
この開発推進の方針は福島第一原子力発電所事故後も変わっていません。事故後、既設炉の安全確認や追加対策の検討が安全規制当局によって実施されましたが、既設炉の運転を制限する必要のないことが確認されています。
また、新規建設についても、エネルギー担当大臣が英国の繁栄は原子力発電なくしては困難とし、原子力推進方針を再確認しました。一時、サイト選定手続きなどが中断されましたが、7月には再開されました。
一方、開発主体である電気事業者も新規建設計画を継続する姿勢です。ビッグ6と呼ばれる英国の大手電力会社は、合計1,800万kWにのぼる建設計画を発表し、重電メーカとの協議やサイトの確保など建設に向けた準備を進めています。建設計画で先行するEDFエナジー社は10月末、ヒンクレーポイントC原子力発電所建設について、許認可機関に計画申請を提出しました。
■M&Aで6大グループを形成
英国は電力市場の自由化で先陣を切った国です。自由化と同時に国有電気事業の分割・民営化も実施し、それまで発電と送電を独占していた国有発送電局(CEGB)を発電会社3社と送電会社1社に分割・民営化するとともに、12の国有配電局も民営化し、12の配電会社としました。また、自由化以降、新規参入が相次ぎ、2011年現在、発電市場では101社、小売市場では93社(ライセンス所有者の数であり、積極的に事業を行っている会社はその半分程度)が事業を展開しています。
競争の進展とともにM&Aが活発化し、英国の大手電力会社はドイツ、フランス、スペインの大手エネルギー会社に買収されました。この内、CEGBから分割されたイノジー社、パワジェン社はそれぞれドイツのRWE、E.ONに、また、スコティッシュ・パワー社はスペインのイベルドローラに、さらに、原子力発電会社のブリティッシュ・エナジー社はフランスのEDFにそれぞれ買収されました。
12の配電会社も、その多くがこれらエネルギー会社の傘下に入りました。その結果、英国の旧国有電気事業者(送電部門を除く)は、RWE系(ドイツ)、E.ON系(ドイツ)、EDF系(フランス)、SSE系(英国)、イベルドローラ系(スペイン)の5大グループに集約されました。これに電力市場でシェアを伸ばしている旧国有ガス事業者(ブリティッシュ・ガス社)が加わり、英国の電力市場(小売)は、これら6大グループが95%のシェアを占めています。また、英国では電力市場の自由化に先立って、ガス市場も自由化されたことから、これらの大手電力会社はガス事業にも進出しています。
M&Aの背景としては、顧客ベースの拡大を狙った供給部門間の水平統合、価格リスクをヘッジするための発電と供給の垂直統合などがあります。また、EDFによるブリティッシュ・エナジー社の買収は、原子力発電所の新規建設に向けて原子力サイトや人材を確保する狙いがあるものと見られています。ネットワーク部門では、送電会社とガス導管網会社の合併、配電会社間の資本統合や経営統合等に見られるように、スケールメリットを追及した再編が行われています。
■小売供給部門は全面自由化で競争激化
小売分野の自由化は1990年から段階的に進められ、1999年以降、家庭用を含めたすべての需要家が電力の購入先を自由に選択できるようになっています。小売供給事業者は、価格の割引競争以外に、産業用需要家に対してはオーダーメードサービス、家庭用需要家に対しては、ガスと電力のパッケージ供給、最近では使用量を減らした需要家に対するポイント還元など、様々なサービスを用意し需要家獲得競争を展開しています。このような競争の中で、全ての産業用需要家が供給事業者の変更や契約の見直しを行っています。また、家庭用需要家も、半数以上が供給事業者を変更しています。
電力供給体制(北アイルランドを除く)

(注)発電ライセンスは101社(1社が複数のライセンスを所有する場合もある)に発給されていますが、電力の販売を主目的に行っている会社は約半数で、残りは自家発もしくは活動を行っていない事業者です。また、小売供給ライセンスは93社に発給されていますが、6大グループ(ブリティッシュ・ガス、E.ON UK、RWE npower、EDF エナジー、SSE、イベルドローラ)が市場シェアの大半(95%程度)を占めています。(抜粋終わり)




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