北朝鮮製「ステルス機」レーダー感知せず

北朝鮮に木製「ステルス機」　レーダー感知せず、米が警告

【ワシントン共同】グレグソン米国防次官補（アジア・太平洋安全保障問題担当）は１６日の上院軍事委員会に提出した書面証言で、北朝鮮のプロペラ機がレーダーに感知されない「ステルス機能」を持つと明かした。

　米空軍のＦ２２戦闘機などが最新鋭技術で実現するステルス機能だが、北朝鮮の「ＡＮ２コルト機」は「ほとんどが布と木でできているためレーダーが映し出さない」という。第２次大戦後に旧ソ連で開発された機種とみられる。

　グレグソン氏は米韓同盟は通常兵器の能力で優位に立つものの、北朝鮮がこうした攻撃能力で対抗し脅威を増していると指摘。「ＡＮ２コルト機は侵攻や潜入作戦の際に識別が難しい」とし「１０万人の特殊部隊と組み合わせた場合、大きな潜在能力を持つ」と警告した。
2010/09/17 12:33 【共同通信】47NEWS配信

戦争は最新の科学技術の実験場と化している。我が家でも毎日使っているサランラップも、戦争の副産物だ。特に、２１世紀の戦争の道具は、高度に電子化されている。第二次世界大戦ではレーダーが軍事技術として進歩したのだが、レーダーという新たな「目」を手に入れると、その「目」から逃れる技術開発を要求されるのが技術革新の常である。



第二次世界大戦時には木製機こそが最強のステルス性を誇っていた。朝鮮戦争に於いては、旧ソ連の練習機である「ポリカールポフ Po-2」が北朝鮮に配備され主に夜間妨害爆撃で投入された。然したる戦果は挙げられなかったらしいが、夜間の追撃には米軍も頭を悩ましたそうだ。低速で低空で飛ぶ木製複葉機はレーダーで捕捉できず、迎撃に上がった戦闘機も捕捉できなかったそうだ。

今回の報道に在った機体はポリカールポフ Po-2では無く、ＡＮ２コルト機とされている。ＡＮ２コルト機はポーランド製の機体の名称で、機体設計は１９４７年？旧ソビエト・アントノフ設計局であり、旧ソ連では６０年代には製造を打ち切ったが、６０年代以降はトルコと中国でライセンス生産が続いていた。中華人民共和国製の機体は「石家荘 運輸５型（Ｙ－５）」と呼ばれる。

北朝鮮は、このＹ－５に木製プロペラやステルス性を増す翼断面を与えてステルス機と位置付けている。複葉機なので低速の安定性は秀逸で、２ｔのペイロードを抱えて時速５０Ｋｍ／ｈ（巡航180Km/h、最高250Km/h）で飛行する能力がある。北朝鮮が２００８年１０月黄海上でおこなった軍事訓練では、対艦ミサイル「シルクワーム」を改造した空対艦ミサイルをＹ－５の機上から発射した。シルクワームは、旧ソ連製Ｒ－１５をベースに中国で改良されたHY-2（海鷹（Hai-Ying）地対艦ミサイルで旧式である事は否めないが・・・弾頭重量がデカイので命中した際のダメージは深刻な筈だ。これを機上発射型に改良したのだろう。他にも爆撃用、軽攻撃用に特化したバリエーションが存在するらしい。木製複葉機とは、軍事の世界では１００年前のテクノロジーだが・・・、逆に近代戦では対処不能なのカモ知れない。低高度を時速５０Km/hで飛行するＹ－５改はともすればレーダー上ではトラックと見紛う可能性もあろう。又、航続距離は800Km程だが、帰投を前提にしなければ日本本土へも到来可能だ。空自の自動警戒管制組織（バッジシステム）では海面スレスレを低速で飛ぶ小標的への感知能力は低い。海自のMOFシステムとの連携運用で穴を埋められると思うが、自衛隊のC4Iシステムを木製複葉機での侵攻を想定した改変を行えば、日本海全域に展開する漁船ですらJADGEはアラートを発するだろう。

過去我が国は竹槍でムスタングに対抗する銃後の守りを固めていたが、近代兵器で木製複葉機を捕捉する新時代に突入したのカモ知れない。