Trips with my RV.

RVでの小旅行。

小泉改革は間違っていたのか?

2011-02-03 20:06:13 | Weblog
過去記事 「消費税値上げ目前?  2011-01-31 22:31:40 | 独り言」に、私が書いた・・・[尚、私の中では評価が高い小泉改革では、(もう少しで)国債利払いの為の国債発行を止める段階まで改革を進めたと評価している、]の部分か、匿名の方へのコメントリプライで私が書いた[格差社会を生んだ元凶として、小泉改革は以後の政治家皆さんの評判は悪い様ですが、綺麗事ではなく日本の実利を推し進めた改革だったと私だけは評価しています。やはり今でも、規制緩和からしかイノベーションは有り得ないと私は思っています。]の何れかが誤りだと「『痛みに耐えれば、明日はよくなる』と国民をだまし日本を格差社会にして、日本を財政破綻させた責任は重い」とお叱りを受けた。思う/思わないは、個人の勝手だとは思う。ネタにも困っているので小泉改革を再考したい。

小泉改革(聖域無き構造改革)は、後年の歴史家に評価を任せるべきだろうが、一旦は、自民党をぶっ潰すダケでは無く日本を(日本の旧来の)構造をぶっ潰しかけた。就任時に失業率は5%を越え、株価は急落、平均賃金も大幅に下がり、企業倒産件数が増大した。だが、任期中(及び、小泉予算の継続中)には、それらの指数は上昇した。失業率は4.2%まで戻し、株価も16000円台へ戻し、企業倒産件数も減少した。積み残しは、平均賃金の回復である。もし、断固たる覚悟で、以後の自民党政権が小泉改革を推し進めていればバブル後の戦後処理は終了したかも知れない(仮定の話だ)。

予算毎政策を受け継いだ安部政権は引き続き国家財政の回復基調を見たが、族議員等の激しい抵抗勢力に屈して退任した。その後の政権は族議員の言いなりに、市場原理を導入すると云った小泉政権の施策を破棄し、生産性を上げないで財政支出でインスタントに総需要を支える為、非効率な公共事業を続々と繰り出した。そして、官僚や族議員の既得権益はそのまま残り、国土交通省に代表される税金を食い物にする体質は解消されずに維持されたのだ。だから、「小泉改革が格差を拡大した」等というのは勘違いで、その傾向が、小泉以降の政権で高度成長期並に巻き戻された事が暗黒の「失われた20年」の直接の原因だ・・・と思う。

ちょっと、暗黒の「失われた20年」の原因を考えてみよう。

バブル崩壊・・・を振り返ると、それを引き起こした政府の歴史的失態に依って、崩壊後の20年間の暗黒期が到来したと云っても過言ではない・・・と思う。バブル経済とは、主に投機(将来の価格の変動を予想して、現在の価格との差額を利得する目的で行われる商品や有価証券などの売買)に依って、実体経済(金銭に対する具体的な対価がともなう経済活動)から大幅にかけ離れて資産価格が上昇する経済状況の事を云う。

その極大期には2700万円程で10年前に買った私のマンションは5~6000万円で買いたいと複数の不動産屋から持ち掛けられていた。土地の価格は下がらないと云う幻想に酔い、時価資産の資産価格が投機目的で高騰した。資産を持つ大部分の個人・法人で同じ様な現象が起き・・・実体経済での簿価より大きな資産を持つに至ったのだ。そして、その資産価格高騰が誘因となって、更なる投機を引き寄せた。

20年の公庫融資を受けてマンションを購入したが、私には時価額が残債程度で在れば何の問題もない。例え収入が途絶してもマンションを売却すれば残債の返済は可能だからだ。だが、バブル期には資産額が勝手に残債の3倍に達してしまう。土地の価格は下がらないと云う幻想から、我が家も少し金持ちになったんだ・・・と思ったモノである。個人なので勧誘は限られるが、それでも資産額が数千万円単位で増えた我が家にも銀行からの融資勧誘が来ていた。さりとて、融資を受けても買うモノが思い付かなかったので融資は受けなかった。その内に、銀行の外回り営業マンは、融資を受けた金で行う投資話を手土産に融資を薦めてきた。借入金利より利回りの良い金融商品を手に、不動産を担保に融資を持ち掛けるのだ。(結果論で云えば、その時点で短期間取り組んでいたら大きな収益を得ていただろうし、長期間取り組んでいたら返済不能の負債を抱えていただろう)

その時価資産価格の急騰が、帳簿上の資産(=実体価格)からの増加を要因として、今まで存在しなかった大きな借入枠を生む。そして、多くの個人法人が、新たに降って湧いた大きな借入枠を使って借金をして、更なる利益事業である投機に打って出た。アブク銭を使って新事業を展開したり、土地の価格は下がらないと云う幻想から不動産投機に突入する。しかし、この投機で上昇した時価資産は、新たな投機マネーの投入なくして持続不可能なのだ。

個人も法人も、勿論、政府も今日の状況が当に実体のないバブル経済である事は理解し始めた。何故なら、新たな投機マネーの投入が滞り始めたから・・・だ。バブル経済が破綻する時は、何時か?バブル経済に酔っていた全員がフッと我に返った頃になって政府がバブル経済の抑制策を急激に矢継ぎ早に実施し始めたのだ。時の総理大臣が誰だったかは書かないが、本来なら、極大期を迎える前(投機マネーの流入が滞る前)に緩やかなバブル抑止政策を小出しにしていけば良かった(カモ)。

他国でのバブル経済の例を見れば、株式バブルからスタートし先物売買等の証券バブル・・・と、その投機対象が変わっていく、その時々を捉えて、中央政府はバブル抑止を緩やかに実施していき、最終的なバブル崩壊での衝撃を弱める作業を行うベキだ・・・と思う。中央政府にはバブル崩壊は恐怖すべき事だが、バブル経済は税収増やGDP上昇に及ぼす好影響を捨て切れないのカモ知れない。「もう少し、もう少しだけ・・・と考えた?)尚、近代以降では各国でバブル経済は起こっていて、日本のバブル崩壊以前にも多くの国と地域でバブル崩壊は起きていた。但し、それらは株式投資から物資の先物取引と云った証券バブルが大半で、日本で起きた不動産バブルは人類史上初カモ知れない。(株式バブルの対処方法は、幾つかあり、沈静化の方策は判っている)

尚、何故、日本で不動産バブルが勃発したかだが、過去記事にも書いたと思うが、この日本のバブル経済のスタートは1980年の「プラザ合意」だろう。高インフレ対策としての金融引き締めの手段としての政策金利上昇が招いたドル高で巨大な貿易赤字に苦しんでいたアメリカはインフレ撲滅には成功したモノの貿易赤字が財政赤字に転嫁しつつあり、当時の貿易赤字の原因筆頭国であり(半属国の?)日本に対し円高ドル安を両国で誘導する合意をした。これがプラザ合意であり、当時240円/ドルが、合意1年後には150円/ドルへと円が急騰した。(約5割、日本円の対外価値が急騰した)この急速な円高で、貿易企業が不振となり「円高不況」が起きると懸念された為に低金利政策を断続運用した。この低金利政策が、金融市場での「金余り」を生み、その「行き所を失った金」が不動産への投機を加速した・・・のである。日本では株式投資が大衆の間に一般的では無かったので、人口密度世界一(当時)の国だから不動産バブルと成ったのだと思われる。(勿論、その当時から株式バブルもスタートしているが、多くの個人や法人を巻き込んでいくのは不動産バブルに陰りが見え始めた頃からだろう)

だから、現在の「失われた20年」の最大の要因は「プラザ合意」だ。その当時の日本は、現在の中国以上に輸出依存度の高い国だった。輸出依存の高度成長期の日本には輸出こそが需要創出だった、為替レートを意図的に調整して自国通貨を引き上げる事は、緩やかな自殺を意味する。中曽根康弘は・・・アメリカの赤字解消の為に日本を売ったのだ。その時点でのアメリカの圧力は強力だったのだろうから、誰が首相でも同じカモ知れない。だが、急激な円高を招かずに、日本の輸出企業の自助努力で対外競争力を維持できるギリギリのラインで徐々に円高へ段階的な協調介入をすべき・・・だった筈だ。毒を喰らわば皿までも・・・で一気呵成に円高にしたのは歴史上の大失政だ。

そして、不動産バブルが日本を席巻する。(その間も輸出企業は急激な円高に苦しみながら対外競争力の維持に邁進していた)それは既に書いた。そして、そのバブル経済への対処法が急激すぎたのだ。どうも日本の政治家と云う人種は、緩やかに行う・・・事が出来ないのだろうか?そして、泥沼の(バブル崩壊後の)戦後処理が始まる、

NIRA研究報告書 2011/1発行 総合研究開発機構 

上記URLは総合研究開発機構の報告書(pdf)である。その内容は・・・ 

%  その成果である本報告書は、日本経済の長期停滞の原因を解明し、経済成長を回復するために
% 有効と思われる政策を提示するため、
% ①1970年代以降に出現した様々な課題に対する適応の失敗、
% ②バブル崩壊後の1990年代における政策の失敗、
% ③構造改革を推進した小泉内閣の主要政策について評価を行うとともに、
% これにより明らかとなった教訓を踏まえて現政権が推進する「新成長戦略」の検証を行い、
% 日本が経済成長を回復するための政策転換のあり方について提言を行った。

である。小泉改革に付いて、そろそろ何だったかを忘れてしまいそうなので小泉改革のURLは以下。
小泉構造改革(首相官邸Web)
聖域なき構造改革(Wiki日本語版)

先程の「報告書」には、「不良債権処理の失敗(バブル崩壊で、帳簿上の大きな欠損金を抱え収益実態が失われた「ゾンビ企業」を、不適当な銀行監督で容認した銀行の「追い貸し」で無理矢理延命させた事で、生産性が低い企業が数多く生き残って日本経済全体の成長を押し止めた)」、「規制改革の遅れ(他の先進諸国では20年も前に実現させている規制改革が進まない)」、「財政運営の失敗(急激な経済の落ち込みに対して政府は生産性を上げないまま財政支出で総需要を支えようとしたため、非効率な公共事業が増えて財政を悪化させた)」事が失敗だと書いている。

小泉改革で上手くいったのは、不良債権処理で金融を健全化した事、財政支出を抑えて非効率な公共工事を取り止めた事だ。郵政民営化・道路公団民営化は民営化への道筋を示しただけ、労働市場改革で格差社会を生んだ、FTAの推進と農業改革は農業系族議員の猛反対で進展無し、規制改革は族議員と官僚との抵抗にあって殆ど進まず、地方財政改革は財源委譲の方法論の段階で地方からの反対で頓挫した。高度成長期から社会保障面で大きく後退したが、「負担に値する質の高いサービスを提供する小さな政府」として、国民の費用負担とサービス提供のバランスを回復した結果だろう。

全体として、総て道半ばではあったが、小泉政権では「失われた20年」の内で唯一成長率が大きく上がっているのだ。その功績の最大の理念は「官業への市場原理の導入」だろう。小さな負担では小さな行政サービス、中位の負担では中位のサービス、大きな負担では大きなサービスと云う限界を示し、小さな負担を求める声に応えた結果だ。「小泉改革が格差を拡大した」等と政治家の皆さんや大衆が言っているが、それは間違いで、後の政権で90年代風政策に巻き戻された事が停滞の原因だと思う。小泉改革での不都合が生じている理由は、改革が不徹底だから・・・と私は思っている。

総合研究開発機構の報告書は、親方日の丸機関の御用学者さんの報告書であり、現政権に遠慮する部分も在るだろうが・・・それを引き算せずに報告書を読んでも、現在の民主党の「新成長戦略」は実施する前から失敗が約束されている風に読める。現政権への遠慮を外せば・・・絶対犯してはならない過ちとなるのだろうか?民主党政権の「新成長戦略」の大部分は90年代型の産業政策で、21世紀の今日では日本の成長率を高める効果は全く期待できない。

「国外から輸入した原材料に加工を施し付加価値を付けて外国に輸出して利益を上げる」国だと私は小学校で習ったが、今や日本の外需依存度は先進国中最低レベルである。新幹線や原子力発電所等のインフラ輸出などの重商主義的な政策は外需依存への回帰願望に過ぎないし、観光立国なんかが経済に及ぼす影響等は僅かすぎる。もはや、日本が外需依存で需要創出を図る事は不可能だろう。これからは内需拡大を以て国を再興するしか無いのではないか?・・・と読める。

又・・・、余談だが・・・、報告書には、未だに「ゾンビ企業」が生き残っていて日本の生産性向上の足枷になっていると書かれていて・・・今後も第2第3のJALが登場する・・・可能性を示唆している。それは貴方の会社カモ知れないし、私の会社カモ知れない。


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「『夜間運転』は飲酒運転並... | トップ | 「公共サービスに市場原理っ... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2011-02-04 12:21:49
公共サービスに市場原理って・・・変だろ。
返信する
Re: Unknown (軽薄な店主)
2011-02-04 15:06:57
コメント有り難う御座います。

公共サービスに市場原理を導入するって、やはり変ですか?

今日のように公共サービスを提供する先が1つしか無いなら、市場原理自体が導入できません。ですが、もし、同じ公共サービスを提供する機関や施設が複数在ったらと云う仮定で考えてみて下さい。

文章を書くのが下手なので長く長くなってしまうので・・・今夜でもネタとして記事にしますので御容赦下さい。
返信する
Unknown (Roberts)
2011-02-05 11:55:43
小泉改革80%賛成、、

格差、、楽して生きたいのは人の常、、
世間、人のせいにするのは簡単、、

自助努力なしで サービス要求も変、、、

一人が社会に何を貢献できるか考えるべき、、
返信する
Re: Unknown (軽薄な店主)
2011-02-05 18:30:54
Robertsさん、コメント有り難う御座います。

一連の小泉改の全部に賛成出来る立場の人は少ないと思います。(当の小泉元首相でも100点満点とは云っていない)それが普通の話でしょう。

私は、何よりも不良債権問題の解決への道筋を付けた事・・・、そして、国家財政の回復への道筋を付けた事・・・、これらを増税無しで行った事を評価しています。

次の記事にも書きましたが、医療保障改革は、官僚だけ(役所だけ)の努力では総医療費の減額は不可能です。減額が出来ない旧来の構造を破壊しないまま増税や保険料増額で、目先の帳尻合わせをしようとしてきた小泉以前の自民党政権と、現在の民主党政権の方法では、消費税25%でも国家財政は回復しないと思うのです。

> 自助努力なしで サービス要求も変、、、

> 一人が社会に何を貢献できるか考えるべき、、

御意。
返信する

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事