膝の奥が痛い~膝蓋軟骨軟化症~その3

2014年12月18日 | 治療の話

お待たせしました!

今日は膝のお話完結編です。

もうどんな話だったか忘れた方はこちらからお読みください

膝の奥が痛い~膝蓋軟骨軟化症~

膝の奥が痛い~膝蓋軟骨軟化症~その2

 

さて、ようやく「膝の痛み」シリーズの完結編

初回は、「お腹の筋肉の働きの弱さ」が背景となって様々な故障に繋がって行くシナリオについてお話しました。

そして前回は、今回のAさんの膝の故障もその延長で、

解決の糸口が「腹筋を機能させる」ことにあるというところまでお話しました。

そして今回です。

 

私はAさんの膝の痛みの成り立ちをこう考えました。

 

○スタート:Aさんの腹筋群は足の運動の際に十分に骨盤を支えることができず、臀筋の働きも不十分な状態にある

→四頭筋は縮んだ位置で過緊張させられる・ハムストリングスは引き伸ばされながら過緊張させられる(どちらも過度な緊張状態でバランスする)

→膝のお皿と腿の骨(膝蓋大腿関節)との摩擦が強まる

→こうした状況に加え、腿に対する脛の向きが狂うと「膝のお皿と腿の骨」の接点が偏り、圧力が分散できなくなる

→膝蓋大腿関節が傷付いて「膝蓋軟骨軟化症」のでき上がり

 

脛と腿に生じる「ねじれ」については前回は書きませんでしたが、

脛の捻じれの背景もやはり骨盤を支えるお腹とお尻の筋肉の働きの悪さが関係してきます。

前回も書いた通り、臀筋の中でも「親分格」なのが大臀筋なんです。

この大臀筋は腿の骨を外に捩じる働きも持っています。

これが弱くなると、腿は股関節で軽く曲がり、内捻じりに回ってしまうわけです。

すると膝も軽く曲がりながらつま先をとり残して内に入ってきます。

この時点ですと、パッと見「X脚」ですね。

しかも、膝を軽く曲げたこの姿勢、

とっても膝の関節がグラつきやすく傷付きやすい位置なんです。

ちょっと寄り道しますが、

膝は伸ばしていると靭帯と骨同士がガチッ!と固定される構造を持っているんです。

上の写真の膝は関節が緩んでいる分、筋肉でしっかりと支えなくてはなりません。

でも、そもそも十分に筋力があればこうはなっていないわけで、

そうした方は往々にして筋肉による膝の支えも不十分…

 

すると身体は少しでも膝が故障しないようにと、膝を反らせた姿勢をつくります。

そう!前回お話した「反張膝」です!

←ちょっと上手く出来なかったけど、ご容赦ください。

面白いもので、今度はパッと見「O脚」になるんです。

これでグラついた膝を固定できた!いやー一件落着!

ではないんです。(^_^;)

膝蓋大腿軟骨軟化症の一般的な背景要因とされている「外旋した脛骨」つまり「ねじれた膝」のでき上がりなんです。

※同じくお腹とお尻の不十分な働きで、逆の(つまり内旋した脛骨)現象も起こります。

弱った大臀筋の働きを股関節を伸ばしてロックしたケースです。

上記の例はあくまで一例であることにご注意ください。

要は、機能的なアライメントの異常は身体の一部に生じた機能上のエラーをどう対処したかによるのです。

個々の条件により、その現れ方が変わります。

 

さて、Aさんのお膝の話に(ようやく)戻りましょう。

Aさんは痛みのためにしゃがむことが難しい状況でした。

『これは中の傷もまだ落ち着いていないかも…』

と思ったのですが、パテラコンプレッションテストという検査をしてみるとさほどの痛みもなく

どうやら内部の状態は炎症が落ち着いた慢性期にあるようでした。

しかし、Aさんは痛みのためにしゃがめない。

『検査結果のわりには痛みが強すぎるな…』

と訝しんだ私。

この一見不思議な結果に対しちょっとした仮説を立てました。

 

と、その前に「痛み」という感覚についてまた寄り道です。

私たちの身体は構造上耐えられる限界に近い刺激を受けると「痛み」という信号を脳に送ります。

つまり、壊れる前に「壊れそうな刺激」を感じた段階で痛みを感じるわけです。

そんなことあるのか?と思われた方は、関節技をかけられた時のことを思い出してください。

あ、関節技をかけられた経験がない方は近所の「柔術」のジムへ行ってみてください。

で、一言「アームバーをかけてください(*´ω`*)」とお願いしてみましょう。

きっとジムの先生は快く願いを聞いてくれるはずです。

技をかけられている瞬間は折れるかと思うほどの痛みが襲うでしょうが、

技を解いてもらった後には痛みが無い事に気が付くことでしょう。

これが壊れてなくても、「壊れそう」な程の力がかかってきた時に痛みは感じられているという実例です。

つまり、Aさんの膝の痛みは「新鮮なケガ」によるものではなく、

「しゃがむ」という動作がAさんの膝蓋大腿関節を取り巻く組織にとって「耐えられそうもない負荷」として受け取られていたと。

その結果、痛みを発していたと。

そうした可能性、これを考えたんです。

 

では、なぜ膝蓋大腿関節の圧力が高まってしまっていると考えたのか?

それは今までお話してきた通りAさんの姿勢から読み取ったんです。

ただ、姿勢だけでは筋肉の機能は分りません。

それを確認するにはどうしたらよいでしょう?

答えは簡単!

動いてもらうことです。 

具体的にはこんなことをしていただきました。

 

私「ちょっとしゃがめるところまでしゃがんでください。」

Aさん「う~、ここまでで痛いです(>_<)」

しゃがみきるにはあと40度程を残して痛みを訴えるAさん。

 

私「今の痛みの程度と曲がり具合を覚えておいてくださいね。」

手を入れる前の「痛みの程度」と「関節の可動性」をチェックしたわけです。

 

私「今度は膝を交互に腰まで上げてみてください。」

Aさん、素直に腿上げを交互に行います。

痛めていない側の膝は「スッ」と上がっているのに対し、

痛めた側の膝は「ノロリ」と重そうに上がります。

 

私「痛い側の脚、重く感じませんか?」

Aさん「はい(-_-;)」

 

お腹の筋肉の働きが悪いせいで骨盤を固定できない分、

股関節を曲げる筋肉をより大きく使わなくてはならないので「重く」感じられるんです。

 

ここまでを調べ、そこから派生する周囲の筋肉の緊張バランスの崩れがAさんの症状を説明するのに無理が無いことから

この膝を治すには「お腹の筋肉がしっかりと骨盤を支えられる状態を作ること」だ、と考えがまとまりました。


さて、ここまで頭がまとまったら今度は

お腹の筋肉を骨盤の支えにしっかりと参加させることで本当にAさんの膝に良い変化をもたらすか?

つまり仮説が正しいかを確かめなくてはなりません。

どっやって確かめたらいいのでしょうか?

答えは簡単!

お腹の力を取り戻すことでAさんの膝に良い変化が起きるかどうかを見ればいいんです。

そのために私はこんなことをしてみました。

 

私「ちょっとお尻の穴を締めて、下っ腹に力を込めてみてください。」

Aさん「え、どうやったら下っ腹に力が入るの???」

私「ビキニを着て立っている自分を想像してみてください。」

Aさん「あ、なるほど!」

イメージができたのかAさんの下腹部に力が入りました。

私「歯を食いしばって!! 腹叩きますからしっかり力入れておいてくださいよ!!!」

Aさん「え!?」

おどろくAさんのお腹を軽くポコポコ叩くこと10秒。

私「もう一度しゃがんでみてください」

 

何が何だか分からずにしゃがむAさん。

Aさん「あ、しゃがめる!」

あと少しで踵がお尻に着くぐらいまでしゃがめるようになりました。

痛みの程度の変化を聞くと、「まだぼんやりと残る」とのことでしたが1~2割程度に減ったとAさん。

どうやら仮説は正しかったようです。

 

やはりAさんの膝の痛みの原因は「新鮮な傷」としてのケガではなく、

腹筋の働きが不十分なことから端を発した、関節周囲の異常な筋バランスの悪戯、

つまり「機能障害」による痛みだったようです。

 

と、ここで 

『なんでお腹をたたいただけでそんなことが言えるのか?』

と疑問の声が聞こえてきそうなのでまたもや補足説明です。

 

筋肉は神経の命令で働いています。

その神経を上手に刺激すると働きを高めることができるんです。

この反応を「ファシリテーション(促通現象)」といい、リハビリの現場でよく使われるものなんです。 

その「ファシリテーション」、Aさんに行った手順になぞって解説します。

力を込めた上で叩かれたお腹の筋肉が「伸張反射」という反応を起こし「キュキュッ!」と縮みます。

その最中にお腹の筋肉とつながる神経たちは強く働くことを繰り返し、

ファシリテーションが起こります。

そうしてAさんの下腹部の筋肉は働きが高まり、骨盤をしっかりと支える力を発揮できるようになります。

(厳密には発揮できるようになる可能性があるということなのですが、省略します。)

すると、「腹筋の弱さ」に端を発していた周囲の筋の異常なバランス(二次的な異常)も正されてゆくことになります。

そうなれば当然、Aさんの膝を襲う痛みも動きの悪さも改善されるというわけなんです。

 

ふ~~~、長かった(-_-;)

 

さて、そろそろ話を〆なくてはなりませんね。

Aさんの身体の状態を俯瞰すると、骨盤が下肢の支えとして安定していないことが問題の始まりとなっていたわけです。

では、こうした場合、

膝だけを治療していて治るのでしょうか?

ただ漫然と治療を受けるだけで治るのでしょうか?

 

そう、そうじゃないんです!


身体は全体が一つのユニットとして働くといわれます。

ですから、患部だけではなく個々の部位の全体に対する相互的な影響を踏まえて治療を組み立てて行くことが大切です。

痛みを生む過剰な緊張の裏には、対になる「弱さ」も潜んでいるわけですから

患者さんの運動療法への積極的な取り組みも、場合によっては(多くの場合で、ですが)

故障からの回復にはとても重要な要件になるわけです。

故障が何年も長引くと、もうどうしようもないものとして諦めてしまうこともあるかもしれません。

でも、私たち治療家も含め、もっと視野を広げ、共に協力して治療に取り組めればればきっと解決の方法は見つかるはずです。

諦めずに、一緒に頑張りましょう。

=完=

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