アトピー性皮膚炎と姿勢の影響

2014年07月01日 | 治療の話

私の仕事の範疇は基本的には筋骨格系のトラブル

すなわち「整形外科的疾患」なのですが、

時折、というかしばしば!?

若干外れたご相談をお寄せ頂くことがあります。

その若干本来の守備範囲を外れた相談で多いのは「眼精疲労」や「便秘」、「不眠」といったところ。

でもこれらって、ばっちり徒手医学の適応なんですよ。

おっと、話を戻して…

次いで「アトピー性皮膚炎」「婦人科的疾患(産後のケアなど含め)」といったところです。

と、前振りをしつつ…

 

今日初めてご来院のAさんからお寄せいただいたのは「左手に強く出たアトピー」のご相談。

Aさん曰く

「全体のバランスを整えたらアトピーにも良いかなって思って(^^ゞ」

とのこと。

その希望に添えるかどうか、先ずは現状の確認から。

ということで、診察を始めました。

 

両手の全体がひび割れて見るからに痛そうです。

両手ともトラブルはあるのですが、確かに左の症状は際立ってひどい。

これに対して他はだいぶ良い状態です。

触れてみると、右手よりも左手の方が張りが強いようです。

これは傷による炎症もあるのですが、主には左手に生じた浮腫のためでした。

どこかで静脈やリンパの循環を邪魔しているところがあるのでしょう。

循環が悪いと組織の回復は遅れてしまいますので、

右よりも左の上肢の循環障害が強かったことが

「左手だけ強いアトピー症状」の背景に絡んでいると考えました。

さて、そうなると左上肢の循環を妨げているところを探して解放しなくてはなならないということになります。

ここまでで患部に対する治療の筋書きが見えてきたわけですが、

とはいえ身体は全体で一つの機能単位として働きます。

つまり色んなところから互いに影響し合っていますから、

患部だけをいじればOKと行かない場合もしばしば。

患部に無理を強いている要因も可能な限り手直ししたいところです。

それにはAさんの身体が「全体としてどんな状態におかれているのか」を把握しなくてはなりません。

そこで動作分析を行うわけです。

各項目をテストしてゆくと、Aさんの体重は左の脚に乗っていて、

姿勢は上半身が左へスライドして留まっている。

このような姿勢だと、おおくは右から押すと耐えられないものなんですが、Aさんはしっかりと耐えられます。

その意味するところは、

「左へとスライドする身体を止めるためにどこかが『とても強く』カウンターバランスをとっている」

ということでしょう。

で、こうしたケース(上体が左へスライドしている)では

だいたいは左の肩で止めているケースが多いんですね。

大きな関節周囲は血流やリンパ流の関所となりやすい場所です。

Aさんの左肩にそうした循環に影響しうる問題があったなら、

上半身を左へスライドさせている要因を解くことでAさんの左肩は

「無理に緊張しなくても良い状態」

を手に入れることが出来ます。

そうなれば、Aさんの左肩口の緊張は解消するか、少なくとも緩和が見込まれるわけです。

それでも足りなきゃ患部を攻めればいい。

でも、その逆は…

経験上堂々巡りになりやすいですね…

例えるなら、水漏れの穴をふさがずに漏れた水をひたすらふくような仕事になってしまいやすいんです。

そう、エンドレス!

そうなれば経営的には良いのでしょうが、

治療という分野の職人にとって満足ゆく仕事にはならないんですね。

 

さて、調べてみると案の定、左の小胸筋という筋肉の短縮が見つかりました。

この部位は腕へ行く動静脈の通り道であり、関所になりやすいところ。

そう、ビンゴです。

 

ここまできたら、あとは実際に治療をするだけです。

はじめに右への体重移動を拒む要素を洗いだし、解除しました。

もうちょっと詳しく書くと、

Aさんのケースでは左大腿筋膜張筋(股関節の外側の筋肉)が

腹斜筋と協力して右胸郭を引きこんでいました。

これが上体の左シフトの犯人です。

主犯格の緊張を解いたら、次についで右への体重移動に関与する

筋肉たちの働きを取りもどすための一手を打ちました。

これには「躯幹矯正法:くかんきょうせいほう」という技法を使わせて頂きました。

これは新潟の友人に教えてもらった技法なんですが、

脚の位置を定めて、軽く腕を引くだけで面白いように制限が取れたり

筋のバランスを変えられる優れモノ。

患者さんにも私にも身体の負担が軽いので、最近のお気に入りなんです。

ここでは上体を右に引き戻すのに本来使われる筋の力を取りもどすため

(筋のコントロールを取りもどし運動に参加させるという意味)に応用しました。

Aさんの場合、それだけで十分に左肩口の緊張は和らぎましたが、

たぶん固くなってから時間が立っているのでしょう。

小胸筋の部分には、線維化した組織の緊張が残ります。

そこで、小胸筋へ直接手を入れて変化をみることに。

緊張を除くと、左手の浮腫による張りは先ほどよりも軽くなっています。

一先ず循環障害は落ち着いたようです。

 

さて、あとはその後の変化やいかに、といったところ。

皮膚の回復には数日はかかりそうですから、それまで整った状況を維持したい。

そこでセルフケアを選択するわけです。

もちろん毎日通っていただいても良いんですが、それじゃ大変ですからね(笑)

自宅で行うセルフケアとして、

血管への圧迫(ここでは静脈)を起こしている小胸筋のストレッチという選択もあったのですが、

Aさんの小胸筋は上体の左へのずれに対するブレーキの役割をさせられているわけですから、

小胸筋が働かなくても良い状況を作る事を優先しました。

具体的には上体を左へとスライドさせる動力となっていた筋群、

さらにその親玉になっていた左大腿筋膜張筋のセルフスイッチバックをチョイスしました。

これで左の肩口を必要以上に固めずに済む(しっかりと右の脚にも乗れる)状況をしばらくは確保できるでしょう。

手の傷がふさがれば、痒みもだいぶ落ち着くはず(その理由はまた後日)です。

そこまで頑張ってくれることを祈りつつ、初回の治療は終了です。

 

私にとってはいつもの治療風景だったのですが、

よくよく考えてみると

『アトピー(による皮膚の障害)治すのに姿勢から考えるって、マニアックだな~(^_^;)』

と、なんだか頭に残ってしまい、

ブログにしたためた次第です。

 

<追伸>

実は、うちのハニーもアトピーには酷い目にあわされてきました。

妊娠中なんて身体中紫になってしまって、ほんと辛い日々を送っていました。

たいしたこともできず、手をこまねいていた私ですが、

あーでもない、こーでもないと手を重ねるうちに、

徒手医学的なアプローチで役立てる部分もあるなと気が付くまでにはなりまして…

お陰さまでいまは随分よくなって、ステロイドも使わなくなりました。

彼女の治療を通じて気が付いたことが、文中の

「筋骨格系の機能障害とそれによる循環傷害の皮膚の再生への影響そして関連」

です。

それだけで治るというものではありませんが、

それも回復への一翼を担えるというところで、記事に書いてみました。

他にも書き足りないところがあるのですが、今日はタイムアップ。

ここまでですね(^_^;)

また手が空いたら書こうと思います。

では。

 

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