ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、前国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

これはやばすぎる:日本の工学系論文数はすでに人口5千万の韓国に追い越されていた!!

2015年09月09日 | 高等教育

 更新がままならず、僕のブログは科学技術の「選択と集中」についての考察の最中でピタッと止まってしまっているのですが、この事実はやはり日本国民の皆さんに知っておいていただかいといけないと思い、キーボードに向かいました。

 この5月に国立大学協会に提出した報告書では、日本の学術論文数が惨憺たる状況になりつつあり(人口当り論文数の国際ランキングは35位以下)、その最大の要因は、大学の研究従事者数および研究時間が海外諸国に比べて少なく、かつ減少していること、そして、財務的には大学への基盤的な公的研究資金(特に国立大学への基盤的運営費交付金)の減少の影響が大きいことを示しました。

 僕の国大協への報告書は、8月24日のJBpressの記事「研究力が低迷、日本の大学がこのままではダメになる」でも取り上げられ、そこでは「豊田レポート」と名付けられています。

 「豊田レポート」では、学術分野別の論文数について、特に「工学系」の論文数が著しく減少していることをお示ししました。国際競争力が強く、今までがんばってきた分野ほど落ち込みが激しい。

 工学系の中でも「物質科学(matearials science)は、日本のお家芸的分野であったと思うのですが、その論文数が急速に減少し、そして、実は、人口5千万の韓国にすでに追い抜かれていたのです。2002年ころはアメリカと肩を並べて世界1,2を争っていましたが、その後急速に論文数が減少、韓国とインドに追い抜かれて、国別では第5位になってしまいました。


 それでも論文の「質」や「注目度」が上がれば、まだ救いがあるのですが、論文の被引用数(注目度の指標)の相対的な多さを示す「相対インパクト」でも、世界平均の「1」に至らず、韓国よりも低い値なのです。つまり、人口5千万の韓国の方が、論文の「数」においても「質」においても、人口が約2.5倍の日本よりも上回っている。


 それでは「物質科学(matearials science)」以外の分野ではどうでしょうか?トムソン・ロイターの「Essenntial Science Indicators」22分野別に、主要14カ国の2012-2014年3年間の平均論文数のランキングを調べてみました。

 韓国が最近急速に国際順位を上げた分野として「物質科学(matearials science)」(世界3位)、「エンジニアリング(engineering)」(世界4位)、「コンピュータ科学(computer science)」(世界4位)の3つがあり、いずれも日本を上回っています。

 また、「経済・経営学」および「社会科学」でも、日本を上回っています。

 



 「エンジニアリング」と「コンピュータ科学」の論文数のグラフも以下に掲げておきます。

 

 

 

 「コンピュータ科学」の論文数の推移については注意が必要です。2002~2006年の論文数については、その前後の論文数に比較して急峻な「山」があります。これは、おそらく、データベース管理者であるトムソン・ロイター側の、学術誌の取捨選択やキーワード検索の定義の変更などによる、人為的な原因によるものと考えられます。2007年以降のデータ(グラフでは2008年以降のデータ)を読んでいただければいいと思います。

 「コンピュータ科学」の論文数は、日本は人口5千万の韓国どころか、人口2千300万の台湾にも負けています。

 最後に、過去のブログでもお示ししてありますが、「物理学」および「全分野」の論文数のグラフも再度あげておきます。

 

 

 

 「物理学」や「全分野」では、まだ、日本の方が上回っているとは言っても、人口当り論文数を計算すれば、韓国の方が上回っていることを考えなければいけません。人口当り論文数で、日本が明確に韓国を上回っているのは、「地学」と「宇宙科学」、ほぼ同じ程度なのが「植物・動物学」と「神経学」であり、あとは、すべて韓国の方が上回っているのです。

 資源の少ない韓国は、教育研究に国の資源を投入し、研究分野では、特に「工学系」、その中でも、イノベーションやGDPに直結しうる分野に「選択と集中」したことが読み取れます。そして、人口が2.5倍の日本を凌駕しました。

 今まで、ややもすると日本企業は韓国企業に技術を取られたために負けたというような言われ方がされてきましたが、韓国は、研究の基盤力においても量的・質的にすでに日本を上回っており、日本が負けるのも当然と思われます。そして、今後、工学系の研究基盤力を高めない限り、日本が韓国に追いつくことは不可能であると思われます。

 また、最近インドの論文数ランキングが急速に上がっていることも注目されます。インドは、中国と同じように人口が多いので、論文数が増えるのも当たりまえといえば当たりまえなのですが、いよいよ世界のイノベーション競争に参入してきたということであり、日本の競争しなければならない相手がさらに増えたことになります。

 それにしても、日本の工学系論文数の急激な減少、つまり工学研究の基盤力の劣化は、尋常のカーブではありませんね。人口当りにすれば貧弱な日本の大学の研究規模をいっそう縮小するという、今の政府の科学技術政策がこのまま続けば、日本は早晩先進国から脱落し、二度と這い上がれないことが目に見えます。

 これ、すっごくやばくないですか?

 

 

 

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34 コメント

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Unknown (テツ)
2015-09-09 10:37:07
日本は理学の国になった、ということ?ですか?

こっちもどうせ抜かれるだろ、ってことですか?
Unknown (Unknown)
2015-09-09 11:18:45
インドが豊かになれば日本が貧しくなるって理由が
分からない
経済成長はゼロサムゲームではないので
Unknown (愚僧)
2015-09-09 12:12:32
>インドが豊かになれば日本が貧しくなるって理由が
>分からない

これは本文のどこに書いてあるのですか?
頭の悪い私に教えていただけないでしょうか?
当然の帰結 (taraba)
2015-09-09 13:16:17
実験系の研究では機材の購入、保守、また、冷媒、試薬などの購入ができなければ研究が成立しません。研究資金の増減が成果に非常に大きな影響を及ぼします。昨今、外部資金への依存度が高まって、研究費の使途の制約が増えた(外部資金は申請書に書いた計画に沿ってしか使えない)上に、その外部資金関連の書類作業や会合に持っていかれる時間が増えました。したがって、工学系の論文数が減ったのは当然の結果です。

それにしても、国際的な競争にさらされている研究の現場と、大半の官僚や政治家の意識との乖離があまりにも大きいように感じます。彼らには工学系の国際会議にでも参加して認識を新たにしてほしいところです。
せやな (みなこ)
2015-09-09 16:29:27
すごくやばいのは確かだね。
どうしたもんか。中村修二さんみたいに喧伝してくしか方法ってないもんかね。
でも老人延命に金使ってる国だからね。
Unknown (Unknown)
2015-09-09 17:30:52
研究者人口とか年齢層人口あたりでの比較があればもっとインパクトが出たり問題の根源が明瞭になったりしないかなと素人目に思いました。
なにこの馬鹿レポートw (Unknown)
2015-09-09 19:11:40
http://s.japanese.joins.com/article/242/194242.html

ハイ、論破w
Unknown (Unknown)
2015-09-09 20:49:41
グラフを見てみると,論文の総数が増加していることが分かる.
アメリカ,中国の割合が上昇しているのは,国際学会での比率以外にも国内の学会の数が増加していることの影響もあるはず.
インパクトファクターの大きい国際ジャーナル,国際学会における比率もみるべき.
Unknown ( )
2015-09-09 23:10:30
論文って、いい加減なのが多いから質とかも疑わしいけどね
小保方なんていい例でしょ?
学術論分 (原村)
2015-09-09 23:54:35
こんばんは。

質も量も韓国の後塵を拝していると記載されていますが、現実なんですか。
小保方さんの件は別格として、ネイチャーやサイエンスのような権威がある雑誌やスクリーニングの有る学会などで発表されるものが基礎データなのですか。
審査もない論文と権威のある学会での論文発表では業績件数比較は無意味かと。
しかし、出典が出典先ですから一つの指数ですね、。

また、以前より論文も書かない大学教授が終身雇用でその地位に付き続けているのも問題かと思います。
有能なオーバードクターが研究・教育に付けずにいる日本の大学(すべてとは言いませんが)にも問題が有ると思います。
有能な研究者が海外に出ていく日本の研究機関乃至は大学など教育機関にも問題が有るかと思います。
日本の大学で教授を全国公募して論文の質や研究内容を精査している大学がどれほどあるのでしょうか。
このような体質、論文も書かず教育にも熱を入れない大学教授が存在できるぬるま湯を正すべきかとおもいます。
グローバルにネットなどを通じて教育を受ける機会が広がって来た現代。
旧態依然の日本の教育制度&研究制度を改めねばなりないと、変わらないと思います。
的外れの所もあるかもしれません。
その点はご容赦のほど。
勉強もしない日本の大学教授に頭来ていますので横道にそれたかも。
Unknown (Unknown)
2015-09-10 05:24:10
他の方も指摘していますが、労働者人口に対する論文数の比較等、別の比較にすべきではないでしょうか?
総人口に対する論文数では高齢化の影響が大きく、正しい比較にならないのでは?
Unknown (Unknown)
2015-09-10 07:11:07
今日本がもらえてるノーベル賞は研究しやすかった過去の時代の遺産のようなもので仮にすぐに対策をとったとしても成果に反映してくるまでこの先しばらく暗黒期が続くような状況でしょうし、対策とらないままマスコミが取り上げてヤバイヤバイと一般人に宣伝し始めるほど問題が大きくなるころには完全に手遅れになってそうですから、懸念してし過ぎることはない問題だと思います。
Unknown (Unknown)
2015-09-10 11:37:48
>これは本文のどこに書いてあるのですか?
日本が貧乏になるとは書いていませんが
国際競争に負けて大変な事になると思っているので
日本の国際競争力低下の記事をよく書いているのだと思います。
その根本にあるのはどっかが豊かになると
どっかが貧しくなるのようなゼロサムの発想だと
思っております。
でないと日本の国際競争力が落ちて大変という発想は出てこないのでは?

また同様に日本はサービスを海外に売ってると書いてあってそれにも疑問があります。

企業とは違い国と国は別に競争してるわけでなく
日本が他の国に抜かれたからといって
何か不都合があるんでしょうか?

また日本は内需が8割を超えてる国であるので
サービスを外国に売ってお金を稼いでる訳でも
ありません。
というかグレッグマンキューが言っていますが
一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存しているのであり輸出で稼ぐみたいな重商主義で
豊かになった国は無いと思いますよ。

本筋とはあまり関係ありませんが
気になったので一応
Unknown (Unknown)
2015-09-10 11:45:31
上の続きですが
自分はブログ主様の言う事に全て反対という
訳ではなく
研究という物の性質上
選択と集中は愚かであり
広く浅くというのには賛成であります。

ただ何故そうなかったか?については多分
意見の相違があると思いますが…
自分は官僚も選択と集中で良くなるとは
思っていないのでは?と考えております。

ただ日本の社会保障費の伸びや
不景気による税収の伸び悩みを考慮すると
文教予算は削らざるをえない物であり
その中で結果を出せとなると選択と集中で
解決みたいなトンデモな結論になったのでは?
Unknown (Unknown)
2015-09-10 12:41:50
>また日本は内需が8割を超えてる国であるので
>サービスを外国に売ってお金を稼いでる訳でも
>ありません。

日本の基礎輸入額がどれくらいか知っていますか?資源の乏しい日本が外国にサービスを売れなくなってしまったら、生き残る術はありません。いい加減、内需神話から目を覚ましましょう。
問題だ (ぷー)
2015-09-10 13:03:44
下手な鉄砲も数打ちゃ当たる
たとえ質が低い論文が大部分だろうと、数が多いとそのうち質の高い研究も増えてくる
論文数が少ないこと自体問題だ
私も努力せねば
Unknown (Unknown)
2015-09-10 13:06:12
論文に限らず主にネット上の至る所で水準が低下しているように感じます。徹底的に分析していただきたい。

最近は、理論的にこうなのでこういう問題が予想されるとか、現状の背景にはこういう原因が推測される的な議論を全然見かけなくなり、何か起きた後に初めて説明されることしかなくなったように思います。あらゆる事柄でそうなのですが、例えばネットワークセキュリティなどに関してです。

単に、確実でないことを書くて叩かれることを心配しているということだったらまだいいのですが、優秀な方がみんな頭が悪くなる病気にでもかかったのかと思うほどです。
Unknown (Unknown)
2015-09-10 14:58:06
>日本の基礎輸入額がどれくらいか知っていますか?
内需神話って何でしょうか?
85%が内需なのに神話もクソもありません。
具体的にどこが神話なのでしょう?
日本が輸出で成長した
日本はものづくり大国という方が神話では?
(結構前から第3次産業が主流)

また貿易のみで発展する事もありません。
輸出>輸入で稼ぐという
重商主義は既に否定されています。
繰り返しますがマンキューの言う
↓が全てですよ。

一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存しているのです。
http://blog.goo.ne.jp/memo26/e/ccc9fabbbf4b665c2c480cc1c1ada0f5

ブログの話題とはだいぶ脱線してしまって
申し訳ありません。
Unknown (Unknown)
2015-09-10 15:53:09
>85%が内需なのに神話もクソもありません。
>具体的にどこが神話なのでしょう?

それは現状の話ですよね。そこに至る上で日本のものづくりの力が不必要だったとでも?
内需に頼ることができるのは、過去の遺産があるからですよ。で、ものづくりの力が低下した日本がこの現状を維持できますかね?
Unknown (Unknown)
2015-09-10 16:11:03
>繰り返しますがマンキューの言う
>↓が全てですよ。

リンク先を読みましたが、あなたのコメントとは随分食い違っていますよね。生産性の向上に貢献しているのは、紛れもなく科学技術の発展です。科学技術の発展は、輸出産業を成長させると同時に国内の設備やインフラにも反映されて、それが生産性の向上につながっているわけです。その部分で、日本の優位性が失われたら、日本の将来の生産性はどうなってしまうんですか?
Unknown (Unknown)
2015-09-10 17:33:17
>あなたのコメントとは随分食い違っていますよね
どこがでしょうか?

>そこに至る上で日本のものづくりの力が不必要だったとでも?

こんな事も言っていません。
現状ものづくり大国でもないのに
そういう事が言われたり
輸出で高度経済成長したわけでもないのに
輸出主導のような事を言われてる事に対してです。
なぜ極論に走るのでしょうか?


>生産性の向上に貢献しているのは
 紛れもなく科学技術の発展

リンク先にこんな事は書いてないと思いますが?
具体的にどこでしょう

また私は科学技術が不要とは一言も言っていません
他の国よりリードする事が大事という事に対して
おかしいのでは?と言っているのです。
それから貿易で稼ぐというのもです。
ただイノベーション=科学技術ではないです。
他の要因も同様に大事ではあると思っています。


吉川 智教『イノベーションとは―技術革新という訳は誤訳―』早稲田大学オピニオンno.58

…21世紀の高度に経済が発達した先進国の日本で、未だに、イノベーションに技術革新という訳が使われていることに私は、当惑を覚えます。なぜならば、技術革新以外にも、イノベーション、革新は存在するからです。もしも、イノベーションを技術革新としか考えないとすると、これは、大変にミスリーディングなことと言わざるを得ません。このミスリーディングな誤訳が現在の日本の経済にも大きく影響を与えているのではないか、と思います。
 イノベーションとは、そもそも、人々に新しい価値をもたらす行為です。その目的を達成するためには、科学的な進歩が必要なこともあれば、既存の製品とは異なった新製品開発が必要な場合もあるし、経営システムの革新が必要な場合もあるし、販売や制度的な革新が必要なこともあります。
Unknown (Unknown)
2015-09-10 19:35:35
英語力と数学の能力が他国より低いという問題があるのではないでしょうか。

英語の最新の論文や書籍をなかなか読めない(読まない)とか論文の文章を書くのに苦労するとか、研究を行うのに必要な数学の能力が高くなっているのにキャッチアップできないということがあるのではと思います。
Unknown (Unknown)
2015-09-10 21:58:57
問題となっているブログには
>生産性が生活水準の基本的決定要因で、生活水準を向上させるには、
>・労働者がよく教育されていること、
>・財・サービスを生産するのに必要な道具をもっていること、
>・最高の生産技術を利用することができること、
と書いてありました。
必要な道具を買うならお金が必要で、つくるならエネルギーや資源を買うお金が必要ですね。
最高の生産技術を利用するならその技術を買う必要があるし、自分たちで研究して得るならそれこそ科学技術が必要です。
しかも最高なのですから他国よりリードする必要がありますね。

>他の国よりリードする事が大事という事に対しておかしいのでは?
>他の国に抜かれたからといって何か不都合があるんでしょうか
という意見がありましたが、不都合があるようですね。
Unknown (Unknown)
2015-09-11 12:56:20
>最高の生産技術を利用するならその技術を買う必要があるし、自分たちで研究して得るならそれこそ科学技術が必要です。
しかも最高なのですから他国よりリードする必要がありますね。

これも間違いです。
高度経済成長期も自国の技術ではなく
他国の物を取り入れる事で成長しました。
http://blog-imgs-34.fc2.com/a/b/c/abc60w/201107011624091db.jpg


またイノベーションは科学技術だけではありません
科学技術も大事ですが他も大事なのです。
あなたはそこらへんが理解できていないと思います

これ以上は話題が逸れるので遠慮しておきます。


Unknown (Unknown)
2015-09-11 13:02:33
【俗説】

世界市場で競争している企業のように国家も競争している。

アメリカ企業が海外でうまく販売できていないためアメリカ経済に問題がある(例えば、賃金が低迷している)。例えば、アメリカの非熟練労働者の賃金は、発展途上国との競争の影響を受け低下している。同じ仕事をよりやすい賃金で引き受ける労働者がいるためだ。


【クルーグマンの批判】

●国際競争力はアメリカ経済の問題(国民の生活水準)と関係がない

企業と国は異なる。第一に国の貿易に依存する割合は小さい。GNPのうち輸出は10%しかない。GNPのうち途上国との貿易は1%しかない。第二に貿易の場合、互いに競合する製品を売っているが互いに相手国の製品の市場になっている。相手国の生産性が向上すれば、相手国の高品質・安価な製品が買えて自国にとってもプラスになる。第三に相手国の生産性が向上すれば、賃金が上昇し、途上国の購買力が上がり輸入するようになる。歴史的にみて、生産性が向上した分、賃金が上昇しなかった例はひとつもない。

企業の競争力とは異なり国の競争力は定義が難しい。企業の競争力は明確に定義できる。企業の競争力が高いとは(1)品質が高い(2)価格が低いことである。競争は主に一国の企業どうしで行われている。

以上から国際競争力の国民生活への影響は、マイナスがプラスを大きく上回るとは考えられない。国際経済はフィードバックの関係が複雑に絡み合うシステムである。国の経済は部分の寄せ集めではない。企業の国際競争の事例を集めても国の経済の相互作用は見えてこない。影響がマイナスまたはプラスの一方向だけに表れる単純な関係にはない。国際経済は全般に均衡に向かう傾向をもつ。

貿易はゼロサムゲームではない。ノーベル経済学賞受賞者(1979年)のウィリアム・アーサー・ルイスは発展途上国の生産性向上が先進国の賃金にプラスにもマイナスにも影響しうることを示している。

国際競争力を国民の生活水準と同視できない。国民の生活水準は国内の生産性の伸び率によって決まるため。もし同視すると国際競争力は生産性の言い換えになり国際競争と関係なくなる。

生産性は極めて複雑な要因によって決まり政府がどのような政策をとろうが影響を与えられないものだ。

●俗説に魅力を感じる理由

分かりやすいため。

政策の正当化や回避の根拠として利用しやすいため。

●俗説を信じることの弊害

国際競争力を高めるための政策に無駄な資金が使われる。保護主義を招く。政策に歪みが生じる。

●国際競争が賃金低下を招く要因

確かに途上国の賃金上昇は先進国の輸入品の価格上昇を招き、輸入品の価格上昇は賃金低下を招く。しかし途上国との貿易は小さいため影響は大きくない。

確かに先進国の企業から投資を自国から途上国へ移した場合、先進国の生産性と賃金は低下する。しかし先進国から途上国への投資額は小さい。

また以下の恒等式から「投資>貯蓄」と「輸出>輸入」は両立しないことが分かる。

貯蓄-投資=輸出-輸入

調べるとこの恒等式は以下の二つの恒等式から導かれるようだ。

所得=消費+投資+輸出-輸入

所得-消費=貯蓄

●所得の分配

所得の分配と国民の生活水準は別問題である。

国際競争力は(国民の生活水準には影響を与えないが)所得の分配には影響を与える。国として影響がなくても(プラス・マイナスの影響が拮抗しても)、特定の分野に限ってみれば国際競争の勝者と敗者が生まれる。

例えば、発展途上国との競争でアメリカの非熟練労働者が供給過剰になり賃金低下することはある。しかし途上国との貿易は小さい(1%)ため影響は大きくない。

俗説は特定の利益の隠れ蓑に使われることが少なくない。また経済学者は<調整>のコストを無視していることが多い。

●比較優位

ある国が他の国よりすべての財について生産性が低いとする(絶対優位にある製品がない)。それでもある国はある財を輸出できる。ある国は生産性の差が最も小さい財を輸出できる(比較優位にある製品がある)。

比較優位は外部経済によって生まれることが多い。よって外部経済を達成している先進国に途上国が追いつくには政府が産業政策を行うしなかないという発想が生まれる。これは理論的には正しいが現実には特定の利益集団により悪用されることがある。


長い引用ですがあなたは比較優位も勉強したほうが
良いと思います。
Unknown (Unknown)
2015-09-12 03:19:47
私が書き込む前に他の方も書き込まれたようです。

>またイノベーションは科学技術だけではありませ ん 科学技術も大事ですが他も大事なのです。 あなたはそこらへんが理解できていないと思いま す

確かに科学技術だけでイノベーションを構成できない場合も多いとは思いますが、そうであったとしても、多くの場合において科学技術はイノベーションの「必要条件」になっています。他の要因は必要な場合もそうでない場合もあります。

それから重要な論点が抜けています。それは米国と違って日本は資源に乏しいということです。最初にGDPではなくて基礎輸入の話をしたのもそのためです。
Unknown (Unknown)
2015-09-12 20:00:17
これがすべてです。といって
http://blog.goo.ne.jp/memo26/e/ccc9fabbbf4b665c2c480cc1c1ada0f5
というブログを紹介しておきながら、
どこからともなく他の文献から図を引っ張ってきて一方的に自分の正当性を主張するっておかしいですよね。
紹介したブログが全然すべてじゃない。
変なの。
Unknown (Unknown)
2015-09-13 00:35:22
そうそう。ひとつ大事なことを忘れてました。これは工学分野にいる人間として言っておかなければなりません。経済の理論をブンブン振り回している方にです。あなたはとても高い場所から日本の経済を俯瞰されているようですが、工学分野からは相当遠いところにおられるようですね。生産性が画期的なイノベーション一発で向上するかのようなナイーブな理解をお持ちのようにお見受けしましたが、工学分野の発展というのは無数の細かな、しかし実証的で実践的な進歩の積み重ねで成り立っているんですよね。それが、日本の生産現場を支えている現実です。突然、競争のルールを変更して一気にイノベーションを産み出す米国とは発展のモデルが根本的に違ってるんですよね。

日本には米国式の発展のモデルは今後も期待できないので、従来通り地道で堅実な技術の発展を促して行かなければ持続的な生産性の向上は望めない。それなのに、論文数が悲惨な状況になっている。だから問題だと言うことなんですよ。しかも何度も言いますが資源に乏しいので、基礎輸入分は何としても稼いで行かなければ生きていけない。GDPの増減以上に深刻な問題なんです。

難しい経済理論の教科書を勉強することも悪いとは言いませんが、身の回りの無数の小さな現実を無視して意味ある結論を導き出せるとは到底思えませんね。
Unknown (Unknown)
2015-09-16 10:50:19
私もリフレ関係含めて経済学関連の論評はそこそこ読んできた方だと思いますが、上の通りすがりの方が仰っているように結局のところ我々の生活というのは細かな努力と実際の作業の積み重ねで成り立っているのであり、資金調達を含めた量が質に直結すると思うようになりました。韓国や中印の論文数は確かに水増し的なところも多いのだろうとは思いますが、日本国内だけでも高等教育そのものが役に立たない穀潰しだみたいな風潮は嘆かわしい。人文系の衰退も深刻でしょう。
Unknown (Unknown)
2015-10-27 22:41:14
ユトリ教育の成果がバッチリ出ていますね
軽量教育世代が現役研究者になり始めた時期と下降線を辿り始めた時期がピッタリ重なります
Unknown (Unknown)
2016-03-20 05:31:45
2006年がターニングポイントであるとはっきり解りますね
日本でその年に何があったんでしょうね?
日本の工学 (しまえなが)
2016-04-06 16:22:57
そもそも、日本の工学技術力は論文に支えられたものなんでしょうか。大学院を拡充した頃から日本の経済は低迷し続けていますが…
Unknown (マクロ観点)
2016-04-13 09:20:43
マクロな観点では論文数と工業技術力の相関があることから、論文数が多いことは工業技術力に結びつくという考察はあながち間違ったものではない おそらく正しい もちろん結果である可能性はあるが
Unknown (科学全体の地盤が低下している)
2016-04-13 09:24:49
文科省は第二グループ大学が低いことから第二グループの底上げをするためにランク付けをして第二グループを支援するとしているが
そもそもその考察が根本から間違っている 第二グループではなくて日本の科学全体が下がっているのだよ それに第二グループに財政的支援をしたら底上げするというエビデンスはない むしろあぐらをかいて競争が阻害されますます低下するのではないか エビデンス欠如だらけの政策 アメリカを見習ってエビデンスに基づいた政策、競争制度の確立を

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