とやま新聞童話

富山新聞に掲載された山口弘信作成の童話です。

イノシシの掘り当てた不思議の水

2017-07-17 00:03:50 | 童話

平成27年12月10日 富山新聞掲載

 

 

イノシシの掘り当てた不思議の水

 

 

ある山あいの里に、とっても親切なお爺さんとお婆さんが住んでいました。

ある晴れた日に、二人が裏山へ山菜を採りに出かけました。竹やぶの中から、クィーン・クィーンという鳴き声が聞こえました。

なんだろうと思い、そっとのぞいてみると、小さなイノシシの子供が、足から血を流してうずくまっていました。古い割れた竹に足を挟み、怪我をしたようです。

かわいそうに思った二人は、そっと子イノシシを持ち上げ、家につれて帰りました。

傷口を消毒し、ブラブラしていた足に木を添え、包帯を巻いて、哺乳ビンでミルクを与えました。はじめは、辛そうにして、ジッとしていた子イノシシも、一週間もすると、やや元気を取りもどし、添え木をしたまま、家の中を、よたよたと歩き始めました。

二週間もすると、すっかり元気になったので、包帯をはずしました。食事も二人と同じものを、食べるようになっていました。

山に行くときや、畑での仕事に行くときは、一緒に連れて行き、放していました。

しかし、子イノシシは、二人から遠くに離れることはなく、家に帰るときには、走ってきてチョコチョコとついて来るのでした。

それから、一年がたち、子イノシシは、立派な若イノシシに成長しました。

いつもと同じように、裏山に山菜をつみに行ったとき、若イノシシは、さかんに辺りに鼻をこすりつけ、匂いをかいでいるのです。 

そのうち、一箇所にねらいを定めて、前足で穴を掘りはじめました。穴はしだいに大きく、深くなってゆき、水が湧き出てきました。

「あれまー、こんなところに穴を掘って、どうしたんだい」と、二人は若イノシシに話しかけていました。「グウ・グウ・グウ」と若イノシシは、答えましたが、二人には何のことかさっぱり分かりませんでした。

その日は、若イノシシは二人を見送るように、その場に立ち止まっていました。

「イノちゃん、もう帰りますよ」と声をかけました。「おや、今日は、イノちゃんは付いてきませんね、どうしたんでしょうね」と言いながら、家に帰りました。夜遅くなっても、若イノシシは、帰ってきませんでした。

その夜、二人は同時に同じ夢を見ました。山の神様があらわれ、「イノシシを助けてくれてありがとう、そのお礼に、今日の水をあなたたちに、さしあげます。この水は、ひふに傷があれば、つけてもよいし、お腹の調子が悪ければ、飲んでもよいし、お風呂として利用すれば、全身の健康に効果があります。」というものでした。

朝になって、昨日の湧き水を見に行くと、水は静かに、湧き続けていました。

二人は、そこから自宅までその水を引き、お風呂場を作り、村の人々に開放しました。  

皮膚の病気や傷に効果のあるお風呂として評判になり、遠くの村からも多数の人々がやってくるようになりました。

この不思議な水について、最近、成分を分析したところ、消毒薬のホウ酸が含まれていることが判りました。

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