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IP電話で誤算、富士通のPBXユーザーは草刈場か

2004-09-03 20:36:58 | ITビジネス
 富士通が、IP電話市場で全く存在感が出せない。SIPサーバー、あるいはIP-PBXといったハード製品が全くダメで、富士通系のPBX販社はアバイアやシスコの米国製品をPBXのリプレース商戦で提案している始末。競合他社からは「富士通ユーザーは草刈場」といった声も聞こえてくる。

 IP電話のシステムは単にPBXを置き変えるだけではない。基幹業務システムやグループウエアなどと連携することで、新しいソリューションの可能性が開けている。つまり、通信機器メーカー富士通としてだけでなく、コンピュータ・メーカー富士通としても極めて重要な商材であるはずだ。現にNECや沖電気、日立製作所は、IT・通信融合の戦略商品としてSIPサーバーなどのラインナップを強化している。

 旧・電電4姉妹のうち、富士通だけがなぜこんなことになってしまったのか。明らかに戦略ミスだろう。富士通はPBX事業に見切りをつけたのか、マーケティング機能も含め子会社に切り離してしまった。IP化により音声通話をリアルタイム・コミュニケーションのためのアプリケーションとして情報システムに組み込もうという流れが始まっている時期に、この判断ミスは痛い。

 富士通本体でIP電話のセントレックス・サービスを手掛けているとはいえ、メーカーとして存在感が希薄になってはしょうがないだろう。「もはやコアコンピタンスではない」と割り切って、ハード開発から撤退し、IP電話関連はIBMのように他社とのアライアンスでやっていくというのなら、それは一つの見識だ。だが、今の状態はあまりにも中途半端だ。

 富士通は一刻も早く、IP電話のハード事業について強化するか、提携戦略に切り替えるかを選ぶべきだろう。中途半端な総合力では結局市場から相手にされないことは、今までの経験で学んだはずだ。巨大なユビキタス市場の入り口の1つに間違いなくなるはずのIP電話分野で、富士通が脱落しないことを祈る。