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僕と妻の1778の物語


監督 星護
出演 草剛、竹内結子、谷原章介、吉瀬美智子、風吹ジュン

 この映画は実話を元に作られている。ただし、当然ながら登場人物は架空の人物だ。原作(というのかな)者の眉村さんは草演じる牧村朔太郎のモデルではない。竹内の節子は悦子さんがモデルでもない。同期のSF作家ということで、滝沢は筒井康隆に当たるかと思うが、筒井さんは滝沢のモデルでもない。話も実話をそのまま映画化したものではない。だからフィクションではあるのだから、純粋に映画としてみればいいのだが、つい感情移入が強くなってしまった。
 眉村さんとは長年、ご厚誼を頂いているし、奥さまの悦子さんもご自宅にお邪魔したおり、何度もお会いした。また、ガン闘病中の悦子さんに眉村さんが1日1本のショートショートを書いておられることも知っていた。だからつい、これは現実ではないと思いつつも、つい映画と実際の比較してしまう。
 ご夫婦が高校の同級生だったのは本当。悦子さんが銀行員だったのも本当。眉村さんのご自宅は大阪、現実のSF雑誌SFマガジンの発行元の早川書房は東京。映画のように頻繁に編集者に原稿を手渡してはいないはず。眉村さんデビュー当時のSFマガジンの編集長は福島正実氏。福島氏は映画の新美のように優しくないはず。福島氏は「SFの鬼」と呼ばれて大変に厳しい人だったと聞く。闘病中、夫婦で旅行にいったのは本当だが、行き先はイギリスで、映画のように北海道ではない。
 と、まあこんなことを書き連ねてもヤボなだけだが、映画の出来は非常に良く、上記のごとき小生の重箱隅つつきは、問題にならず魅せられてしまった。映画のジャンルとしては、いわゆる「難病もの」映画だ。しかし、難病もの、特に邦画の難病ものにありがちな愁嘆場が少なく、強引に観客を泣かせようとはしていない。全体に軽やかで、ファンタジックな感じに仕上がっている。
 お話はシンプル。妻がガンで余命1年と宣告されたSF作家牧村朔太郎は、自分の無力を嘆く。主治医に「笑うと免疫力が高まることがある」といわれて、作家として自分にできることは小説を書くことだ。妻を励ますため、クスッと笑えるような小説を毎日書いていこう。妻に読まそう。妻の命を一日でも長らえるために。こうして朔太郎は1日1編3枚以上の小説を書き始めた。それは妻が亡くなり遺体が自宅に帰ってきてからも書いた。1778編のショートショートとなった。余命1年の妻は5年生きた。
 ところどころ、朔太郎が書いているショートショートが映像化されている。これが効果的で、難病映画にありがち陰鬱さを和らげている。このショートショートは実際に眉村さんが書いた1778編の内の作品。これが眉村SFのイメージがよく表現されている。
 シナリオは非常に良く出来ている。主たる登場人物は病人の妻と作家の夫。映像としてベッドで寝てるか、原稿を書いているかだ。そのままを映画にしても観ていて面白くない。それを飽きさせずみせられたのはシナリオの力だろう。星監督の演出も悪くはないが、2ヶ所ちょっと演出過剰な個所があった。
 朔太郎が灯の消えた病院の廊下で、窓から差し込む月の光で原稿を書いている。それを暗闇の中から掃除のおじさんや患者たちが見ている。宗教画のようだ。朔太郎が病院の食堂で原稿を書いていると、事情を知った人たちがおにぎりやお菓子を置いていく。不自然な感じを受けた。
 草の演技は悪くない。節子の臨終の場面の演技は良かった。ただ、夢見がちで少々ボーとしたキャラクター設定だが、小生も長年のSF者で、何人かのSF作家を知っているが、ボーとした夢見がちなSF作家は知らない。小生の知っている範囲ではSF作家は才気煥発なタイプの人が多い。でも、ま、この映画の世界ではボーとしたSF作家もいるのだろう。
 竹内の演技が見事であった。竹内結子、きれいなだけの女優さんではないな。映画の後半はほとんどベッドに寝ているだけの演技だが、顔の表情だけで演技をしている。元気であったのが、抗癌剤が効かなくなり、だんだん重篤になっていくのを上手く表現していた。ただ、惜しむらくは、死病に冒された節子の内面がもう少し演技で表現できていれば完璧であった。
 最終話1778話目ををどう映像化するか興味があった。なるほど、こうしたか。見事な演出であった。この演出によって、朔太郎の節子に対する想いが非常によく判る。
 それにしても毎日ショートショートを書くということはいかに大変か。小生もショートショートを書くが、今は月に2本書くのがやっと。チャチャヤング当時の若いころは週に1本書いていたが。それを毎日。まさに比叡山の千日回峰どころではない苦行だと思う。その苦行ぶりはよく描かれていた。
 エンドロールの最後に「眉村卓・悦子ご夫妻に捧ぐ」と献辞が出た時は、少しホロッとした。
 
 
コメント ( 2 ) | Trackback ( 15 )
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コメント
 
 
 
Unknown (@Rin)
2011-01-19 20:04:41
映画に愛が満ちていました
レビューにも愛があります

1778回目、ほんとによかったです
わたしはずっと涙腺緩みっぱなしでした
 
 
 
@Rinさん (雫石鉄也)
2011-01-19 21:38:20
愛し合った夫婦の物語であると同時に、モノ書きとしての、プライド、執念の映画でもありましたね。
モノを書くということは、こんなにしんどいことなんですね。
 
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