11月１６日（金） ゼロをせっせとマイナスにしている

　リストラのあと９ヶ月だけ契約社員として勤務していた会社。江戸時代から続く薬の製造販売の会社で社長ではなくご当主と呼ばせているような会社だが、その当主は詩吟が趣味で社員にも強制していた。毎週火曜日、社員を集めて詩吟をうならせていた。
　このおっさんは詩吟が好きだから、詩吟に好感を持ってもらう人を増やしたいわけだろう。つまり詩吟に対してプラスのベクトルを増やしたいはずだ。
小生はそれまで詩吟なんてもんは全く無関心。つまりプラスでもマイナスでもないゼロだったわけ。ところが、やりたくもないのに無理やりやらされたから、すっかり詩吟が嫌いになった。同僚に聞くとやりたくないがクビになるのが恐くてイヤイヤやっている人がほとんど。おっさんは詩吟のベクトルの総和をプラスにしたいのにせっせとマイナスを増やしている。社員に強制しなければゼロなのに。
　知人の息子さんは兵庫県の野球で有名な私立高校に通っている。その高校は江戸時代の有名な農業コンサルタントで、荷物を背負って歩きながら本を読んでいるという危険なことをしている人物を顕彰している。その高校では、そのコンサルタントに関する授業があり試験まであるそうな。学校のカリキュラムの一端だからイヤでも勉強しなくてはだめだ。で、その息子さん、それまでそんな人物のことは知らなかったけれど、その高校に入学して無理やり勉強させられるので、今ではそんな人物大嫌いになったとか。ここでもゼロをせっせとマイナスにしている。
　ひとりよがりとは恐ろしいものだ。なにごとも自分を客観的に観察して、自分の言動を他人がどう思うかよく考える必要がある。価値観はひとそれぞれ。自分がいかに素晴らしいものだと思っていても、人にとっては塵芥と変わらないものがある。またその逆も。
　自分の価値観を人に押しつけず、人の価値観を尊重する。多種多様な価値観が百花繚乱に咲き乱れる。これでこそ真に自由で豊穣なる社会というものではないだろうか。