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とつぜんコラム №194 必要なコストはかけるべきだ

 1999年、日産は深刻な経営危機におちいっていた。そんな時、フランスからやってきたのが、カルロス・ゴーンだ。
 ゴーンは辣腕をふるって、わずか1年で、日産の業績をV字回復された。この時は、多くの人がゴーンの手腕をほめた。
「コストカッター」ゴーンは徹底した合理化と経費節減を行った。その結果が、驚異的な業績のV字回復となってあらわれた。もちろん、大幅な人員削減が行われ、日産社内ではリストラの嵐が吹き荒れたことだろう。
 このことによってゴーンは超一流の経営者と見なされていたが、実は彼は超一流どころか、経営者としては三流の経営者であったのだ。化けの皮がはがれ馬脚をあらわしたのである。今、日産はゴーンの愚行の深刻な後遺症に苦しめられている。
 日産は完成車の検査を無資格者が行っていた問題で、大いに信用を失墜させている。これはゴーンの「コストカッター」のつけが今になって回ってきたのだ。極端なリストラによって、完成車の検査担当となるべき有資格者は大幅に減って、無資格者検査という製造業としては絶対にやってはいけないことをやってしまったわけだ。こういうことをやって日産の業績を回復させたゴーンを上等の経営者であると褒め称えるのは、まことに笑止である。かれは多くの労働者を路頭に迷わせ、その上会社の信用を大きくおとしめた、三流の経営者にすぎなかった。
「コスト削減」「経費節減」企業の業績を上げるためには、金科玉条のようにいわれているが、かようなことをやっても、一時は業績が上向くかもしれないが、どこか無理をしているわけで、かならず目に見えない弊害を発生させているわけ。潜伏期間を経て必ず発病するのである。このたびの日産の件はその証左である。
 必要なコストは必ず必要なのである。かけなくてはいけない経費はかけなくてはいけない。いてもらわなくてはいけない人には、絶対にそこにいてもらわなければダメだ。
 会社の業績が落ちた。やれコスト削減だ経費節減だ人減らしリストラだ、 と、無理して不自然なことをして多くの人を泣かせて法令に違反して、業績が回復したとしても、天網恢恢疎にして漏らさず、必ず、その報いは来るのである。
 日産だけではない。スバル、神戸製鋼、三菱マテリアル、東レなど日本を代表する製造業のズルが続々とあらわになる。高度成長経済だ、バブルだ、ジャパン・アズ・ナンバーワンだと、かっては日本の製造業は世界に冠たる産業であった。そのころは、かなりムリをして会社を動かし利潤を上げ、売り上げを伸ばしてきたのだろう。イケイケドンドンの時代なら、勢いと間で、突っ走ることもできただろう。しかし、今は違う。日本の後塵を拝していた中国、韓国といって国々の製造業が、完全に日本を追い抜き世界のトップグループを形成している。液晶技術では世界一だったシャープが台湾の企業の軍門に下ったのはご承知の通り。
 ここは、日本の製造業も原点に立ち返るべきではないのか。コストをかけるべきところは潤沢にかけ、無理な経費節減やリストラは、企業の基礎体力を低下させるだけと認識して、愚直に正直に、モノ造りに励むべきではないか。
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