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涼宮ハルヒシリーズSS:『眼鏡と微笑』 (その1)

2010-07-11 00:01:11 | 涼宮ハルヒのSS
※初回投稿時より修正しました。

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『眼鏡と微笑』


○その1

「じゃあ、俺、行くわ」
「うん、あたしは今日は遅れて行くから、ちゃんと活動しておきなさいよ」
「はいよ」
 つまんない用事なのにー、あのバカ教師め、とか言ってブツブツ文句を言っていたハルヒに向かって、俺は軽く右手上げて、夏休みを直前に控えて少し浮き足立っている教室を後にした。期末試験も終わり、少しばかりの補習授業を消化したらあとは夏休みだ。その前に試験結果と通知表が返ってくるわけだが、今は忘れよう、それでいい。

 旧館に向かう渡り廊下を歩きながら、俺はさっきのハルヒの言葉を思い出していた。活動といったって、いったい何をすればいいのか、俺は未だによくわからない。
 結局することといえば、朝比奈さんの美味しいお茶をいただきながら、古泉相手に各種ボードゲームの勝利を重ねつつ、パタンと本を閉じる長門の終了の合図で帰宅する、というのがSOS団結成以来、延々と続いてきた放課後の過ごし方だ。
 ただ、時折、とてつもない騒ぎも起こり、その度に俺は死にそうな目にも遭ってきたわけだが、毎回毎回、長門に助けられつつなんとかこれまで生きながらえてきた。
 まぁ、そんなことはどうでもいいさ。俺にすればひとまずマイエンジェル朝比奈さんのお茶が飲めればそれでいい。

 階段を登りきり、梅雨明け直前のこの季節にはなんとなくかび臭さも感じられる廊下を足早に通過し、SOS団が占拠し続けている文芸部室の前に到着した。
 コンコン。
 いつもどおりのノックに対して、室内からは応答がなかった。
 まだ、長門だけか……、朝比奈さんのお茶は少しお預けだな。
 そんなことを思い浮かべながら、僅かにきしむドアを開ける。少しうつむき加減に足を踏み入れ、よお、と、言って顔を上げて室内に視線を向けると――――。

「え、あ、あの……」
 長机の奥の端っこで、両手を胸の前でクロスさせながら、顔一杯に不安と驚きの表情を浮かべた、ショートカットの見慣れた髪形の少女が立ち尽くしている。
 俺が良く知っている外見をしたその少女は、一歩二歩と後ずさりながら、唖然とする俺のことを少し潤んだ漆黒の瞳で見つめている。それもシルバーフレームの眼鏡越しで――――。
 な、な、なに? 背筋に電気が走る。
「な、長門?」
 そう、今俺の目の前にいる眼鏡姿の長門は、あの十二月、俺以外の何もかもが改変された世界で、この部室で一人本を読んでいた、あの長門だ。
 忘れるもんか。間違えるもんか。長門の表情専門家としての俺の感覚が百パーセントの確率で訴えている。こいつはあの改変された世界の長門だ。



 この初夏の時期に長袖のセーラー服とカーディガンを身にまとって小さく震えている眼鏡の長門は、一瞬の後、崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込んだ。
「お、おい、大丈夫か!」
 かばんを机の上に放り投げ、しゃがみ込んでいる長門の前に駆け込んだ俺は、小刻みに揺れている小さな肩に両手を乗せた。
「長門、お前、あの時の長門なのか? どうして、お前がここに? なぜ……」
 少ししてゆっくりと顔を上げた長門は、
「わからない……、何が起こったのか、どうしてここにいるのか……、いまはいつなのか…………」
 眼鏡の奥の瞳がじっと俺のことを見つめている。
「た、助けて……、お願い……、わ、わたし、どうしていいか…………」
 そこまで話すと再び俯いて、あとは僅かに嗚咽が聞こえるのみだった。

 十二月十八日の早朝、俺が朝倉に刺された直後の北高の正門前で、間違いなくこっちの世界の長門の力によって時空が再改変され、時間の流れは上書きされたはずだ。あの再改変前の世界の長門も、眼鏡をはずしてもとのヒューマノイドインタフェースとしての機能を回復したはずだ。
 ではなぜ、あの時の、あの世界の、再改変される前の長門が今ここにいるんだ、いったいどういうことなのだ? ということは、こっちの長門はどうした、いつもここで本を読んでいるはずのこっちの長門は?
「長門――」
 そっと顔を上げる長門。頬を涙が伝っている。
「とにかく、落ち着け。何とかなる、何とかしてやる。とにかく話を聞かせてくれ」
「……は、はい」
 右手で頬の涙をぬぐった長門は、俺のことを少し見上げた後、ゆっくりと立ち上がった。
 その時、カチャリと音がしてドアが開いた。驚いて振り返った先には、半袖セーラー服にショートカットの髪を僅かに揺らし、鉄壁の無表情を浮かべた見慣れた北高生……。
「な、長門……」
 呆然と立ち尽くす俺と眼鏡長門の前につかつかと歩み寄って来た無表情の長門は、
「あと二分三十秒ほどで涼宮ハルヒ達がやってくる。時間がない」
 少し早口でそう言うと、長袖長門の眼鏡をそっとはずして、
「わたしはコンピ研で少し時間をつぶした後、先に帰宅している。あなたは、そちらのわたしの異時空間同位体を連れて後ほどわたしのマンションまで来て欲しい」
「いや、あの……」
「あと二分十七秒しかない。急いで」
 俺が追加の質問をしようと口を開こうとした瞬間、長門はさっとセーラー服を脱ぎだした。
「うわっ、お、おい、なにを……」
 あっという間に上半身下着姿になった長門は、まだ長袖を着たまま呆然と立ち尽くしているもう一人の長門に脱いだばかりの半袖セーラー服を差し出しながら、
「早く着替えて」
「あ、あのぅ……」
「早く」

 さすがに、二人の長門がセーラー服を取り替えるために着替えをしている場面をまじまじと見つめるわけにはいかない。とりあえず俺は、扉のところで外の様子を伺いながら、背後に聞こえる衣擦れの音を聞いていた。振り返ってみたい衝動と、ハルヒ達が今にもドアを開けて踏み込んできたらという緊張感に板ばさみになりながら、過ごすことほんの一瞬、
「では、後ほど。ここにいる間は眼鏡はかけない方がいい」
 とだけ言い残して、長袖セーラー服の長門が部室を出て行った。チラッと見えた横顔の感じは、こっちの世界の長門だったはずだ、と、思う。
 というのも、俺が後ろを向いている間に、適当に入れ替わられたりしたら、もう、どっちがどっちの長門かわからなくなるのは必至だ。
 ただ確かに、部室に残っている方の長門は、半袖になって寒いのか、これから起こるであろうことに対する不安感なのか、両腕を抱きかかえるようにして震えているので、眼鏡を掛けていた方の長門で間違いはなさそうだ。
 ええい、今はやることをやるしかない。
 俺は本棚から適当に分厚いハードカバーを取り出して、机の上の残されていた眼鏡と共に長門に手渡した。
「とにかく、そこで黙って本を読んでいればいい。できるだけ表情を出さず、何か言われても、そう、とか、はい、とか簡単に答えるだけでOKだ」
 なにやら小難しいタイトルが書かれた表紙を困ったような表情で見つめている長門を姿を確認しつつ、
「眼鏡は、そうだな、長門が置いていったそのかばんに入れておくか」
 長門は自分が持ってきたかばんを置いていった。確かに、帰宅時に手ぶらのはおかしいからな。さすがに手抜かりはない。
「一時間ほどしたら俺がきっかけを作るから、そうしたら、少し大げさにその本を閉じるんだ。その音で帰宅することになるから。いいな」
「あ、あの、わたし……」
「ほら、座れ」
 まだ何か言いたそうにしている背中を促すように軽く押しながら、長門が窓際の定位置に腰を下ろした瞬間、部室の扉が開いた。
「やっほー、来たわよー」
「こんにちはー」

 ハルヒを先頭に朝比奈さんと古泉が立て続けに部室にやってきた。にぎやかに部室に足を踏み入れるSOS団のメンバを一人ひとり確認しながら、長門は微妙に驚いたような表情を浮かべていた。特にハルヒの姿を見たときには、あからさまに「えっ?」という表情で、五センチほど、長門としては大きく首を傾げていた。
 どうやら、この長門はみんなの顔は知っているらしい。まだ、向こうの世界にいた頃に、ハルヒ達が部室に押しかけた時のことは経験して知っているということか。あっちのハルヒは髪が長かったからな、こっちのハルヒを見て不思議に思うのも無理はない。
 だが、こんなペースで表情を出していてはすぐにバレてしまう。幸いなことに、ハルヒがいつもにも増してにぎやかに朝比奈さんをおもちゃにしているので、長門のことを気にかけることはなかった。まぁ、普段から、長門のことは窓辺の静物としか見ていないところがあるわけなんだが。

 そんな騒ぎが一段落すると、朝比奈さんは、
「じゃぁ、着替えますので、すみませんが……」
「ほら、キョン、いつまでもぼんやりしてるんじゃないわよ」
「あ、あぁ……」
 とにかく俺は、心細そうに俺のことを見つめている長門に向かって、頼むから無表情でいてくれよ、と目配せしながら、古泉と共にいったん部室から廊下に出た。

「ちょっといいですか?」
 廊下に出るなり、古泉が顔を寄せてきた。それ以上近づくなって。
「気付かれましたか? さっき、僕達が部室に到着した時、長門さん、とても不思議そうな表情を浮かべておられたように見えましたが……」
「ん、そうか? 俺は気付かなかったが」
 むぅ、流石は古泉だ。観察力が鋭いな。
「僕達が到着する前の部室で、あなたと長門さんの間に何かあったのですか? というより、長門さんに何かあったのでしょうか?」
「だから、何もないよ、期待に沿えずにすまないが」
 古泉は、少し俯き加減で意味ありげな笑みを口元に浮かべながら、
「そうですか……。まぁいいでしょう。僕としては、涼宮さんさえ平穏に過ごしていただければ、まずはOKですから。もし、何か手助けが必要になったらいつでもおっしゃってください」
「ふん」
 できることなら、古泉や機関の手を煩わすような事態には発展してほしくはないのだが、せっかくの申し出は心に刻んでおくことにしておこう。

 少しして、「いいわよー」と、ハルヒの声が室内から響いてきた。
 いつものメイドさん姿に変身した朝比奈さんは、お茶の用意をしながら振り返って、天使の微笑で迎えてくれている。長門は、というと、とりあえずは定位置で黙々と読書に励んでいる、フリをしているようだった。しかし、おそらくこの状況では、本の内容は少しも頭に入っていないだろうことは用意に想像できる。

 だが、そこはやはり長門だった。一般人に改変されたとしてもスーパー読書マシンには違いないわけで、小一時間もするうちに、すっかり読書にはまってしまったようだ。
 古泉と対戦中の俺に向かって、最初のうちこそおどおどした視線を頻繁に送ってきていたが、やがては熱心にページをめくり続けるようになった。
 適当に本棚から取り出しただけの本が、どんな内容だったのか知らないが、あんまりはまってもらっても困る。このまま放っておくと、一晩中でも読み続けそうな勢いであり、もうそろそろ本を閉じて今日の活動のお開きの合図を出してもらわないといけない。

 古泉とのひと勝負がついたところで、俺はやや大げさに、「うーん」と、背伸びをして、長門に誘いをかけてみた。そんなふりに気づいた長門は、「あっ」という表情を浮かべた後、慌てた勢いで、力いっぱい分厚い本を閉じた。
「えっ、なに? 有希? どしたの?」
 あまりの激しさに驚いたハルヒは、団長席から身を乗り出すようにしてバタンと大きな音がした方向に振り向いた。
「じ、時間……」
 別に言わなくてもいい一言を言ってしまったのは、何よりも音を出した当人が一番驚いていたからだな。
「ん、そう? いつもより早いんじゃないの?」
 怪訝そうにしているハルヒを横目に見ながら、俺はそそくさと盤上を埋めるオセロの駒を集めだした。朝比奈さんは何の躊躇いも無く湯飲みを片付け始め、古泉は意味ありげな微笑みを蓄えつつも、やはり手元の駒をかき集めている。
「さ、帰ろうぜ」
 ハルヒに有無を言わせないうちに帰宅の既成事実を積み上げるべく、俺はそう言って席を立った。早いとこ切り上げて、この長門を連れてマンションに急がねばならない。
「ふん、ま、いいわ」
 ハルヒは少し口元を突き出して、納得はしてないけど、との態度を示していたが、パソコンのシャットダウンの音が聞こえてきた。


 帰りの坂道でも、古泉は何か言いたそうな含み笑いで話しかけてきた。俺はそんな古泉の探りを適当にかわしながらも、それとなく振り返りつつ、最後尾をただ俯いて歩いている長門のことを気にかけていた。

 やがてみんながそれぞれの方向に分かれる場所に到達した。
「じゃーねー」と、スキップするように帰って行くハルヒの後姿を見送った後、俺は、
「ちょっと買い物があるから」
と、長門と二人だけで同じ方向に歩み始めた。
 古泉は、振り返りざまに
「では、また。とにかく、何かあったときはお電話を……」
 とだけ言い残して去っていった。
 去って行く古泉の姿を無言で見送りながら、俺は背後でぽつんと突っ立っている長門に声をかけた。
「じゃ、行くか」
「……はい」
 長門は二人だけになるのを待っていたかのようにさっとかばんから眼鏡を取り出すと、
「わたし、眼鏡がないと遠くが……よく見えない……」
 そういって眼鏡のレンズ越しに俺を見上げた長門は小さく肩をすくめた。 
 そうか、少しは度が入っていたんだな。俺はてっきり伊達だと思ってた。

 結局その後、マンションに向かう道中、俺が何か話しかけても、長門は俺が肩に掛けたかばんの底をつまむように持ったまま終始無言でついて来るだけだった。 


 やっとのことでたどり着いたいつもの七〇八号室。予定通り先に帰っていた長門が玄関先で迎えてくれた。
「よお、すまないな」
「どうぞ」
 廊下の先を行くこっちの長門と、後からついてくるあっちの長門にはさまれて、俺はリビングに向かいながら、軽く溜息をつくしかなかった。

「それで、と、まずは話を聞かしてくれるか」
「……はい」
 今はテーブル状態になっているコタツ机の俺の正面に座っている長門は、テーブルに置かれた湯飲みをじっと見つめながら、一つ一つ単語を選ぶかのようにゆっくりと話し出した。
「あの日、わたしは部室であなたが来るのを待って……」

 長門は、時折、眼鏡のつるの部分を触りながら、光陽園学院で見つけたハルヒたちと一緒に俺が部室に戻って来たときの様子を説明した。
「遅い、って心配してると、突然、皆さんが部室にやってきて……」
「驚かせてすなまかったな」
「……いったい何が起こったのか、何もわからないうちに、パソコンが勝手に動き出して、それでメッセージが表示されて……」

 こっちの長門が残してくれた緊急脱出プログラム、俺に選択を迫ったプログラムだ。
 俺は、もう一人の長門の話をただ黙って聞いている無表情の長門を姿を確認しながら、あのパソコンに表示されたメッセージを頭の中に思い描いていた。

 Ready?

 その問いに俺は躊躇することはなかった。
「あなたは、少し考えた後、わたしに入部届けを返すと、パソコンのキーを押しました。その直後――」
 そう、あの時のことは忘れない。エンターキーを押すのと同時に襲ってきためまいと立ちくらみの波が過ぎ去った後、俺は三年前の七夕の部室に飛ばされていた。
「あなたは突然その場から消えました。えっ、と思った瞬間、今度はわたしの周囲がくるくると回りだして、頭がくらくらして、思わずしゃがみ込んで……」
 その時の妙な感覚を思い出したかのように体を少し小さくした長門は、そっと顔を上げて話を続けた。
「気がついたら、今日の、あの部室にいました……。元の部室とは似ているようで全然違って、しかも暑くて……、わたし何が何だがわからなくて……」
 そこで一呼吸置いた長門は、俺の瞳をじっと見つめながら、
「その後すぐに、あなたが来ました……」
 最後は消え入りそうな声でそう言うと、再び長門は俯いてしまった。

 しばらくの間、リビングは静寂に包まれた。

 やがて、聞きなれた平板な声が語りだした。
「あなたはわたしが用意した緊急脱出プログラムを起動し、その時点より三年前の七月七日に飛躍した」
「うん、そうだ」
「あなたが過去に飛躍したその反動で、彼女はこの時空に飛ばされたと思われる」
「なんだって? そんなことがあるのか? 何度か時空移動したが反動とかそんなことは……」
「無いとはいえない。当時のわたしはそのようなことまで予測してプログラミングしていないと思われる」
「長門らしくないミスだな」
「わたしはすでに暴走状態に突入していた。あのプログラムを用意するのが精一杯……」
「すまん、すまん。責めているわけではない。感謝してるさ」
 長門は、わずかに頭を動かして、俺の感謝の言葉に応えてくれた。
「ただ、彼女が存在していた時空は、その後、再修正プログラムにより再度の改変が行われ上書きされた」
 長門は、ずっと俯いたままのもう一人の長門に視線を向けると、
「彼女は、再改変が行われる前に、時空間の移動を行ったため、改変の影響を受けることがなかった。ただし……」
 一瞬、言葉を区切った長門は、ごく自然な感じでただ機械的に続けた。
「彼女がいた時空の流れはもはやどこにも存在しない。彼女が戻るべき時間も空間もどこにも存在しない」

 再びリビングに静寂が戻ってきた。エアコンから吹き出される風が少し弱まったのがわかった。

 SOS団が誇る無敵のアンドロイドはあっさりとこの世界に二人の長門がいる理由を説明し、最後には他人事のようにさらっと言った。『彼女が戻るべき時間も空間もどこにも存在しない』、だって?
 俺の目の前には、小さな体をさらに小さくして震えているショートカットの髪の少女がいる。今のこいつは無口で本好きなただの高校生に過ぎない。そんなやつがそれまで自分がいた世界とは似て非なる異世界にたった一人で飛ばされてきた上に、もう一人の自分から、戻るところは存在しないとの宣言を受けた。

 それが、どれほど辛いものか、不安なものか。

 俺も確かに一度はそんな気持ちを味わった。だが、幸いにも、俺は緊急脱出プログラムと時を駆ける少女によって、自分の世界に戻ることができた。しかし、そのせいでこの長門は戻るところを失ってしまったということか。

「なんとかならないのか」
「なんともならない」
 にべもない。
「あのなぁ、おまえ自身が窮地に陥っているんだ、なんとかしようと思わないのか?」
「いまのところ方法はひとつ」
「なんだ、どうするんだ?」
「改変されたとはいえ彼女は有機アンドロイド。したがって、情報連結を解除することは可能」
 えっ? 何? という表情を眼鏡越しに浮かべる長門。
「だめだ、そんなんこと! 自分自身を消してどうする!」
「……そう、だから今のところなんともならない」
「う、ううぅむ……」
 さすがに長門も自分自身の情報連結を解除することはできないし、当然やりたくもないのだろう。
 じゃぁ、どうすればいいんだ?
「この状況を情報統合思念体に報告しておく。何か解決策が提示されるかもしれない」
「なんとかしてやってくれ。こうなってしまったのは、俺のせいでもあるし」
「あなたは関係ない。やはり責任はわたしにある」
「いまさら責任問題はどうでもいい。とにかく、だ……」
 俺は、今にも消えてしまいそうなぐらいに縮こまっているもう一人の長門に向かって、
「心配するな、俺と、こっちの長門が何とかしてやるから。な」
「……は、はい。よろしくお願いします……」
 わずかに顔を上げた長門は、俺のことを眼鏡越しに見つめて今日はじめてかすかな微笑を浮かべた。

=====
その2に続きます。

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2 コメント

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こんばんわ (I LOVE NAGATO)
2010-07-11 23:58:44
展開がスゴイですね!
食い入るように見てました(☆ω☆)

速く続きが見たいです!
お世話になります(^^) (totoron)
2010-07-12 23:50:53
こんばんは、I LOVE NAGATOさん。

コメントありがとうございます。
久々のSSでした。
完結まではまだかかりそうですが、がんばります(^^;;

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