蕎麦の散歩道

美味しい蕎麦と、楽しい食の道を歩む。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

曉山 日立市  号と業を追いかける

2007-12-24 07:40:42 | 近郊・神奈川・千葉・埼玉・茨城・長野他



その蕎麦屋は、曉山。祖父である画家の曉山の号を頂いたそうです。
東京から車で2時間、茨城の日立市にあります。入り口は大きな庭になっており、自宅や蔵が連なり、納屋や畑の脇を通り、さらに石渡を伝って離れのような家屋を目指すと、そこがお店に造作されていました。


庭の石伝いから納戸や蔵を見てあるいていきます・・

離れのような古民家にお店が

玄関を開けて声を掛けると、わざわざ裏手からお迎えいただきました。ブログでしばしばやり取りをしていましたから、もうお互い見知ったような気持ちが通いました。




座ると侘びた風情がありました。曉山の絵が何枚か掛かっています。若き頃白芳、後曉山と号して、この別荘のような家屋で創作の日々を送られていたそうです。掛け軸の床の間の上席に座らせていただき、暫くお話をさせていただきました。

祖父曉山の絵が床の間に

それは必ず蕎麦と蕎麦屋の話になるのは致し方がないことです。石臼や手挽き、僕などは知らない目立ての話など、滅多に聞くことが出来ないよい話を聞かせて頂きました。
最初は裏の畑で取れる野菜などの天ぷら蒸篭を頂きます。



紫色の野生の蕗のとうを楽しみに車を走らせて来ました。蒸篭は強い顔をしていました。二筋ほど鼻に持って行くとそれはこれまでまだ嗅いだことの無い香りがします。陽だまりの藁の匂い、それはこの地の水の匂いと一緒になったものなのでしょうか。

季節はずれの野生の蕗のとう

蕎麦は2店の製粉屋さんからと、茨城の農園からの常陸秋蕎麦を石臼で手挽きされたものを三種ブレンドさています。てんぷら用の焼き塩を蕎麦用に追加で頂いて食べます。



蕎麦の甘みが増します。こしがカチンとして壊れやすく芯に粘りがあります。野生の蕗のとうはしっかりとした噛応えがあってほろ苦い。舌に残らないよい苦さです。


「普通盛りにしますか、少なめにしますか?」
2枚目の鴨のつけ汁蒸篭は、少なめにしていただいた。このあと蕎麦掻も食べることになっていたし、もしかして追加の蕎麦をお願いするかもしれませんから。



2枚目は顔がほころびました。見るから田舎然とした様子の蕎麦です。香りは先ほどのものと同じようですが、こしの感じが全く違いました。


噛む、粘る、こわれそうで跳ね返してむっちりします。
「それは、全部手挽きで一割です」
味は濃く、塩が要りません。噛むほどに甘くなります。手挽きではせいぜい2,3人前蕎麦に出来るくらいでしょうから、この日だけの特別な蕎麦なのでしょう。



「予約でないと駄目でしょうか?」玄関にお二人30代後半くらいのご夫婦が来られました。
「そうなんです。今日はもう予約の方の蕎麦で・・」ご主人が出る。
「確かめればよかったか」ご夫婦の声。
「どちらから来られましたか」
「埼玉から、来たんです」
僕は思わず彼らの落胆をその声で感じた。ご主人も流石に声を呑んだ。
少し待ってください、蕎麦を見ますと、厨房に戻る。
「何とか2人前、普通のと太いのと混ざってよければ」
ご主人としては予約客のお代わりも想定して1,2枚分は余分に取っておきたい。僕も開業時はそうでした。
もしかして、僕が2枚目の太打ちを普通盛りにしていたら彼らの幸運はなかったかも知れなかった。そうでなくても僕はお代わりをする性分ですから。

紫色の辛味大根、自家栽培

鴨汁が美味い。葱の甘さが舌に広がる。蕎麦はその鴨の脂身が溶けた汁に負けない。鴨なん蕎麦にして食べたい蕎麦でした。
窓の外には干し柿があります。お正月の甘味になるのでしょう。辛味大根も自家栽培で紫色をした辛みも甘みも強いふくよかなものです。

理想的な環境で蕎麦屋をされています。最後は幌加内の蕎麦粉をメインにした蕎麦掻です。水加減がよく、こね回しもよいのでしょう、里芋のようなポッタリした食感がして甘みが広がります。



開業して4年半だそうですが相当な研究のあとが僕のようなものにでもわかりました。手挽き石臼の目立てをご自分で調整されます。
長らく札幌の工業高校の先生をされていての急展開の商いです。石臼などの調整などは工業学校に居られたからお手の物なのでしょう。
人は何が役立つかわからないものです。僕などはこれまでに歩いてきたことで本当に役に立っているものがあるのか思わず考えこんでしまいました。
祖父曉山の追いかけてきたものを違った形で同じ地と場所でまた追いかける。
蕎麦の技と業はまだ果てしないものかもしれませんが、その号を理想に立てた意味がわかりました。

先ほどのご夫婦も帰られ、予約客の方が嬉しそうに玄関に来られます。蕎麦を食べに来られる方の声は少しオクターブが上がりますね。声が弾んでますね。幸せな空気が漂いますね。



何て素敵な商売だろうか。僕はその商売を捨ててしまった。
季節はずれの蕗のとうを食べました。先ほどのお二人に幸運を少し分けてあげられました。
きっとこの調子だと今年のクリスマスは特別なものになるに違いない。新年も素晴らしいものになるに違いないと予感しました。

若い人達に新年はドラスティックに生まれ変れるチャンスだと、コンサルする自分が言うのだから僕自信がそうならなくてはいけないのだと思う。



「夢ハさん、3月の春の山菜食べにきてください」
ご主人と奥様に送られて帰ります。庭に大根が埋まっています。また、この庭と野菜たちを見に来なくてはいけないでしょう。
帰りはまだ聞いていない阿久悠の記念アルバムが一枚残っていたのを思い出した。生涯千曲の男と女の間の詩を作った男が死に急いだ。
そのCDを聞いて帰れば東京まで直ぐのような気がした。

曉山 日立市田尻町2-7-11 0294-42-4981   
         金・土・日のお昼営業(予約)

『こだわり蕎麦屋の始め方』

ダイヤモンド社刊(検索
著作・鎌 富志治(かま としはる)・夢ハ

 

ジャンル:
ウェブログ
コメント (6)   トラックバック (1)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
«  辛みに絡む プリプリ麺二題 | トップ | HONMURA AN 六本木 想定内... »
最近の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お礼 (そばがき)
2007-12-24 09:00:54
 昨日が雨の中、遠方から、ようこそお越しくださいました。
お礼を申し上げます。
 一昨日は、夢八さんのお口に合うそばが打てるのだろうかと不安でした。
 このように、ブログで取り上げていただき有難うございます。
 自分では、美味しいそばを打とうと石臼を廻しながら、心新たにしながら、蕎麦打ちに取り組んでおります。
 
 夢八さんのようなプロに評価をいただいたこと、さらに励みにして、年越しの蕎麦、そして、来年も新たな気持ちで打ち続けたいと思います。
 
 春は屋敷内に、ふきのとう、三つ葉、せり、筍と春のてんぷらの役者がそろいます。
  また、いろいろと教えていただきたいと存じます。
 
 まずは、御礼まで
自然との語らいを見ました (夢ハ)
2007-12-24 09:53:01
そばがきさん、こちらこそ
色々教えていただきありがとうございました。

手挽きの蕎麦は本当に力があって
口中が満足しました。
自然との語らいの中でお蕎麦を供する
幸せを見ました。もちろん、それも大変なご苦労が
おありだと思いますが、また、楽しみにしております。
Unknown (さいとう)
2007-12-24 11:45:46
夢八様、こんにちは。

蕗の薹、辛味大根、【自然】を口の中で感じることを
うらやましく思います。
薬味のお皿の写真は、桃色に見える紫色の辛味大根と
白色の葱が、相立って、すごくおめでたい気分に
なりますね。

それにしても、おいしいものをたくさん召し上がってる
夢八さんがうらやましい。
土地ものの甘み (夢ハ)
2007-12-24 18:14:38
さいとうさん、
こちらのものは、野菜が屋敷内で
栽培されていて大変甘みがあって
滋養を感じました。

辛み大根の甘みはちょっと
これまでになかったですし、
葱が美味しいのです。
薬味葱は僕はそのまま素で食べましたよ。

さいとうさん、僕なんかと違って、お若いのだから
まだまだ先があるから、これからじゃないですか。
それは羨ましい事です。
はじめまして (ねこやしき)
2007-12-29 00:10:33
夢八様、はじめまして。長らく読者をやっております、ねこやしきと申します。

ここの記事と暁山さんとのやりとりがあまりにすばらしすぎて、我が家のブログの読者にも感動を分けてあげたいと思い、うちのブログにこちらのURLを載せました。TBも送りました。当方ずぶの素人ですので、もし不快に感じられましたらおっしゃってください。削除しますので。

夢八様の来るべき年のご健康とご多幸をお祈りいたしております。よい年をお迎えくださいませ。
研究の成果が蕎麦に (夢ハ)
2007-12-29 13:45:32
ねこやしきさん、コメントありがとうございます。
また、ブログも取り上げていただいて
感謝しております。

研究、研鑽に励まれているお蕎麦屋さんを
お訪ねし、話など聞くのは大変楽しいものがありました。
蕎麦も自信がみなぎっておりました。

また、どうぞコメントお気軽にいただければ
ありがたいです。

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

関連するみんなの記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
とても感動した記事2つ (ねこやしきさらのおうち)
メモ代わりにここにURLを記しておく。 http://gyouzan.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/post_fae4.html http://blog.goo.ne.jp/toshiharu2214/e/758dc5d160587380a95b23979b8601a2 ものすごいプロ意識と、人生の重みを感じた。いつ読み返してもいいと思う。