東北の湯治宿

Toshibonの湯治場遊覧記

露天風呂水沢温泉

2006-09-16 | 秋田県
一昨年の秋、宿泊客の火の不始末で宿泊棟が全焼した「露天風呂水沢温泉」(秋田県仙北市)から新装オープンの案内状が届いたので、所用で田沢湖方面へ行ったついでに立ち寄ってみた。ここは日帰り客を主体としたロッジ風の造りの自炊宿というユニークな経営方針をとっていた温泉で、「再建するにしても、少なくとも今はやりのこじゃれた民芸風旅館にだけはなってほしくない」と以前書いたことがあり、再建にちょっぴり不安な気持ちを抱いていた。だが、料金が少し高くなったほかは営業形態、経営方針とも焼ける前と変わりがなく、私の心配は杞憂であった。

支配人にお願いして見せてもらった2階の宿泊フロアで、まず目に飛び込んできたのがIHクッキングヒーターを備えた使いかってのよさそうな厨房(下の画像)。部屋は2階が和室3階が洋室で、全室洗面トイレ付き。ランドリーもあり、自炊宿としての最新設備が完備されている。お風呂場は焼けなかったので以前と造りは同じ。
昔ながらの湯治場風情はないけれど、プライバシーがある程度守れ、利用しやすく便利なこんな宿がもっとあったらいい。



※露天風呂水沢温泉
自炊1人1泊 4800円(寝具込み)。
※湯治滞在プラン(平成18年12月22日までの期間限定):2泊以上の場合は1泊4000円。1室2名利用で2泊以上の場合は1泊3600円。
チェックイン16時、チェックアウト10時。 入浴料400円。
http://www.tsukamoto-sogyo.co.jp/mizusawa/onsen/index.html
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肘折温泉 丸屋旅館

2005-10-11 | 山形県
山形県最上の肘折温泉では、毎年10月20日に「なめこ祭り」が開催されている。昨年、たまたま10月19日に「丸屋旅館」に宿泊して翌日宿を出るとき、女将さんから「なめこ汁」無料券を渡されて初めてこんな祭り(イベント)があるのを知った。
会場は「肘折いでゆ館」。なめこ汁を提供する屋外テントは、近隣からやってきた人たちで大盛況。館内では、なめここすくい競技が行われ、こちらも大勢の人たちでにぎわっていた。

昨年で40回目になる伝統を持つというから、肘折温泉のイベントとしてすっかり定着しているのだろう。今年も20日に行われるので、肘折行きを予定している方がいたら、なめこ祭りに合わせて宿泊してみてはどうだろう。丸屋旅館だけではなく、どの宿でも宿泊客には「なめこ汁」無料券、「利き酒」参加券などを配布しているようだ。数種類の銘柄の利き酒してぴったり当てると賞品がもらえるので、酒好きの人は挑戦してみるのも面白い。(私は残念ながらひとつだけ間違って賞品をもらえなかった)

丸屋旅館は昔ながらの湯治旅館だが、若旦那と若女将の趣向が随所に取り入れられ、古さと新しさが適度に調和していて、若い女性でも抵抗なく泊まれる。最近は首都圏や関西方面に熱心なファンが増えてきたというのも、頷ける。

10年ほど前に肘折温泉の紹介記事で目にした丸屋旅館の若旦那のことば。
「カルデラの中にある、どんづまりの温泉が肘折温泉だ。街全体がひとつの旅館で、それぞれの旅館が部屋、道路は廊下、お店は売店だ、と思っている。素朴さと田舎っぽさと生活感のある温泉場が肘折の魅力なんだから、その良さだけは変えちゃいけないと思っています」
肘折には伝統だけに安住せず温泉地全体の活性化に心をくだくこうした若い経営者がいる。それが心強い。

※肘折温泉なめこ祭り
http://www7.ocn.ne.jp/~tk1932/nameco.htm

※丸屋旅館
・湯治の部:4300円〜(1泊 半自炊)
・湯治パック:6000円(1泊2食)
・旅籠の部:7500円〜9000円(1泊2食)
・入浴のみ300円
▽半自炊とは、ご飯とみそ汁を宿側が提供する肘折独特のシステム。おかずは自分で調理することになるが、たいていの場合、おかずが1〜2品つくので、小食の人はこれで結構おなかいっぱいになる。
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海の湯治場 金ヶ崎温泉

2005-09-24 | 秋田県
秋田県で古くから湯治場として賑わったところは、主に奥羽山脈の火山地帯にある山の温泉で、海岸地帯はきわめて数が少ない。だから、男鹿半島西海岸に湧く金ヶ崎温泉は貴重な存在だった。だったと過去形にしたのは、50年ほど前までは源泉のある海浜に露天の浴槽と宿舎が設けられ、湯治客が利用していたのだが、現在はそこから約2キロ離れた温泉宿泊施設に引き湯して、それを金ヶ崎温泉と呼んでいるからだ。

東北地方で波打ち際の温泉といえば、青森県の津軽西海岸の不老不死温泉が知られているが、金ヶ崎温泉はもっと原始的で野性味にあふれていた。それにこの温泉は人家から遠く離れた隔絶された場所にあり、断崖を下るか海上から行くしかないため、湯治客の多くは船でやってくることが多かったという。まさに海の秘湯だったのだ。

金ヶ崎温泉にあった宿舎は、北海道のニシン漁で財をなした近くの戸賀集落の網元が大正年間に建てたというもので、6畳ほどの部屋が4つある長屋風、老夫婦が管理人として住んでいた。管理人夫婦が引き払ったのは昭和25年(1950年)ころで、その後もしばらくは放置された宿舎を利用する湯治客がいたというが、嵐などで宿舎が痛み、湯船が崩れるなどして、次第に行く人もいなくなったという。

金ヶ崎温泉は現在も誰でも簡単に行けるところではない。県道脇から釣り人が設置したと思われるロープが下まで伸びているが、急斜面なので成人男性でも細心の注意が必要だ(お年寄りや子どもは無理)。断崖を下りて石がごろごろした浜を入江のほぼ中央まで行くと、波打ち際に四角い井戸のようなコンクリートの露天風呂跡がまだ残っていて、これは県道からも崖下に見ることができる。露天風呂跡ではお湯が今でも自然湧出していて、直径50センチほどの源泉池のようになっている。近くの男鹿温泉に似た黄土色の食塩泉だ。

今年の夏の終わりに久しぶりに行ってみたら、数日前の台風で源泉が砂で埋まっていたが、砂の中からぷくぷくと湯が湧き出ていた。驚いたのは、私のほかにもうひとりこの温泉を目当てにやって来た人がいて、聞けばかつてここで宿を経営していた人のいとこだという。その人は浴槽の砂を手で掘り出して即席の露天風呂を出現させたのだが、泉温が50度くらいあり、熱すぎて入れないので手ですくい浴びるだけで我慢した。

ここに夏の間だけでも利用できる浴舎と休憩施設があったらいい。そして、ちょっとお金がかかるかもしれないが、入江に桟橋を造って、西海岸を運行している島巡りの観光遊覧船が横付けできればどんなにいいことだろう。きっと究極の海の温泉として評判になり、温泉目当ての観光客が押し掛け、下降の一途をたどる男鹿観光の起爆剤になるのではないか…。潮騒を聞きながら、ぷくぷく湧き出る湯を見ていて、そんなことを考えた。

※昭和54年にこの金ヶ崎温泉を引湯して秋田県企業局が「桜島荘」を開業したが、昨年、民間に経営が引き継がれた。旧桜島荘(現「きららか」)に隣接した桜島野営場には無料の露天風呂があったが、現在は閉鎖されている。残念なことだ。

※Toshibon's Blog
http://toshibon28.exblog.jp/
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下風呂温泉 佐々木旅館

2005-07-31 | 青森県
ひさしぶりに下北半島の下風呂温泉へ行ってきた。泊まったのは共同浴場の新湯のそばにある佐々木旅館。女将さんと若女将さん(女将さんの娘さん)の2人できりもりしている小ぢんまりした宿だ。

下風呂温泉には十数軒の宿があるが、このうち温泉を引いているのは10軒ほど。源泉は大湯、新湯、海辺地(浜湯)の3ヵ所あり、それぞれ成分(泉質)が異なる。佐々木旅館は新湯を引湯している。3源泉とも硫黄泉だが白濁した大湯とちがって新湯は透明に近く、泉温が高いのでとにかく熱い。ちょっと残念なのは入浴時間は夜9時までということ。おそらく湧出量に限りがあるので、一定量をためてから各旅館に分湯しているからだろう。

共同浴場は大湯と新湯。昔は内湯がなく各旅館(客舎)から湯治客が共同浴場に通ったという。その名残のせいで、宿の浴室はどこもおしなべて狭く、湯船も小さい。全体の雰囲気も、内湯を持たないかつての湯治場−大鰐、温湯など津軽の温泉町に似た匂いが感じられる。佐々木旅館は今も湯治客を受け入れており、湯治料金を設定している。昔と比べると少なくなったが毎年やってくるお馴染みさんもまだいるということだ。

下風呂温泉で自炊をやっている宿はなく、どこも食事に力を入れている。宿泊料金のわりには食事は豪華。ほとんどが海の幸で、それも量がすごい。私などはとても食べきれないほどの量がお膳に並ぶ。温泉宿での食べきれない料理というのは、残すともったいないく、かといって無理矢理詰め込むわけにもいかず、ある意味拷問に等しいところもあって私は苦手(否定的)なのだが(私が自炊部を好む理由もそうしたところにある)、なぜか佐々木旅館の夕食はそうした気持ちがおこらなかった。若女将がお客をもてなし喜ばせるためにと、一品一品心をこめた手作りの味が伝わってきたからだろう(でも、さすがに2品ほど残してしまった)。

つい最近、下風呂温泉では「遊めぐり」と題して各旅館のお風呂をハシゴ(3ヵ所まで、800円)できる遊めぐり手形のサービスを始めた。宿泊客に浴衣を着て下駄を鳴らし、温泉街を歩いてもらいたいということらしい。イカの形をした手形と、下駄のロゴは佐々木旅館の若女将のデザインによるという(画像をクリック)。なかなかのものではありませんか。

・下風呂温泉 佐々木旅館
 1泊2食付き 8000円〜10000円
 湯治 6500円      入浴料300円
      http://www16.ocn.ne.jp/~sumie/AI5.htm

※お知らせ
最近は湯めぐりもままならず、更新も滞りがち。そこでタイトルを「東北の湯治宿」に変更、今後は1ヵ月に1回くらいの頻度で過去の温泉行脚もまじえつつ、ぼちぼち更新していく予定です。



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二股らぢうむ温泉

2005-05-19 | その他
2ヵ月ほど前、東京都営地下鉄大江戸線に乗っていて、融資の宣伝と一緒に温泉の効能をうたっている車内広告を目にした。数年前に消費者金融会社が買収し経営に乗り出したという北海道長万部の二股ラヂウム温泉の広告だった(画像をクリック)。

「北海道いい旅研究室」で出している温泉本などで叩かれていたので、そのいきさつについては知っていたが、実際に広告を見たのは初めて。「2週間以上泊まられてお客様ご自身が良化の兆候がないと感じた場合全額返金いたします(社長より)」というコピーは、さすがウワサにたがわぬものだと、感じ入って見た。

北海道の人が書いているブログで、二股らぢうむ温泉(現在はカタカナからカナ表記になった)が公正取引委員会から警告を受けたというのを知ったのはその広告を見たすぐ後だった。パンフレットなどで全額返金をうたっていたほか、広告用ポケットティッシュに「ヘルニアは100%必ず治ります(3週間以内)」「脳溢血による言語障害、半身不随もほとんど治ります」などと書いていたということで、湯治の効能で誇大広告としての警告を受けたのは温泉業界では初めてらしい。

二股らぢうむ温泉のお湯は炭酸カルシウムを大量に含む特異な泉質で、そのため石灰華が巨大なドーム状となって堆積し、その上に建つボロ宿との景観が、いかにも北海道の秘湯といった風情を醸していた。私がここを訪ねたのはもう20年近く前になるが、宿の駐車場にキタキツネが数匹ウロウロしていたことや、石灰華を掘って造られたようなドーム屋根の混浴の浴場に、見るからに女性の裸目当てと思える挙動不審の男たちがわさわさといて、その景観と相まって異様な雰囲気だったことが印象に残っている。

経営が今の会社に移ってからは、石灰華の名物ドームが取り壊されて新しく宿泊棟、浴場棟が建てられ、入浴料金は1000円(やっぱり高いよね)になってしまった。そしてこのたびの公正取引委員会からの警告−。

私は「北海道いい旅研究室」のように、出版などの媒体を通じて批判記事を書き(たとえそれが当たっているとしても)民間の温泉経営を圧迫することには疑問を持っているが(単に私がヘタレだからということもあるが)、「病気が治らなければ代金すべてお返しします」というのは、やりすぎだ。湯治が何たるかを知っている湯治宿の経営者は決してそんなことを口にはしないはず。

消費者金融会社HPの二股らぢうむ温泉のサイトに載っている「保証金1口100万円のお預けで1週間の宿泊無料」という会員制度というのも、なんだかな〜。「公式ページを見れば、明らかにここは金持ちのお年寄りからお金を頂戴する施設なのですから(猛笑)」と冗談めかして書いていた温泉ブログがあったけど、確かに…

※二股らぢうむ温泉
http://www.303049.com/hotel_hotspring.htm
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東鳴子温泉 まるみや旅館

2005-02-18 | 宮城県
昨年の10月に山形県の肘折温泉「丸屋旅館」に泊まってから温泉宿泊もご無沙汰で、最近はもっぱら近場の男鹿温泉(湯本ホテル)や秋田市にある松木台温泉などの日帰り入浴でお茶を濁している。そろそろどっかの湯治場でのんびりしたいとは思うのだが、ここ数年、年度末となる今ごろの時期が仕事が一番しんどく忙しいので、なかなか身動きがとれない。

昨年はこの時期に〆切が重なって睡眠不足&不眠症になり、絶不調に陥ってしまったので、宮城県の東鳴子温泉に思い切って逃避行。「まるみや旅館」で2泊のミニ湯治を決行した。「まるみや」は自炊専門の実にのんびりした昔ながらの湯治宿で、独自源泉のお湯がとてもいい。やや金気臭のあるここのお湯(含食塩・芒硝−重曹泉)は神経を休める効果もあるのか不眠も解消し、何とか魔の2月、3月を切り抜けることができた。

この時に「まるみや」のご主人の取り計らいで、鳴子町観光協会で立ち上げた「温泉療養部会」に出席させてもらったのも収穫だった。今、日本の温泉地の中で一番湯治に力を入れ頑張っているのは、東鳴子、川渡、中山平など鳴子温泉郷の各湯治宿だろう。「まるみや旅館」はもちろん、 東鳴子温泉の「勘七湯」川渡温泉の「高東旅館」のご主人たちの湯治文化の再生にかける熱い想いに感心し、心を打たれた。

「まるみや」のご主人はご自身が大の湯治場好きで、年2回は家族そろって各地の湯治場めぐりをしているということだった。それも訪ねて行くのは自炊宿ばかり。ご主人はもちろん、奥さんもお子さんも食事付きの宿は嫌で、気楽な自炊が好きなのだという。湯治客の世話をするご主人のお母さんも含め、温泉そのもを愛する一家の飾らない人柄が宿の経営方針に現れ、今も変わらぬ湯治場風情を醸していると思った。

今年もにっちもさっちもいかなくなったら、また「まるみや」さんにお世話になろうかな…などと思案する今日このごろではある。

・元湯自炊まるみや旅館 
自炊湯治料金1泊3200円〜3600円。食事は提供していないが、出前を取り寄せることができる。
入浴のみは不可。

http://www.naruko.eier.net/marumiya/

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男鹿温泉郷 湯本ホテル

2005-01-23 | 秋田県
今年の初湯(初めて入った温泉)は、男鹿温泉郷「湯本ホテル」の湯だった。今年最初のエントリーは、私が在住している秋田県男鹿半島の湯を紹介したい。

男鹿半島には数カ所の温泉地があるのだが、男鹿簡易保険保養センターの湯(鵜の崎温泉)が自宅からもっとも近い温泉なので、よく利用していた。だが思いがけないことに、昨年春に経営不振から突然閉鎖されてしまった。岩手県の国見温泉とまではいかないまでも、この地域では珍しい薄緑色の硫黄泉で、とてもいい湯だっただけに早く再開してほしいが、なかなか買い手がつかないようだ。

男鹿半島西海岸にある旧桜島荘(金ヶ崎温泉)は、県営から民間の経営に変わってから入浴料金が800円になった。おまけに無料だった露天風呂も閉鎖されてしまったので、自宅から遠いこともあってほとんど利用しなくなった。

八郎潟を干拓して誕生した隣村の大潟村営「ポルダー潟の湯」は、マニア?にはたまらない臭素臭のするチョコレート色の食塩泉で、大変気に入ってはいるのだが、自宅から30分以上かかるのが難点。

今のところ自宅から一番近い温泉が男鹿市営の「温浴ランドおが(なまはげのゆっこ)」だが、公共温泉にありがちな塩素ドボドボ、循環バリバリ。浴室に入ったとたんの強烈な塩素臭に加え、温泉としての浴感がほとんどないので、よっぽどのことがなければ入る気がしない。
そんなこんなで、最近よく利用しているのが男鹿温泉郷の湯本ホテルで、今年の初湯になったというわけだ。

男鹿温泉郷といっても、正確には近代的で豪華なホテルや旅館が建ち並ぶ海寄りの石山地区と、奥まった海の見えない湯本地区に分かれる。湯本ホテルは湯本地区にある。かつては暢神館という旅館もあったが、現在は湯本集落の中に唯一残る宿である。

湯本地区も男鹿温泉郷としてひとくくりにされているが、戦後に開発された石山地区と違って源泉も歴史も異なる。湯本の温泉が発見されたのは大同年間、坂上田村麻呂東征の時と伝えられ、江戸時代初期には渡部平右衛門家がすでに温泉宿を営んでおり、秋田藩主の佐竹氏が湯浴みしたとの記録が残っている。歴史的には秋田県でも最も古くに開発された由緒ある温泉のひとつだ。
江戸時代の旅の文人、菅江真澄も訪れ、味は塩辛く緑礬の気があると日記に書いている。真澄が訪れたころは15もの浴舎があったというから、相当な賑わいだったことがわかる。
だが、今は湯本ホテルが一軒のみ。男鹿温泉の主役の座は完全に石山地区の温泉郷に奪われてしまい、淋しい限りだ。

ホテルとはいっても昔ながらの木造2階建て和風旅館で、周囲の環境もこれといって特徴はないだけに、石山地区の温泉ホテルには設備の面で太刀打ちできない。だから、いつ訪れてもひっそりしていて、大丈夫なのかと少々心配になるほど。でも、お湯はとてもいい。そっけないほど広々とした大浴場(男女別)のプールのような浴槽(画像をクリック)に、わずかに茶色がかった掛け流しの食塩泉(弱食塩泉)が注がれる。

湯本ホテルの前身は明治期から続く「七兵衛旅館」という湯治宿で、かつては建物の中や前庭から6ヵ所もの温泉が自噴していたという。それが昭和14年におこった男鹿地震で湧出が止まり、現在は地下60メートルまでボーリングしたものを引いているとのことだ。かつて湯治客が押し掛けていたころは子宝の湯と評判だっただけあって、あがってからもなかなか汗がひかない温まりの湯。浴感もしっとりまとわりつくような感じで、近くの“塩素温泉”=「温浴ランドおが」とは雲泥の差がある。

いかにも観光温泉的な外観の石山地区とは差別化を図り、「男鹿湯本温泉」という名称でお湯のよさを前面に出し、かつての湯治宿の原点にかえって歴史の名湯として売り出したらいいのになあ、と訪ねるたびに思う。
それだけの実力が「湯本ホテル」の湯=湯本温泉には十分備わっているのだから。

・湯本ホテル 入浴料500円(13時〜18時)

湯治プラン
1泊2食付5400円、2泊3日5食付10800円

http://www.namahage.ne.jp/yumoto/
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冬至の湯治

2004-12-22 | その他
昨日(21日)は冬至だった。日本にはこの日「ゆず湯」に入る風習がある。ゆず湯には美肌効果があって、体が温まるのでカゼをひかないともいわれ、冬の厳しい寒さの中でも健康に暮らせるようにとの願いが込められているのだろう。

冬至にお風呂に入るのは理由があるともいう。「冬至」の読みは「とうじ」で「湯治」と同じ。この語呂あわせは偶然ではないようで、江戸時代に庶民の間から生まれたとの説がある。「柚子(ゆず)」も「融通(ゆうずう)が利きますように」という「願かけ」からきているのだという。

かなり前から各地の公衆浴場組合(銭湯)の間で、冬至の前後に浴槽に柚子を浮かべて、「ゆず湯」のサービスをするところが多くなった。私は10代後半にひとり暮らしを始めて以来の銭湯好きでもあるので、秋田市に住んでいた数年前までは冬至の日を選んでよく入りに行った。「ゆず湯」のよさは何といっても湯船いっぱいに漂う柚子の香りだ。
それにつけても、現在私が住んでいる町に銭湯がない(20年以上前に廃業してしまった)のが悲しい。

※冬至に何故、ゆず湯に入る?
http://www.johos.com/omoshiro/bucknum/20010112A.html
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BAD NEWS 2題

2004-12-11 | 青森県
10月16日付けのエントリーで紹介した秋田県田沢湖町の「露天風呂水沢温泉」が今週7日(火)未明の火事で全焼してしまった。幸い死傷者は出なかったようだが、水沢温泉郷ではもっとも日帰り入湯の集客力が高く、湯治客にも人気があった温泉施設なので、本当に驚いた。
http://www.sakigake.jp/servlet/SKNEWS.News.kiji?InputKIJICODE=20041207g

お湯のよさから根強いファンがいてスキー客の利用も多いうえ、経営者は東京に本社がある総合商社なので、再建されるのではと思う。ただ、焼ける前と同じく日帰り客が主体で、ロッジ風の造りの自炊宿というユニークな経営方針になるかどうかは、微妙なところ。再建するにしても、少なくとも今はやりのこじゃれた民芸風旅館にだけはなってほしくないものだ。

温泉がらみでもうひとつ驚いたことといえば、先月末、青森県三沢市の「古牧温泉渋沢公園」が民事再生法適用を申請したというニュース。負債総額は220億円。「にっぽんの温泉100選」で10年連続日本一に選ばれるなど、青森県でも名の知られた観光温泉施設だっただけに、誰もが驚いた倒産劇だった。
http://news.google.co.jp/news?hl=ja&lr=&c2coff=1&tab=nn&ie=UTF-8&q=%E5%8F%A4%E7%89%A7%E6%B8%A9%E6%B3%89%E6%B8%8B%E6%B2%A2%E5%85%AC%E5%9C%92

10年少し前だったか、南八甲田の谷地温泉に行ったら、それまでの湯治宿の雰囲気が変わっていて、どことなくよそよそしく感じられたのだが、ちょうどそのころ古牧温泉(十和田観光開発)に経営が移ったとあとで知った。ただ、谷地温泉自体は、同じ時期に古いホテルを改修して経営に乗り出した「湯治の宿おいらせ」とともに、経営が変わってからも多くの浴客を集めていたと思う。

十和田湖焼山地区(十和田町)の「湯治の宿おいらせ」は、私が新しい形態の湯治場として注目してきた宿で、実は今年の秋に宿泊予約を入れたのだが、満杯で泊まれなかったくらい人気が定着していた。問題だったのはこれら「谷地温泉」「湯治の宿おいらせ」などの規模の小さい宿ではなく、同じ焼山地区の第1、第2の「奥入瀬渓流グランドホテル」にあったらしい。新聞記事によれば、「奥入瀬渓流第2グランドホテル」への約40億円に上る設備投資などが経営破綻の大きな原因になったという。

今のところ「古牧温泉渋沢公園」、「湯治の宿おいらせ」をはじめ焼山地区の各温泉ともこれまで通り営業を続けているとのことなので、ひとまず安心。それにしても、事業を拡大し傍目には華やかで順調に見えても、その内実は火の車っていうのは、温泉・ホテル業界にとっては案外誰もが身につまされる話ではあるのかも。
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早戸温泉つるの湯

2004-12-04 | 福島県
一カ月ほど前、なにげにTVをつけたら、ちょうどNHKで「ふだん着の温泉」をやっていた。この番組は放送日時がわかりにくい(チェックしていない)ので、ほとんど見ることがないのだが、取り上げていたのが福島県三島町の早戸温泉だったので、引き込まれるように見てしまった。

早戸温泉は只見川沿いの宮下ダムの人造湖のほとりにある温泉で、「竹の屋旅館」と「つるの湯」という2軒の宿があるが、紹介していたのは「つるの湯」のほうだった。実のところ私は東北6県の中では福島県の温泉が一番好きで、中でも奥会津の温泉にわけもなく惹かれる。只見川流域沿いの金山町の湯倉、大塩、八町、玉梨などの共同浴場、それに西山温泉(柳津町)、早戸温泉などの湯治場は、私がホームグラウンドとしている秋田県八幡平や西栗駒山麓などの泥臭い温泉にはない独特の鄙びの魅力がある。

TVを見ていてすぐに気がついたのだが、「つるの湯」は日帰り入浴施設を併設した温泉にリニューアルされたようで、以前の宿と大きく経営形態が様変わりし、湯治棟だった旧館と旧浴場がなくなり、かつての旅館部が宿泊棟(湯治棟)になっていた。

つるの湯のかつての旧浴場は、湯治棟から階段を下りて行ったダム湖の岸にあって、混浴の2つに仕切られたコンクリートの湯舟に、淡褐色の食塩泉があふれていた。浴場の造りもお湯の泉質も、これぞ正しい「東北の湯治場」といった趣のある私好みのお風呂だった。
浴場の大きな窓を開けると、すぐ下がダム湖で、マンガ家のつげ義春だったろうか、風呂に入りながら釣りができるなどと紀行文に書いていたように思う。
旧浴場がなくなったのは残念だが、TVを見た限りでは自炊の湯治宿としての形態は以前と変わらないようなのでひと安心。もともと早戸温泉は三島町(旧早戸村)が温泉の権利を所有しており、リニューアル後は第三セクターによる経営に移行したようで、むしろ前より湯治宿としては一般の人が利用しやすくなったかもしれない。

早戸温泉を最後に訪れたのは4年も前になるだろうか。三島町は桐の産地として有名なところだが、ちょうど桐の花が咲く季節で、只見川に沿って車を走らせながら、まるで桃源郷を旅しているような心地がしたものだ。来年あたりはまた、のんびりと会津の湯めぐりをしたいものだなあ……

・早戸温泉つるの湯
自炊1人1泊3500円、3泊以上3000円(自炊のみで食事付きの宿泊はできない)。
入浴料500円(入浴のみは日帰り入浴専門施設で受け付け。湯治棟の浴場には入れない)

http://www.sakuma-k.co.jp/index.html
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