Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

山粧ふ兆し

2017-10-02 | 風景

 

秋への足取りが順調だ。

夏の充分な日照時間、9月に入ってからの適度な雨と中旬以降の冷え込み。

特に20日過ぎからの気温の低下が、山の樹々を色づかせる理想的な気象条件だった。

これだけ順調に、紅葉のための気象条件が揃う年も珍しい。

さぁ、どれほど美しい紅葉が観られるだろうか?

山粧ふ(やまよそおう)兆しに期待が膨らむ。

 

黒森峠越えは、霧雨の中、涼しいを通り越して肌寒いくらいだった。

梅ヶ市からの林道歩きは、秋の花々が咲き揃う。

野菊や曙草や秋丁字が芒の穂と共に黄昏の光に揺れている。

鹿の鋭い警戒音が谷に響く。

日没前に笹尾根に辿り着きたいが、雨がなかなか上がらなくて出発が遅れた分、無理だろう。

もう一時間早く出発すれば、と何時も思う。

ブナの樹林帯は深い霧の中で、稜線は雲海の風景が予想される。

なんとか日没前に尾根に辿り着いたが、雲が高くて笹原も霧の中だった。

石鎚山頂なら雲の上だったか?

暮れなずみ霧の彼方からも鹿の長く哀調の音が響く。

秋は繁殖期だからね。 

雲間から半分欠けた月が顔を覗かせていた。

ゴォーゴォーと笹原が波濤を轟かせる海原のように大きくうねる。

20kgの荷物を担いだ身体が、吹き荒ぶ強風に時折ふわりと浮かぶ。

向かい風の登りも乗越からは風に押されて足元が軽い。

いっそ、そのまま風に乗って、山小屋まで運んでくれればと(笑)

日没後は、とにかく寒い。

小屋に到着して寒暖計を見ると、室温5℃だった。

雨露に濡れた衣服を着替え、暖かい格好を。

人心地ついて、夕餉の暖かい食事と蝋燭の灯りの下、

持参した本のページを繰りながら過ごす山小屋の夜。

今回は再読、梨木香歩の「冬虫夏草」でした。

そのまま百年前の懐かしい世界へ、するり滑り込む心地。

此処ならば、古き日本の精神風土世界も何ら違和感なく融け込める。

今夜は梟の声が聴こえない…

 

 翌朝、二の森まで出掛ける。

月は、もう沈み、東の空にオリオンの三ツ星が掛かっている。

全体に雲が多く、星の少ない夜明け前の空だった。

一の森(クラセの頭)への宙へ続く一本道を辿るに従がって、

松山方面の街明かりだけが煌々と輝いていた。

放射冷却による雲海も湧かず、淡々と星明りの道を辿り続けた。

五代の別れで、黎明の兆しが走る東雲を見ながら思案した。

日の出の位置を考えると、二の森から石鎚よりも、一の森の稜線から二の森の方が朝焼けの風景は良さそうだ。

これで雲海が湧いていると躊躇なく二の森まで行くのだが。

日の出前の気温は2℃だった。

日の出の瞬間、薄く太陽柱が立っていた。

意外と秋の太陽柱は出現頻度が高そうだ。

この稜線には四国では珍しいオヤマリンドウが咲く。

花が開き切らない竜胆で、アサマリンドウとは葉っぱの形状が違う。

形のいいオヤマリンドウが見当たらなかったで撮影に至らず。

陽が昇って辺りが明るくなると、一の森から二の森にかけての樹々の彩が目を惹く。

特にミネカエデの赤が鮮やかだ。

1900m付近の稜線で、これだけ色づいていると、

石鎚山頂周辺の紅葉は、例年の見頃、10月10日よりも早まりそうだ。

週明けからの天候は、気温が低いまま推移し、秋雨前線が停滞して、ずっと雨。

今年の石鎚は10月5日前後を紅葉のピークと予想するが…この雨の中ではね?

期待した最盛期の美しい錦繍の彩を、観ることを叶わないか…残念。

でも1900mから1800mくらいの少し標高の低い山々は、この週末の連休は期待出来そうだ。

 もちろん石鎚山も山頂から下の紅葉(東稜や墓場尾根)は充分に期待出来るだろう。

 

 


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
秋山情報 (鬼城)
2017-10-03 08:35:09
ありがとうございます。
一週間早いようですね。ハァー・・・
面河谷に期待します。
それにしても山の中の写真や行動が生き生きして居ますね。写真撮影の場所を考え異動する活力、すばらしい。
やはり山在ってのランスケさんだと思います。読書も梨木香歩・・・あこがれです。
15日、何とか持ってくれー!(爆)
15日は中腹の錦繍を (ランスケ)
2017-10-03 10:52:15
鬼城さんの石鎚山行は二週間先の15日でしたか。
さすがに10月半ばでは山頂周辺の紅葉は、少し遅い気がします。
でもスカイラインから土小屋周辺、瓶ヶ森林道付近が丁度いい秋たけなわ、
鮮やかな錦繍の彩が期待出来ると思います。
紅葉ハイシーズンの混雑も今週末の連休がピークでしょうから、
少し気持ちも、ゆったり秋山歩きが楽しめますよ。
教え子の皆さんたちと語らいながら紅葉の山歩きを堪能してください。
山で過ごす時間は、色んな意味で屈託を失くしてくれますからね。

梨木香歩の「家守奇譚」と「冬虫夏草」は、鬼城さんのブログで取り上げてくれたのが切っ掛けで、
また何度目かの再読を楽しんでいます。
ここに描かれている世界は、私が表現したい写真世界そのもののような気がします(笑)
山で読むと、そのまま風景の中に融け込んでしまいそうです。
天狗岳は秋色 (Masa)
2017-10-03 14:24:35
こんにちは!今回の石鎚はポートレート撮影
メインで 数枚の天狗岳撮影に留めました。
ある方は今が一番 ある方は10日まではまだいけ
るけどこの嵐でどうなるかーーーということです。登山道は二の鎖巻道 階段超えたあたりから
始まります。つぎのいそづちは9、10あそこも
いけるとこまで行ってみます!
紅葉のピーク (ランスケ)
2017-10-03 16:40:57
20年近く石鎚山の紅葉を毎年、撮影し続けて来ました。
どの状態を紅葉のピークと呼ぶかは、
紅葉見物の登山者と山の写真を撮るカメラマンでは視点が違って来ます。

弥山から天狗岳の朝陽に燃え上がる風景を撮る場合、
前景となる弥山のミネカエデやナナカマドが赤く色づき天狗岳の斜面も同様に充分に色づいた状態を
石鎚山頂付近の紅葉のピークと我々、山の写真ヤは呼びます。
天狗岳を赤く彩るドウダンツツジは、まだこの先、赤くなりますが、ミネカエデやナナカマドは色褪せ散ってしまいます。
そのように前景と後景の色のバランスを大事にする写真ヤと
そんなことに関心のない紅葉見物のハイカーは、同じ風景を見ても感じ方が違うのは当然です。

9/30の二の森周辺の紅葉状況から、ミネカエデやナナカマドが予想以上に赤く色づいているのを見て、私の紅葉予想です。
あれだけ色づいていると10/10まで弥山周辺のミネカエデやナナカマドは持たないと思います。
それに今週いっぱい秋雨前線の停滞で、ずっと雨続きですからね。
一度色づいた葉っぱは、雨風で散るのが早いです。

頂上山荘のブログも見ていますが、あれは色が悪いので、紅葉状態が、よく分からないが残念(笑)

連休は、お天気も良さようなので、Masaさんも墓場尾根や東稜に足を延ばして朝焼け夕焼けの
風景にチャレンジしてみてください。
私は、一の森、二の森北西斜面の白骨林と錦繍の風景を狙ってみます。
本日決行しました (misa)
2017-10-05 00:17:03
週間予報が見事に変わり急拠石鎚天狗へ・・・
多分上は滝雲だねと指先や耳が凍るほどの強風の中、黙々と歩を進めました
トウリョウ分岐で8度、寒いはずです
良い場所で青空となり今迄とは打って変わってのhighTensionで目指しました(WK珍道中第三弾)
天狗岳までとし今回は瓶林で夕焼け小焼けで後帰還
弥山は見ごろ、墓場も見ごろではなかったかと思われます。
三浦さん、風雪さんにお会いしましたよ。

良い時に (ランスケ)
2017-10-05 09:45:25
misaさんはW京子コンビで秋雨前線の晴れ間を狙いましたか。
雨上がり北東の風が吹いて、松山からも、くっきり石鎚連峰が見えていました。
今朝の頂上山荘ブログの紅葉情報は以下に。

https://ameblo.jp/ishizuchi-sansou/

手前のミネカエデの赤と天狗岳の錦繍。
10/5、紅葉ピーク予想は当たりましたね。
ここ10年くらい私の石鎚紅葉予想は99%の的中率です(笑)

三浦さんと風雪さん、やっぱり山の写真ヤさんは、良い時を外しませんね。
風雪さんは涸沢の紅葉も行ったみたいだし、石鎚のピークと合わせて紅葉三昧ですね(羨ましい)

misaさんの石鎚紅葉画像、楽しみにしています。
私は堂ヶ森から一の森、二の森の錦繍を狙い、静かになる連休明けの山へ。

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