Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

Bicycle diary / 四万十川まで

2014-04-13 | 自転車

 

晴れ上がった月曜の朝、

週末まで、この穏やかな晴天は続くようだ。

ザックにテント一式と寝袋にカメラ機材、着替え、合わせて20kg超を詰めて出発した。

長い旅になりそうだ。

今日は行けるところまで。

9時に自宅を出発して、郊外の丘陵地帯から伊予灘沿いのR378へ入路。

最初のヒルクライム。

結構だらだらと上りが続く。

上り切った坂を風に乗って下ると、海が視界いっぱい広がる。

潮の香りと海風がアドレナリンを刺激する。

そして散り際の桜並木を、花片舞う桜吹雪の道行だ(笑)

 

 

 

愛媛県下一の大河、肱川河口にひらけた街、長浜に正午前に到着。

開架橋であった赤橋を渡って対岸へ。

幹線道路である国道を外した選択は成功した。

この後も頻繁に幹線道路を外し、

面白そうな脇道へと入ってゆく。

自転車旅の面白さは、これに尽きると思う。

お遍路旅でも、そうだったが、幹線道路を辿る旅は移動時間短縮のためには効率的だが、

旅の面白さは半減する。

河口から川を遡る行程は、旅の初日のハイライトだった。

 

肱川中流域の城下町、大洲の旧市街を巡り、

鳥坂峠の上りにかかる。

この長い上り坂が続く峠越えには、息が上がった。

ドリンク補給の休憩はあったが、なんとか青息吐息で上り切った。

このヒルクライムで体力を使い果たし、

鳥坂峠を下った街、卯之町(西予市)で宿泊。

次の街、宇和島までには法花津峠という難所が控えている。

もう峠越えの余力はなかった(汗)

 

  

 

朝霧立つ卯之町を8時前に出発。

前夜、入浴してパンパンに張った太腿を入念にマッサージした。

さぁ、今日は目的地の四万十川まで。

法花津峠手前から県道45号線へ入路。

トンネルを抜けると野福峠。

法花津湾を見下ろす桜の名所だ。

ここからのダウンヒルは爽快。

九十九折を風に乗って、海へダイヴするように下る。

「ヤッホー」

 

 

下った漁師町、明浜から先は、海沿いをずっと辿る。

岬めぐりをするように狭い道をクネクネと。

鄙びた漁師の集落を辿る道は、

まるで、つげ義春の世界に迷い込んだみたい…

 

宇和島に11時半。

市街地を抜け、鬼北方面への峠越え。

宇和島市の水源であるダム湖を越える山道も、

正午の陽射しを浴びながら汗が噴き出て来る。

峠を下った道路沿いのお蕎麦屋さんで昼食。

こしのある旨い蕎麦だった。

勘定を済ませて外へ出ると、

店の御主人が「持って行きなさい」

と蜜柑をたくさん袋詰めにして差し出す。

酸味の強い夏柑のような蜜柑は、本当に美味しかった。

汗の噴き出た峠越えで、どれだけ咽喉の渇きを癒してくれたか。

ありがとうございました。

広見町奈良のお蕎麦屋さん。

(kyoichさんの実家の近くでした(笑))

 

四万十川の支流である広見川沿いの道を辿り高知県へ。

江川崎から四万十川本流に合流。

R441、四万十川沿いの道を辿る。

四国を代表する大河、四万十川は江川崎から河口の中村(四万十市)までが一番。

山間を縫って悠々と蛇行する景観が素晴らしい。

確かに川の水質(透明度)は、以前と比べてずいぶん落ちたようだ。

それでも悠々とした、川が本来持っていた景観は、未だ損なわれていない。

15年前に歩いて辿った、あの日の風景がそのままに。

 

 

岩間の沈下橋から、しばらく辿った場所で自転車を担いで河原に降りた。

周囲に人家がなく、河原で野営するにはもってこいの場所。

砂地にテントを張り、

流木を集め、石囲いをして焚火の準備。

もちろん麦酒は川で冷やしておく。

次第に黄昏の群青のとばりが降りてくる。

しきりに鳴いていた鶯の声が途絶え、カジカの澄んだ声が、

せせらぎの音に重なってくる。

焚火の火を灯し、冷えた麦酒で咽喉を潤す。

この風景の中で過ごす、この時間のなんと豊かなことか…

この時間のために200㎞の行程を辿り自転車で来た。

車やバイクの動力に頼ることなく自力で。

焚火の火を消し、テント内の闇に横たわると、

「ゴロスケホッホ」と梟の声。

夜中にはテント周囲を、さかんに鹿が徘徊し、

「キョーン」甲高い警戒音を発し続けていた。

なんと、心ときめく野生の夜よ。

 


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4 コメント

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至福の時 (misa)
2014-04-13 18:27:19
四万十にいらしたのですね
晴天に恵まれ春の声に癒された感動が読み返すたびに大きく伝わります
おっしゃる通り水質はかなり落ちています(仁淀ブルーが脚光を浴びたことで尚更)
岩間の沈下橋は最も絵になる場所・・・・・
不思議ですね、あなたのブログを読むと己の小ささに呆れてしまう、ブランド品を追いかける意味が分からなくなる
己は己なのに・・・・
四国で最も美しい南西部へ (ランスケ)
2014-04-13 19:57:07
私は川が好きです。

石鎚山の源流域、面河川の森と水を巡る山行を、ずっと続けて来ました。
そして今回の自転車旅で選んだのは、四国に帰郷して最初にテントを担いで行った場所、
四万十川でした。

この悠久の大河は、今も変わらず魅力的です。
いくら水質が落ちても、その川としての魅力は四国随一。
全国屈指の原初の景観を保つ川だと思います。

カヌーによる川下りのブームも下火になったせいか、とても静かでした。
また季節をおいて自転車で通いたい場所。

さて旅の後半は、四万十川を河口まで下り足摺方面へ。
四国一美しいビーチ、大岐浜を目指しました。
ここも何度行っても時間を忘れるくらい魅力的な場所ですね。
misaさん、高知は好いよね。
見たような景色 (鬼城)
2014-04-15 07:48:32
自転車での目線は、人の高さ・・・
素晴らしい景観が広がっていますね。
幹線を外すことは原点回顧です。
それでも原点からはほど遠くなっていますね。
歩き遍路の経験はありませんが、歩いてみたらなお分かるのではないかと思います。
双海、野福からの吉田への道、鬼北道から四万十へ、素晴らしい写真集です。
爽やかな季節到来 (ランスケ)
2014-04-15 11:30:26
風薫るは五月の季語ですが、爽やかな好い季節になって来ましたね。
鬼城さんのブログから、いつも季節の移ろいを感じています。

自転車による南予方面への旅は、実は三月の墓参の時に実行しようかと考えていました。
墓参の車中から道路状況を観察して、これなら行けそうだと判断しました。

そして季節が良くなったので、距離を延ばして四国南西部を巡る旅へとバージョンアップ。
全走行距離、500kmくらいと、初めての自転車ツーリングとしては欲張り過ぎたようです。
おかげで後半は、完全にバテバテでした。

でも自転車は、私の性分に合っていますね。
気まぐれに、あちこち寄り道しながらの旅には最適です。
車体が軽いので、ひょいと担いで道なき道も。
なにより動力が、自分自身の身体なのが一番好い(笑)

相当ガタがきたエンジンですが、
少しづつ鍛え直して、面河の登山口までは頑張ってみようか?と。

それには皿ヶ嶺の山越えで筋力を鍛え直しておかなければ。
なんだか60過ぎてからの方が、筋肉つきそう(汗)

南予から鬼北、四万十、足摺にかけての風景は、本当に美しかったです。

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