榊原英資氏の著書『為替がわかれば世界がわかる』が面白い。
投資や世界経済に興味がない方にも国際情勢を分析するという点で非常に参考になる。
●『為替がわかれば世界がわかる』の注目すべきポイント
・為替市場を「読む」ことは、極めてスリリングな知的ゲームである
・為替市場は「美人投票」である
・為替市場は、誰にもコントロールできない、最も自由な市場である
・ジョージ・ソロスとは、実に温厚で深い教養をもった本当のインテリ
・ソロスは、他のトレーダーにない独得の市場観をもっている
・ソロスが思索を重ね、たどり着いたのが、①Fallibility(誤謬性)と②Reflexivity(相互作用性)という概念
・①Fallibility(誤謬性)とは、人間の知識は不完全で間違いやすいこと
→このため次の展開を予測できず、予測しても間違ってしまうというもの
・②Reflexivity(相互作用性)とは、期待と現実、あるいは人間と人間とは相互に影響しあって動くという考え方
・カール・ポパーに学んだソロスの哲学の素養と豊かな市場経験、現場を踏まえたソロスの市場観には、新古典派エコノミストには持ちえない独得の味わいがある
・ソロスはニューヨーク事務所のドッケンミラ、ロンドンのロディティ、ブラジル中央銀行の総裁になるフラガなど、若くて優秀な部下を多く持っていた
・彼らはそれぞれ、ソロスの下でかなりの裁量権を与えられ、大きなポジション(リスク)を張って活躍していた
・瞬間的な判断力と反射神経を必要とする現場の若い力と、経験豊かなソロスの知恵が上手くかみ合った
→それが世界を震撼させた伝説的な投機の世界が作られた
・中央銀行総裁もヘッジファンドも、実は、国際金融という一つの世界のプロフェッショナルであるという意味では仲間うち、あるいは国際金融マフィアたちなのだ
・市場においては単純な善悪の判断が成立しない
・市場関係者でソロスと並ぶ傑出した人物は、クリントン政権時代に財務長官を務めたロバート・ルービン
・ルービンは、物静かな紳士で、内に自信を秘めた、調整型の性格
→議論を尽くして、最後は自分で決断するというタイプ
・ルービンの市場哲学は、一言で言えば「すべては確率である」ということ
・相手の話をよく聞く人には、周囲から自然に良い情報が入ってくる
・ティム・ガイトナー財務長官(当時・国際問題担当財務次官)は「ルービンはよく他人の話を聞く。グット・リスナーだ」と言っている
・「グット・リスナー」が成功の鍵
・為替市場の現実を読むときのポイントは、情報、そして情報の不完全性であり、また、それをめぐる一つのゲーム論的環境である
・情報のないものは負ける
・為替取引は一種の情報ゲームである
・為替市場もまた経済戦争の一種ですから、情報収集には人一倍努力が必要
・ソロスは、世界31カ国になる「オープン・ソサエティ」財団の活動を通じて、旧ソ連諸国など世界各国に献金している
→その活動を通じての現地の情報もまた、彼の仕事には大いにプラスである
・いくら情報通信技術が発達しても二次情報や加工情報ばかり追っていては、市場のリーダーにはなれない
・世界の現地情報をいかに早く正確にキャッチできるか、それぞれの局面における独自情報の持ち主から情報を得られるかが重要
・現代は独自の情報収集能力が厳しく問われる時代
・為替相場の基礎となるファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)というものが厳然と存在する
・最低限チェックしておくべき経済指標は①GDP成長率、②インフレ率と金利、③経常収支、④財政収支である
・為替相場の常識のひとつに「噂がでた段階で買い、事実がはっきりした時点では売り」というルールがある
・ニュースの「新しさ」の中に「みんなの予測が超えているかどうか」がポイント
・本当に効果のある政策を実施したいと思うなら、絶対に発表前にリークしてはいけない
・情報が情報を呼ぶ
・情報の相互依存性は、為替市場においても大切な考え方
→つまり、こちらで発信した情報によって相手の行動パターンが変わり、それがフィードバックされて、こちらに返ってくるというもの
・為替市場ではそうした情報の相互依存性がもっとも発揮される場である
・現場に足を運べ
・市場というものは、ファンダメンタルだけでなく、市場参加者たちの複雑な心理や思いが相互に影響し合い、決まっていくこと理解している人は少ない
・政策発表は情報戦争だ
・政府の政策発表は、重要なパブリック・リレーションであり、ある種の情報戦争の開始を告げる狼煙のようなもの
・為替の予測など当たるはずがない
・失敗のほうが成功よりも情報量が多い
・定見を捨て、現実を直視せよ
・勘と運動神経の重要性
・勘と運動神経はディーリングの必須条件
・為替市場を読むのに必要なのは、大きく分けて2つ
→ローカル情報とグローバル情報
・ガセネタにも価値がある
・良い情報ソースというのは、結局は人脈であり、その人たちとの信頼関係
・信頼できる人にはいい情報を流す
・多角的情報収集の重要性
・フィジカル・コンタクトが重要
・腕利きのジャーナリストなら多種多様な取材先をもっている
・人と人が直接会うというフィジカル・コンタクトの重要性は、いくら情報通信機器が開発されても決してなくなることはない
・人に会えば書物やメディアで得られる以上の実にたくさんの情報を得ることができる
・個人的な人脈ネットワークを持ち、定期的に直接会うことは極めて、重要なこと
・アメリカ政府関係者は、電話で話すときと対面して一対一で話すときでは、話し方にかなりの落差があること
・レストランで食事でもしながら話すときは、彼らは機関銃のように本音の議論を仕掛けてくる
・自分の政策遂行に敵対的と思われる者であっても、あえてコンタクトすることも必要
・豊かな知識と情報があれば、多様な物語を創作することができる
・知識の総量が創造性を左右する
・すぐれたディーラーはバイリンガル
・「暗記・詰め込み」が創造性を育てる
・ルネサンスの巨人レオナルド・ダ・ヴィンチが大変な博識家であったように真に創造的な仕事をする人は豊富な知識をもつ博識家である
・知識の量と創造力は正の相関関係にある
※分析メモ
経済の専門家の本を読みながら、最終的に教育問題にいくとは思わなかった。
そして、何よりローテクな人と人との人間関係、直接会うことの大切さを重視していることは、どんな分野にも通じるのだと感じた。
確かに商社マン時代、電話で営業をかけて、怖い人だなと思ってみても実際に会うと気さくでいい人が多かったという体験がある。
改めて、人間の奥深さを感じた。早速、会いたい人に連絡をとってみたい。
※元商社マンの筆者が、独自の情報源を駆使した投資分析レポートを送ります。
内容は、株式、投資信託、FX、商品、債券、政治経済、金融、国際情勢などになります。
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