続「とのむら通信」ブログ版

前島本町議会議員・外村敏一(平成29年4月29日付けで引退)
日々の思いや議会傍聴の感想など引き続きお伝えします。

69回目の憲法記念日に強く思う

2016年05月03日 | 日々の思い

 大文字山の火床から京都市内を望む(5月2日)

憲法改正論議が高まる中、今年の憲法記念日は是非国民のひとり一人が我が国の憲法について考える機会としたい。
街のインタビューでも殆どの方が日頃考えたことない。或いは直接生活に関係ないと答えている。
そんな状況でNHKや新聞各社などが「憲法改正に賛成ですか?反対ですか?」というアンケートを実施して結果を
公表したりTVで報道している様は大変危険で、滑稽でもある。公器を使っている自分たちの責任の重さや使命を
どこまで自覚しているのか疑いたくなる。大雑把な数値を安易に示すことは世論を間違った方向に導きかねない。

現日本国憲法は前文と第一章第一条から第十一章第103条まである膨大な内容のもので、その中のどこが現代の我々
国民の生活に支障があるのか、仮に問題や不都合があるならどう変える(改正する)のかを細かく説明しないで、
単に改正に賛成か反対かを問うこと自体極めて軽率な行いであると言わざるを得ない。答える方も返答に窮する筈である。
しかし本日の日経新聞によれば、2004年来同じ質問で調査しているが、今回初めて「現在のままでよい」との回答
が50%を超え、「改正すべきだ」は40%で憲法改正には慎重な意見が上回ったとのこと。

本日は特に各紙とも特集記事も多いと思われるし、今後憲法改正論議が更に高まると思うので皆さんこの際憲法の
全文を読んで改正論議の本質はどこにあるのか、又本当に改正した方が良い条項はどこなのかなど正しく理解する
努力をしましょう。

憲法改正に積極的な安倍自民党は既に改正草案を出しています。(平成24年4月27日)ネットでも簡単に検索可能。
私も全ての条文を読んではいませんが、改正案では多くの条文で改正や加筆、新設をしています。特に気になった
ところだけをピックアップしてみました。
①前文の書き出しのところ「日本国民は・・・」が「日本国は・・・」となっていて主権は国民ではなくて国にある
 ようなニュアンスが濃い。現行のままで良い。
②9条:自衛権の発動は認められると明記したのは評価できるが、国防軍に関する項目を沢山新設している点はダメ。
③13条:現行では「すべて国民は個人として尊重される」を「全て国民は人として尊重される」と変更している。
 これは些細な様だが個人を人と変更することで個性を持つ個人を尊重せず、皆を十派ひとからげで扱おうとする思想
 で危険。
④21条:表現の自由を現行から大きく制限しようとする意図がはっきりしていて認められない。
⑤72条:内閣総理大臣の職務に関して「最高指揮官として国防軍を統括する」を新設しているがこれは必要ない。
⑥96条:現行では憲法改正には「衆参各議院の2/3以上の賛成があって初めて発議できる」とあるを過半数で発議可能
    とするよう大幅にハードルを下げようというもので絶対に認められない。立憲主義たる憲法の権威がなくなる。
⑦削除:現行憲法97条では「国が国民に基本的人権を保障している」この条文を削除しようとしているものでとんでもない。
⑧102条:現行憲法99条では「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員はこの憲法を尊重し、擁護する
    義務を負ふ」となっているのを改正草案102条で「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」という文言を
    前段に追記している。全く逆である。為政者や公務員こそが憲法を順守しなければならないというのが99条の精神。
たびたび出てくる「立憲主義」というのは「憲法は国の最高法規であって、時の政権や為政者が暴走や独裁政治を行わない
ように権力者から国民を守るためにある法規」とされている。従って現行憲法で認められていない集団的自衛権の行使を可能
にした昨年9月に強行採決された安全保障関連法案は正当な改憲の手続きを経ていない以上違憲であり、無効であるとの判断が
正しいことになります。憲法の改正はそれを強く国民が望んでこそ初めて国民の代表である国会が発議できるのであって一内閣
が声高に叫んで主導しようなんてことは傲慢な話である。政権は主権者である国民から付託を受けて政治を任されていることを
忘れてはならない。国民的合意が先にあってそれから国会で議論するのが筋であり、現在の状況は全く逆である。

因みに「立憲主義」をネット検索すると

「憲法は、すべての人々が個人として尊重されるために、最高法規として国家権力を制限し、人権保障をはかるという
 立憲主義の理念を基盤として成立すべきこと。憲法は、主権が国民に存することを宣言し、人権が保障されることを
 中心的な原理とすべきこと」とあります。お分かり頂けますでしょうか。
 
 平和主義で世界の宝とまで言われている憲法9条を持つ我々の日本国憲法は21世紀になっても世界の各地で戦争が絶えない
 今、声を大にして世界中に流布するのが積極的平和主義者の取るべき道であって、軍備を増強しての武力によるパワー
 ポリティクスは時代錯誤も甚だしい。借金大国の日本が軍拡競争に参戦するなんてあり得ない仕業である。
 阪神大震災、東日本大震災、そして今度は九州熊本大分での大震災と大きな災害に頻繁に見舞われた日本国政府が国民の
 命と安全を守るためにこそ大金を使わなくてはならない。防衛予算の5兆円超は今すぐにでも大幅削減補正予算を組むべき
 ときである。こういう方面にこそ自衛隊の皆さんには頑張って貰いたいと願わずにはいられない。