澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

「戦火のマエストロ・近衛秀麿~ユダヤ人の命を救った音楽家」は本当か?

2015年08月09日 01時29分26秒 | 音楽・映画

  さきほど、BS1スペシャル「戦火のマエストロ・近衛秀麿~ユダヤ人の命を救った音楽家~」が放送された。

 この番組のプロデューサーらしい水野という人が、「番組スタッフから」(下記参照)と題して番組制作の主旨を説明している。「戦後70年という時間を経ていま浮かび上がる意外な真実」が分かるらしいのだが、ざっと見た限りでは、ナレーションがプロジェクトXに酷似(同一人物の声かもしれない)、効果音的な音楽はこけおどしで不愉快な印象。どうしても、件のNHKスペシャル「佐村河内守 魂の旋律 音を失った作曲家 」を連想してしまう。

 近衛秀麿がユダヤ人を助けたという史実は「秀麿が米軍から受けた尋問の調書がアメリカ国立公文書館から発見され、そこに亡命幇助の一端が記されていたのです」というが、それでは彼が「第二の杉原千畝」だとでも言いたいのか?NHKスペシャルのプロデューサー・古賀淳也は詐欺師・佐村河内を「現代のベートーベン」と呼んだのだから、「第二の杉原千畝」もあり得ない話ではない。

 近衛秀麿が知り合いのユダヤ人をナチスの迫害から救ったという史実はあるのかもしれない。だが、彼の立場、経歴からすれば、それは「感動物語」として賞賛されるようなものではなかったはずだ。同様の誇張は、昨日公開された「日本のいちばん長い日」のキャッチコピーにも見られる。「この”ご聖断”が今の日本の平和をつくった」と言うのだが、天皇の”決断”があと一週間早かったら、広島、長崎の40万人もの犠牲者はなかったはずだ。そう思う人も多いだろう。歴史的人物の一行動だけを取り出しても、歴史の真実に触れたことにはならないのだ。

 NHKの劣化は止まらない。戦争体験者が激減したので、些細なエピソードに脚色、演出を施し、大層な「感動物語」に仕立て上げても、「それは違う」と文句が出る心配がなくなった。したがって、番組制作者はやりたい放題というのが現状なのだろう。

 猛暑の今夏。戦争回顧のドキュメンタリー番組に感動して、あとで騙されたことに気づき、臍を噛む。そんなことがないように願いたいものだ。「戦争を終わらせるために戦った男たち」などという、噴飯もののキャッチコピーに騙されてはならない。
 
 
 

 

番組スタッフから

「近衛秀麿という人物がユダヤ人の命を救っていた」という話を始めて聞いたのは、いまから1年半ほど前、秀麿の音楽やその人生を30年近くに渡って追ってきた音楽プロデューサーからでした。最初はにわかに信じられませんでした。なにせ、近衛秀麿といえば、戦争へと向かう日本で首相を務めた近衛文磨の弟。そんな人が果たしてユダヤ人を救うというようなことをするのだろうか?そう思ったからです。
その後、秀麿について書かれた本を読んでみると、指揮者としてベルリンフィルでタクトを振った最初の日本人だったことや、「NHK交響楽団」の前身である「新交響楽団」を設立したこと、アメリカやヨーロッパで活躍していた事などがわかり、音楽家として世界的に活動した人だったということがわかりました。しかし、それでもユダヤ人を救っていたという話はどこにも出てきません。わずかに、本人が書いた自伝に数行だけ「救われたユダヤ人家族は10以上」、「日本大使館のY君が担当した」といった謎めいた記述があるだけです。
これ程度の情報で本当に番組になるのか?不安はありましたが、調べてみる事にしました。すると秀麿が米軍から受けた尋問の調書がアメリカ国立公文書館から発見され、そこに亡命幇助の一端が記されていたのです。しかし、ここから番組ディレクターの苦悩が始まります。証言者を世界中から探さなければならなかったからです。日本、ドイツ、イスラエル、アメリカ、イギリス、ベルギー…1年に渡る執念の調査から何がわかったのか?それは番組を見てのお楽しみですが、「凄い!」ことは間違いありません。

一つだけ、今回の取材を通してわかったことを書きたいと思います。それは、「ユダヤ人を救った」という話は、戦後ながらく日本だけでなく、ヨーロッパでもタブーだったということです。亡命に成功した人たちも「誰のおかげで亡命できたか」また「どうやって逃げたか」などデリケートな話は決して口にしなかったと言います。一方で、亡命を助けた側も同じでした。だからこそ、近衛秀麿の物語も長い間語られる事はなかったのです。
戦後70年という時間を経ていま浮かび上がる意外な真実。ぜひご覧ください!

水野重理(みずの・しげのり) 番組プロデューサー

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Unknown (mr)
2017-06-06 01:00:36
ほんのわずかですが、近衛秀麿さんとご縁のある者です。私もNHKの報道に疑問を感じること、しばしばございます。今回の番組については見ておりません。事実も存じません。ですから、あなたの考えに根拠を持って何かご報告することはできません。
しかし、「そのようなことをする人物でありえない」という根拠に、ドイツ国歌やナチス党歌の演奏をあげられているのは、どうでしょう?
今であればナチス党歌を心よく聞く人はいない。
しかし、そういった演奏を拒否しなかった=人道的な行動をとらない。というのは物事を表面的に見ているかもしれません。
まあ、ご本人は反論しなかったかと思いますが。
議論の本筋ではありませんが、近衛秀麿は佐村河内とは全く違い、本物中の本物の音楽家です。たまたまどちらも音楽に関わるので画面に並んだだけでしょうが、何も知らない人が似たイメージを持ったら残念と思いました。

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